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「データヘルス改革」第2期の工程表を公表 2020年度に本格稼働 厚労省
2018年08月21日
厚生労働省は7月に開催した「データヘルス改革推進本部」で、健康・医療・介護データを連結したデータプラットフォームについて、2020年度の本格稼働後に提供予定のサービス内容とその実現のために実施すべきことなどを明記した工程表を公表した。
データヘルス改革でビッグデータを連結
データヘルス改革の基盤となるのは、「被保険者番号の個人単位化」と「オンライン資格確認システムの導入」。ビッグデータを連結し、保健医療記録を共有の際のIDとして活用する。また、特定健診の情報について個人単位で一元的に集約することを目指している。
工程表では、提供予定のサービスとして、(1)保健医療記録共有、(2)救急時医療情報共有、(3)PHR・健康スコアリング、(4)乳幼児期・学童期の健康情報、(5)データヘルス分析、(6)科学的介護データ共有、(7)がんゲノム、(8)人工知能(AI)――の8項目を示し、サービス提供に向けて行うべきことと、その実施時期を明記している。
「患者情報を共有化できる環境」では、データ連結・IoT活用による最適な診断や診療の選択肢の拡大を目指す。具体的には、保険証のモバイル搭載により救急時を含む診療情報の時系列参照や、医療的ケア児の救急時の情報提供、情報提供書(紹介状)の電子化を実現する。
健康・予防情報の提供による健康増進、病気のリスク軽減も重要な課題だ。てはじめに乳幼児期・学童期の健診・予防接種などの健康情報を一元管理できるようにする。
「保健医療記録共有サービス」で幅広い医療情報を共有
「保健医療記録共有サービス」の運用を2020年度までに開始し、複数の医療機関、薬局などの間で、患者の診療情報や服薬情報等などを共有することを目指している。
目指しているのは、▼保健医療記録共有サービスを利用する医療機関、薬局などが全国に広がり、無駄な検査や投薬が減る、▼2020年度以降は、診療情報や服薬情報に加え、介護情報などさらに幅広い情報の共有が可能になる――ということ。
このサービスを実現することで、▼患者の同意の下、複数の医療機関、薬局等など、患者の診療情報や服薬情報等を共有し、最適な健康管理・診療・ケアを提供する、▼共有が有効なデータ項目について、病院、診療所、薬局などのデータをマルチベンダー対応で原則自動収集し、データ保存のクラウド化、閲覧ビューアの共通化により広域連携が可能なネットワークを構築する――といったことをイメージしている。
「健康スコアリングサービス」でコラボヘルスを推進
「健康スコアリングサービス」では、保険者のデータヘルス対策を強化し、企業の健康経営との連携(コラボヘルス)を推進するため、経営者が従業員等の健康状態などを全国との比較で客観的に把握した上で、保険者と連携して健康づくりに取り組める仕組みを構築する。
2020年度までの実現するべきこととして、自社の従業員の健康状態や医療費などを「見える化」し、企業と保険者間で健康課題の共有や予防・健康づくりに取り組む上での連携強化に活用できるようにする。
2018年度は、厚労省・経産省・日本健康会議の三者が連携し、NDBデータから保険者単位のレポートを作成の上、全健保組合および国家公務員共済組合に対して通知する(健保組合:約1,400組合、国家公務員共済組合:20組合)。
AI開発基盤に必要なデータを収集し、研究者や民間などが利活用できるサービスの構築にも着手する。重点6領域(ゲノム医療、画像診断支援、診断・治療支援、医薬品開発、介護・認知症、手術支援)を中心に、AIの社会実装に向けた取り組みを進めるとともに、研究者や民間等が利活用できるような、AI開発用クラウド環境を整備する。
2020年度までに、画像診断支援における医学会を中心とした画像データベースの構築や、医薬品開発において製薬企業とIT企業のマッチングを行うなど、重点6領域を中心にAI開発基盤を整備するとともに、医療機器メーカーへの教師付き画像データの提供や、医薬品開発に応用可能なAIを開発するなど、AIの社会実装に向けた取り組みを進める
健診データ分析にもとづくPDCAサイクルを実践
データヘルス計画は、レセプト・健診情報などのデータ分析に基づき、保健事業を効果的・効率的に実施するための事業計画。特定健康診査等実施計画と相互に連携して策定され、第2期は2018年度から2023年度までの6年間実施される。
データヘルス計画の狙いは、特定健診制度の導入やレセプトの電子化で、デジタル化されたビッグデータを分析することで、健康増進、病気の予防、増大する医療費の抑制に活用しようというもの。その特徴として、(1)特定健診・レセプトデータの活用、(2)身の丈に応じた事業範囲、(3)事業主との協働(コラボヘルス)、(4)外部専門事業者の活用などがある。
データヘルス計画では、医療費のデータや健診結果のデータ分析にもとづいて、PDCA(計画-実施-評価-改善)サイクルにより効率的・効果的な保健事業を実践することを目指している。
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