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「減塩」はやはり必要 塩分の摂り過ぎが糖尿病のリスクを上昇

 塩分の摂り過ぎが糖尿病を悪化させることを示した研究が相次いで発表されている。
 塩分の多い食事が、高血圧や体重増加の原因になり、心筋梗塞や脳卒中の危険性を上昇させることが、大規模な研究で確かめられている。
塩分の摂り過ぎが糖尿病リスクを上昇させる
 塩は血糖値に直接には影響しないが、過剰な塩分摂取は高血圧や体重増加の原因になり、結果としてインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性を引き起こし、2型糖尿病のリスクを上昇させると考えられている。

 糖尿病の人はとくに高血圧の影響をうけやすく、糖尿病と高血圧を治療しないでいると、心臓病、脳卒中、腎臓病などのリスクが上昇する。塩分の過剰摂取は胃がんなどのリスクも高める。糖尿病の食事療法の一環として塩分の摂取量を減らすことは重要だ。

 スウェーデンのカロリンスカ研究所環境医学研究所の研究によると、塩分の過剰摂取は2型糖尿病のリスクを上昇させる。研究チームは、スウェーデンの35歳超の2型糖尿病患者1,136人と、年齢や性を合わせた糖尿病ではない男女1,379人(対照群)のデータを比較した。

 その結果、食塩の摂取量が2.5g増えるごとに、2型糖尿病を発症するリスクは65%上昇することが分かった。

 さらに、食塩の摂取量が少ない人(5.8g未満/日)と比べて多い人(7.3g/日以上)では、2型糖尿病の発症リスクが72%上昇することも明らかになった。

関連情報
塩分を摂り過ぎると心疾患発症のリスクが2倍に上昇
 塩分の多い食事が、心筋梗塞、脳卒中の危険性を上昇させる。塩分摂取量が多い2型糖尿病の患者では、心血管疾患を発症するリスクが2倍に上昇するという研究も発表されている。

 新潟県立大学人間生活学部の堀川千嘉氏らは、日本人の2型糖尿病を対象とした前向きコホート調査である「JDCS」(Japan Diabetes Complications Study)の結果を解析した。

 研究では、2型糖尿病患者1,588人を対象に、食事に関する調査を行った。患者の年齢は40〜70歳で、HbA1cは6.5%以上だった。

 8年間のうちにどれだけ心血管疾患を発症したかを調べたところ、塩分摂取量が平均14g/日の群では、平均7g/日の群に比べ、心疾患発症のリスクが2.07倍に上昇した。

 HbA1cが9.0%以上で、血糖コントロールが不良の患者では、塩分の過剰摂取により、心疾患発症のリスクは9.91倍に跳ね上がった。

 「2型糖尿病のある人にとって、食事を見直すことが、血糖コントロールを改善し、心血管疾患のリスクを減らすために重要です。今回の調査では、塩分摂取量を減らすことが、糖尿病による危険な合併症を予防するのに役立つ可能性があることが示されました」と、研究者は述べている。
塩分を摂り過ぎないための4つの対策
 糖尿病患者向けの治療ガイドラインでは、糖尿病の合併症の危険性を抑えるために、塩分摂取量を控えることが勧められている。

 日本の食事ガイドラインでは、塩分摂取量を、1日6g未満に抑えることが推奨されている。一方、日本人の塩分摂取量の平均は、男性 10.8g、女性 9.1gだ。

 日本食は健康的な食事として評価されているが、塩、しょうゆ、みそといった調味料から塩分を摂り過ぎる傾向がある。日本食の長所を生かしながら塩分を減らすには、次の工夫が必要だ。

・ 料理はうまみや香味、酸味をいかし、なるべく塩分を控えめにする。

・ みそ汁はしっかりだしを摂り、具を多く入れてみその量を減らす。

・ 刺身などしょうゆをつけて食べる食品も多い。しょうゆは少しだけつけ、つけた部分から食べるようにする。

・ 麺類を食べるときは、塩分の多い汁を残す。

 味の濃いものを食べ慣れている人は減塩を続ければ、やがて薄味に慣れ、それが"ふだんの味"になっていく。まずはおかずを一品薄味にするなど、少しずつ慣れていくことが大切だ。
加工食品にも塩分が含まれる
 また、個々の食品に含まれている塩分量を意識することも大切だ。食品の塩分量は、包装などに記載されている栄養成分表示から、「ナトリウム(g)×2.54」という食塩換算式で算出することができる。

 特に気をつけたいのはハムや練り物などの加工食品だ。ウインナーソーセージ(1本20g)に0.38g、ロースハム(2枚30g)に0.75g、かまぼこ(2枚30g)に0.75gの塩分がそれぞれ含まれる。塩分量の多い食品を食べる量や頻度を減らす工夫が必要となる。
塩分の摂取量が増えると肥満が増える
 1日当たりの塩分の摂取量が増えるにつれて、「過体重」や「肥満」になるリスクも上昇することが、日本を含む4ヵ国の成人を対象とした研究で確かめられている。

 対象になったのは、食事と血圧に関する国際共同研究である「INTERMAPスタディ」に参加した、日本、中国、英国、米国の40~59歳男女4,680人。

 各国の参加者の1日当たりの塩分摂取量の平均は、日本が11.6g、中国は13.3g、英国は8.5g、米国は9.5gだった。体格指数(BMI)の平均は、日本が23.4、中国が23.1、英国が27.5、米国が28.9だった。

 研究では、塩分摂取量が増加するにつれて、どの国でもBMIは統計学的に有意に上昇することが明らかになつた。1日当たりの塩分摂取量が1g増加すると、過体重や肥満になるリスクが、日本では21%、中国では4%、英国では29%、米国では24%、それぞれ上昇していた。
外食や加工食品にはとくに注意が必要
 「塩分の多い食品を食べ過ぎることが、血圧上昇の要因になっており、そうした食品の多くは、商業的に販売されている加工食品であることに注意する必要があります」と、ノースウェスタン大学のジェレミア スタムラー教授は言う。

 たとえば米国が摂取する塩分の4分の3は、家庭で調理した食事からではなく、加工食品や包装済みの食品、レストランなどの外食などによるものだという。

 「高血圧に苦しむ人は大変に多く、多くの人が塩分の摂取量を減らすために、塩分を調整した食品を選択できるようになることを望んでいます。外食や加工食品を提供する企業も協力するべきです」と、米国心臓学会栄養委員会のシェリル・アンダーソン氏は述べている。

Sodium (salt) intake is associated with a risk of developing type 2 diabetes(Diabetologia 2017年9月14日)
Dietary sodium's impact may not be offset by other aspects of a diet(米国心臓学会 2018年3月5日)
Relation of Dietary Sodium (Salt) to Blood Pressure and Its Possible Modulation by Other Dietary Factors(Hypertension 2018年3月5日)
High-salt diet doubles threat of cardiovascular disease in people with diabetes(米国内分泌学会 2014年7月22日)
Dietary Sodium Intake and Incidence of Diabetes Complications in Japanese Patients with Type 2 Diabetes: Analysis of the Japan Diabetes Complications Study (JDCS)(Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 2014年10月1日)
Healthy diet may not offset high salt intake(インペリアル カレッジ ロンドン 2018年3月5日)
Salt reduction(世界保健機関 2016年6月30日)
[Terahata]
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