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運転中にたばこを吸うと交通事故による死亡リスクが1.5倍超に上昇
2018年07月12日
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喫煙習慣があると交通事故による死亡リスクが上昇するという前向きコホート研究の結果を、東北大学が発表した。男性ではたばこを1日20本以上吸うと、交通事故の死亡リスクが高まるという。
日本で運転中の喫煙が規制されていないのは不適切
運転中の喫煙は、注意散漫や運転操作の不適による交通事故を増やす可能性があり、危険をともなう。世界には車内での喫煙を規制している国が少なくない。
しかし日本では、運転中の携帯電話の使用は道路交通法で規制されているが、運転中の喫煙は規制されていない。
東北大学の研究グループの調査は、男性では1日たばこを20本以上吸う男性は、非喫煙者に比べて、交通事故死亡のリスクが1.54倍高いという調査結果を発表した。
「今回の研究は、交通事故死亡というこれまでと異なる観点からのたばこ対策を支持する結果になりました。交通事故は運転手や同乗者そして被害者がいる場合には、被害者にも大きな影響を与え、さまざまな経済的影響も生じさせます。そのため、今後も禁煙を含めた多角的な交通安全対策が必要であると考えられます」と、研究者は述べている。
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10万人対象の20年間の追跡調査で判明
研究は、東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野の相田潤准教授らによるもので、「Journal of Epidemiology」オンライン版に発表された。
これまでの研究で、喫煙はがんや循環器疾患などによる死亡リスクを高めることが報告されており、外因死との関連についても研究されている。しかし、外因死には転倒、交通事故、窒息、火災といった不慮の事故、他殺、自殺などの死亡が含まれており、交通事故による死亡と喫煙との関連を検討した研究は少ない。
研究グループは、喫煙と交通事故死亡の関連について検討。茨城県内38市町村における基本健康診査受診者9万7,078人(40~79歳)を対象とし、1993年以降、生命予後を住民基本台帳や人口動態調査死亡票の情報を用いて、20年間追跡した。
このうち追跡が可能だった9万6,384人(男性3万3,018人、女性6万3,366人)のデータを解析した。
ベースライン時の問診票をもとに、喫煙状況を「非喫煙者」「過去喫煙者」「1日20本未満吸う現在喫煙者」「1日20本以上吸う現在喫煙者」に分類。追跡調査によって把握した交通事故による死亡の発生を目的変数とし解析した。
1日20本以上たばこを吸う男性は交通事故による死亡リスクが1.54倍に上昇
その結果、交通事故による死亡は、男性の非喫煙者では7,335人中31人(1,000人年あたりのイベント発生率=0.24)、過去喫煙者では9,115人中46人(同0.30)、1日20本未満吸う現在喫煙者では5,125人中29人(同0.36)、1日20本以上吸う現在喫煙者では1万1,403人中62人(同0.32)だった。
男性では、1日20本以上吸う現在喫煙者は、非喫煙者と比較して交通事故による死亡のハザード比が1.54倍に上昇することが判明した(95%信頼区間:0.99-1.39)。
一方、女性では喫煙者の人数が少ないこともあり、観察期間中の喫煙者の交通事故死亡を認めず、統計解析を行うことができなかった。
今回の研究結果により、飲酒状況などの交絡因子を調整しても、喫煙習慣が交通事故死亡のリスクを高める可能性が示唆された。
運転中の喫煙を規制すべきか?
ただし、運転中の喫煙ではなく、ベースライン時の喫煙習慣を用いており、また、研究の交通事故死亡には、自動車による道路交通事故だけでなく、鉄道交通事故、水上交通事故、航空交通事故による死亡や歩行者の死亡なども含まれている
ことから、今回の解析は喫煙と交通事故死亡の関連を過小評価している可能性があるという。
日本では、健康増進法第25条一部改正案が閣議決定されるなど、たばこ対策が進められている。しかし、運転中の喫煙は規制されていない。
「調査結果は、運転中の喫煙について、対策を検討する必要があることを支持する結果になった」と、研究者は述べている。
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Does cigarette smoking increase traffic accident death during 20 years follow-up in Japan?: The Ibaraki Prefectural Health Study(Journal of Epidemiology 2018年5月31日)
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