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「ヒアリ」の早期発見のためのキットを開発 水際対策での効果に期待
2018年05月23日

南米原産で強い毒をもつ「ヒアリ」が国内に定着するのを防ぐために、港湾などでみつかったアリがヒアリかどうかを簡単に判別できる検査キットの試作品を国立環境研究所の研究グループが開発した
いち早くヒアリを検出して分布拡大を防ぐ
2017年6月に特定外来生物ヒアリが、尼崎市内で輸入コンテナとともに侵入していることが明らかとなって以降、東京・横浜・名古屋・大阪・博多などの国際港湾を中心に、ヒアリの上陸が次々と報告されている。
今後、定着・分布拡大した場合、甚大な経済被害が生じるおそれがある。ヒアリの分布拡大を防ぐためには、いち早くヒアリを検出して防除する必要がある。
特に、ヒアリが巣を作っている場合には、巣の大きさが大きくなる前に、的確な薬剤防除を施すことが重要だ。
しかし、ヒアリは体長が2.5ミリ〜6ミリ程度しかない小さなアリで、目視だけで日本のアリと区別することは難しく、現状ではアルコール標本などを専門家に送付して、形態の顕微鏡観察に基づき同定する以外に、その存在を確認する方法がなかった。
この方法では、ヒアリの送付から同定までに数日を要する。広範に監視(モニタリング)を行うためには、より早期に、かつ簡易にヒアリを確認する手法を開発する必要がある。
ヒアリのDNA断片を増幅して検出する技術を開発
そこで国立環境研究所は、より迅速にヒアリを発見するために、「LAMP法」というDNA技術を活用したヒアリ検出技術を新たに開発した。
同研究所は試作品の信頼性を確認した上で、希望する自治体や研究機関に提供する予定で、ヒアリの定着防止に重要な水際対策に役立つと期待されている。
検査キットの試作品を開発したのは環境研・生物・生態系環境研究センター生態リスク評価・対策研究室の五箇公一室長、坂本佳子研究員と環境ゲノム科学研究推進室の中嶋信美室長ら。
LAMP法とは、特定の種のDNA断片を特異的に増幅して検出する技術で、鳥インフルエンザの検出などにも活用されている技術だ。
5月より実働試験 自治体および研究機関に実装
この検査では、「DNA合成試薬」と呼ばれる試薬に、ヒアリの疑いがあるアリの全身と後脚1本をすりつぶしたものを混ぜ合わせる。するとDNAの合成量に比例して生じる副産物のピロリン酸マグネシウムによって反応を起こす。
液体が白く濁るとヒアリと判定される。約130分で結果が出るという。
国立環境研究所ではLAMP法に必要な器材や試薬をセットにした「ヒアリDNA検出キット」を作成し、5月より全国10地点の試験研究機関に配布して、実働試験を行う予定だ。
問題点があれば改善を施した上で、キットを完成させ、順次、希望する自治体および研究機関に実装していく。
ヒアリは春以降気温が上昇すると活動が活発になるので、同省などは注意を呼びかけている。
国立環境研究所
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