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糖尿病治療薬「メトホルミン」が血圧を下げるメカニズムを解明
2018年03月20日

糖尿病治療薬であるメトホルミンに血圧を下げる作用がある可能性がある。東京医科歯科大学の研究グループは、メトホルミンが腎臓で塩分再吸収を行うNCCのリン酸化を低下させ、塩分排泄を増加させることを発見した。
メトホルミンの血圧を低下させる作用は、2型糖尿病だけでなく、メタボリックシンドロームにも効果的だという。
メトホルミンの血圧を低下させる作用は、2型糖尿病だけでなく、メタボリックシンドロームにも効果的だという。
メトホルミンが尿中への塩分排泄量を増加
研究は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科腎臓内科学分野の蘇原映誠准教授、橋本博子氏らの研究グループによるもので、国際科学誌「Metabolism」に発表された。
古くより使用されてきた糖尿病治療薬であるメトホルミンは、血糖降下作用効果の他にも、抗老化や抗がん作用などさまざまな効果をもつことから注目されている。最近の研究で、メトホルミンが糖尿病でない患者に対して血圧を低下させる効果があると報告されているが、腎臓におけるメトホルミンの血圧調節作用やそのメカニズムは不明だった。
研究グループは今回の研究で、メトホルミンの投与によって、マウスの尿中への塩分排泄量が増加することを明らかにした。続いて腎臓の塩分輸送体を調べ、腎臓の遠位尿細管にある「ナトリウム-クロライド共輸送体」(NCC)のリン酸化が低下しており、NCCの活性化が低下するために尿中への塩分排泄が増加していることを突き止めた。

メタボリックシンドロームなどへ活用に期待
さらに、メトホルミンによるNCCのリン酸化の低下が、ホルモンや神経など全身性の調節を介したものであることを除外するため、単離した腎臓による検討を行った。その結果、マウスでの実験と同様にNCCのリン酸化の低下を認め、メトホルミンがNCCのリン酸化を直接的に抑制することが示された。
今回の研究で、メトホルミンがNCCのリン酸化の抑制によって塩分排泄の増加をもたらすことが初めて明らかとなり、メトホルミンによる降圧作用のメカニズムのひとつが明らかになった。
近年、過食によって増加する、高血圧を有したメタボリックシンドロームなどへのメトホルミンの活用などが期待されるという。
この研究は文部科学省科学研究費補助金、公益法人ソルトサイエンス研究財団、公益財団法人武田科学振興財団、公益財団法人万有生命科学振興国際交流財団の支援のもとで行われた。
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科腎臓内科学分野Metformin increases urinary sodium excretion by reducing phosphorylation of the sodium-chloride cotransporter(Metabolism 2018年3月3日)
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