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アルツハイマー病を簡単に検査できる技術を開発 わずか0.5ccの血液で判別
2018年02月07日
アルツハイマー病を、症状が出る前でもわずか0.5ccの血液で簡単に検査できる技術を、国立長寿医療研究センターと島津製作所などが共同で開発した。アルツハイマー病の治療の開発につながる成果だ。
簡単に検査できる新しい方法が求められている 従来の検査では限界が
国立長寿医療研究センターと島津製作所は、質量分析システムを用いたアルツハイマー病血液バイオマーカーにおいて、現在用いられている脳脊髄液やPETイメージングの検査に匹敵するアルツハイマー病変(アミロイド蓄積)検出する方法を確立したと発表した。
この研究は、京都大学、東京大学、東京都健康長寿医療センター、近畿大学と共同で行い、オーストラリアの研究組織「Australian Imaging Biomarkers and Lifestyle Study of Ageing」(AIBL)と連携して行われたもの。研究成果は「Nature」オンライン版に発表された。
アルツハイマー病は、記憶を司る脳の海馬の周辺から萎縮が始まる病気で、最初に物忘れが起こるのが特徴だ。進行するにつれて脳全体が萎縮して、認知機能全体が徐々に低下していく。
アルツハイマー病では、脳内にアミロイドβというタンパクが異常に蓄積し、神経細胞が傷害されて脳が萎縮していくことが分かっている。
このアミロイドβの脳内蓄積は発症の20年以上前に始まると考えられている。早い段階で発見できれば、新たな治療法や予防法の開発につながる。また進行を遅らせることができ、良好な状態を保つことが可能となる。
現在用いられているのは、背骨の間に針を入れて脳脊髄液(CSF)を採取する検査や、1人あたり十数万~数十万円かかる陽電子放射断層撮影(PET)検査で、侵襲性があったり、検査費用が高額なため、数千人規模の参加を必要とする臨床治験への適用には限界があった。
根本的な治療薬や予防薬の開発につながる成果
質量分析システムを用いたアルツハイマー病血液バイオマーカーは、2014年に発見されていた。アミロイドβが脳に蓄積すると、その一種がわずかな量だけ血液中で減ることが分かっていた。これを応用すれば脳のアミロイドβの蓄積を知ることができるが、微量のアミロイドβを血液検査で知るのは難しいと考えられていた。
国立長寿医療研究センターと島津製作所などの研究チームは、研究開発を重ね、アミロイドβの蓄積によって変動する複数の関連物質の比率から脳内の蓄積の度合いを推定する技術を開発し、わずか0.5ccの血液で測定できる方法を確立した。
この方法は、CSFやPET検査に匹敵する精度の極めて高いもので、研究グループは「世界的にいまだ成功していないアルツハイマー病の根本的な治療薬、予防薬の開発の飛躍的向上に大きく貢献するものと期待される」と述べている。
研究グループは、60~90歳の日本人121人とオーストラリア人111人を対象に、血液検査と脳画像検査を行い、結果を比較した。両国とも約9割で一致し、アミロイドβの有無を正しく判定できたという。
検診でアルツハイマー病を早期発見できる可能性
国立長寿医療研究センターでは、「アルツハイマー病を症状が出る前の段階で早期発見し治療することが、根本治療につながることが最近の研究で分かってきた。簡単な血液検査で対象者を選び出せれば、研究の加速を期待できる」と述べている。
研究チームの一員で2002年にノーベル化学賞を受賞した島津製作所シニアフェローの田中耕一氏は、「体内の微量な物質を測定する分析技術は、急速に進歩している。病気の治療や検査などに活用できるようにすることを目指している」と述べている。
アルツハイマー病進行を抑える作用のある治療薬はあるが、根本的に治す薬は現時点では開発されていない。
今回の研究で開発された検査法は、安全性が確認され、アルツハイマー病の治療法が開発されれば、発症前の高齢者検診に生かせる可能性があるという。
島津製作所
High performance plasma amyloid-β biomarkers for Alzheimer's disease(Nature 2018年1月31日)
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