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「女性特有の遺伝子」を発見 バストの大きさ、月経痛の重さに関連
2018年06月13日

東京大学などの研究グループは、女性のバストの大きさや月経痛の重さなど、女性特有の体質と関連が強い遺伝子がある領域を発見したと発表した。
解明を進めれば、個人の体質に合った月経中の痛みや発熱などの改善や、病気の予防法を提案できるようになる可能性がある。
解明を進めれば、個人の体質に合った月経中の痛みや発熱などの改善や、病気の予防法を提案できるようになる可能性がある。
1万1,348人の女性の遺伝情報を解析
東京大学などの研究グループは、1万1,348人の女性の遺伝情報と、22の女性特異的な体質に関するアンケートの結果を用いて、大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、バストサイズや月経痛など女性特有の体質と関連の強い遺伝子領域をそれぞれ発見した。
研究は、東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座の大須賀穣教授らが、スタージェンの鎌谷直之氏らと共同で行ったもの。エムティーアイの子会社であるエバージーンの遺伝子解析サービスのプラットフォームを利用し、同社が運営する「ルナルナ」を利用している女性ボランティアの協力を得た。
女性ボランティアが自宅で採取した唾液より抽出したDNAから約54万の遺伝子多型(SNP)の情報を読み取り、その中から精度の高い検体およびSNPのみを抽出。
女性ボランティアが回答した体質に関するWEBアンケートの結果を用いて、大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、バストサイズや月経痛など女性特有の体質と関連の強い遺伝子領域を探した。
バストサイズに関連する遺伝子を発見
アンケートでバストのカップ数(AA~Gカップ以上)について質問し、その回答をもとに、バストサイズの傾向を数値化して解析を実施。
その結果、バストサイズが大きい傾向の人と小さい傾向の人とで異なる遺伝型の組み合わせが、6番染色体の「CCDC170」と、8番染色体の「KCNU1/ZNF703」と呼ばれる遺伝子領域にあることが明らかになった。
「CCDC170」は、乳がんの発症リスクとも関連が強いことが報告されており、エストロゲン受容体をコードしている「ESR1遺伝子」と隣接している。
今回、実際の遺伝子発現に与える効果を調べたところ、これらの遺伝子変動が「ESR1」の発現量よりも「CCDC170」の発現量に関連することが確認された。
月経痛の重さに関連する遺伝子を特定
また、月経痛の重い傾向の人と軽い傾向の人とで異なる遺伝型の組み合わせが、1番染色体の「NGF」と2番染色体の「IL1A」と呼ばれる遺伝子領域にあることも分かった。
「NGF」は神経の成長に関わる遺伝子としてよく知られており、「IL1A」は痛みや炎症を引き起こす炎症系サイトカインと呼ばれるタンパク質をコードし、月経痛の主な原因と言われている「プロスタグランジン」の生産を促すことが知られている。
さらに、アンケートで月経中にある症状として「発熱」を選んだ人では、6番染色体の「OPRM1」と呼ばれる遺伝子領域に特徴的な遺伝型の組み合わせがあることも明らかになった。
月経中の痛みや発熱 個人の体質に合わせた治療法を開発
これらの遺伝子多型が、実際の遺伝子の発現に与える量的効果を「eQTL」という。eQTLの解析を行うことで、遺伝子多型と疾患発症や体質の関連を検討できると考えられている。
今回のゲノムワイド関連解析で得られた成果をデータベースで調べたところ、研究グループの同定した遺伝子多型が、実際にタンパク発現をコードする遺伝子の発現やロングコーディングRNAの発現に関連することが分かった。
研究グループは今後、さらに研究を進め、遺伝因子および環境因子の全貌を明らかにし、個人の体質に合わせた月経中の痛みや発熱などを改善する治療法の開発につなげたいとしている。
女性特有の体質とそれに関連する疾患との関係性が明らかにすれば、一人ひとりに合った情報やアドバイスの提供、疾患予防法の選択が可能になると期待される。
京大学医学部附属病院女性外科Japanese GWAS identifies variants for bust-size, dysmenorrhea, and menstrual fever that are eQTLs for relevant protein-coding or long non-coding RNAs(Scientific Reports 2018年5月31日)
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