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トマトのリコピンはニンニクやタマネギで調理すると吸収されやすくなる
2018年05月16日
名古屋大学はカゴメとの共同研究で、トマトに含まれるリコピンは、ニンニクやタマネギ、油と一緒に加熱することで、トランス体からシス体へと構造が変化し、体内に吸収されやすくなることを明らかにした。それを促進している成分のひとつは、ニンニクやタマネギを調理することで生成される香り成分「ジアリルジスルフィド」だという。
トマトの「リコピン」には抗酸化作用がある
研究は、名古屋大学大学院工学研究科の後藤元信教授らによるもので、成果は関西大学で3月に開催された化学工学会第83年会で発表された。
トマトに含まれる赤い色素である「リコピン」には、活性酸素を消去する抗酸化作用などがある。体内の活性酸素が増えると細胞が傷つけられるが、リコピンはこの活性酸素を消し去って、「体をサビたような状態」になるのを防ぐ作用をする。
リコピンの構造には大きく分けて、「トランス体」と「シス体」がある。これは同じ化学式ながら化学構造が異なる幾何異性体の一種で、炭素二重結合において、炭素が反対側にあるものをトランス型、同じ側にあるものをシス型と呼ぶ。
これまでの研究で、リコピンはトランス体よりもシス体の方が体内に吸収されやすいことが報告されている。生トマトに含まれるリコピンは主にトランス体として存在するが、油と一緒に加熱することでシス体に変化する。
リコピンの体内への吸収を高める手法として、リコピンの構造をトランス体からシス体に変化させる以外にも、「加工・加熱」したり「乳製品や油との同時摂取」することが知られている。
関連情報
ニンニクやタマネギで調理するとリコピンが吸収されやすくなる
研究では、トマトペーストと各種野菜とオリーブオイルを混合後、80℃のお湯で30分間加熱し、加熱後の総リコピンに占めるシス体含有率をHPLC法にて比較した。
その結果、ニンニク、またはタマネギを混合したものは、トマトペーストとオリーブオイルのみの対照と比較して、有意にリコピンのシス体への構造変化が促進されることが分かった。
ニンニクやタマネギに含まれる特徴的な成分として、「含硫化合物」がある。研究グループは、これらがリコピンのシス体への構造変化に影響していると考え、促進成分を検討した。リコピンと候補となる含硫化合物と油脂を混合後、電子レンジで加熱(500W、4分間)し、加熱後の総リコピンに占めるシス体含有率をHPLC法にて比較した。
その結果、ニンニクやタマネギを調理することで生成されるジアリルジスルフィドが、もっともリコピンのシス体への構造変化を促進することが分かった。
「トマトと料理の相性が良い、ニンニクやタマネギなどのユリ科野菜と一緒に加熱調理することで、一層シス体リコピンが増えることは、食と健康を考える上で大変興味深いことです。この分野の研究がさらに進展することで、トマト製品のおいしさと機能性の関係性が、よりはっきりと示されるのではないかと期待しています」と、後藤教授は述べている。
カゴメ
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