ニュース
厚労省が「食事摂取基準2020年版」の要点を公表 脂質異常症と高齢者のフレイルに対策
2019年09月18日
厚生労働省は、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」の策定ポイントを公開した。2020年版の要点や目標量などの数字についてパブリックコメントも募集した。
生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連を追加
厚労省が改定作業を進めている「日本人の食事摂取基準(2020年版)」は、9月末から10月中頃に、大臣告示に合わせて公表される予定。
2020年版では「対象特性」として、▼妊婦・授乳婦、▼乳児・小児、▼高齢者が、各論の一部として加えられる。2015年版では参考資料とされていた。
また、生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連について、▼高血圧、▼脂質異常症、▼糖尿病、▼慢性腎臓病(CKD)の記述が新たに加えられる。
BMIをエネルギーのバランスを示す指標として採用
エネルギーの摂取量および消費量のバランス(エネルギー収支バランス)の維持を示す指標としてBMIを用いるのは2015年版から変わっていない。日本人のBMIの実態などを総合的に検証し、目標とするBMIの範囲を提示する。
2020年版では「65歳以上では、総死亡率がもっとも低かったBMIと実態との乖離がみられるため、フレイルおよび生活習慣病の予防の両方に配慮する必要があることもふまえる」とされ、高齢者の筋力・体組成や身体活動レベルが、エネルギー必要量を介して各栄養素の充足、フレイル進展に及ぼす影響についての検討が加えられる見込みだ。
さらに、▼75歳以上(特に男性)の基礎代謝測定値のデータ収集が必要、▼個人の身体活動レベルを判断する質問表等の開発が必要、▼高齢者の筋力・体組成や身体活動レベルが、エネルギー必要量を介して各栄養素の充足、フレイル進展に及ぼす影響の検討が必要、▼高齢者の消化吸収不良がエネルギー出納に及ぼす影響についての検討が必要――と指摘されている。
炭水化物は目標量を設定
炭水化物については、必要量が不明であり、乳児以外では十分に摂取していることから、推定平均必要量、推奨量および目安量は設定されていない。
目標量は、下限はタンパク質と脂質の目標量の下の値に対応する炭水化物の目標量をもとに設定された。上限はタンパク質と脂質の上の値に対応させて設定された。ただし、「食物繊維の摂取量が少なくならないように注意が必要」としている。
脂質はタンパク質や炭水化物の摂取量を考慮して設定
脂質については、総エネルギー摂取量に占める割合(%エネルギー)として目標量(範囲)を設定。エネルギー産生栄養素であるため、「タンパク質や炭水化物の摂取量を考慮して設定する必要がある」としている。
飽和脂肪酸は、高LDLコレステロール血症の主な要因のひとつであり、循環器疾患や肥満のリスク要因でもあるため、生活習慣病の発症予防の観点から目標量を設定。
日本動脈硬化学会は、LDLコレステロールを動脈硬化に密接に関係しているとして重視している。空腹時のLDLコレステロール値が140mg/dLの人を〝脂質異常症〟の高LDLコレステロール血症、120~139mg/dLの人を境界域高LDLコレステロール血症としている。
総コレステロールからHDLコレステロールを除いたnon-HDLコレステロールについては、170mg/dL以上を高non-HDLコレステロール血症、150~169mg/dLを境界域高non-HDLコレステロール血症としている。
平成29年国民健康・栄養調査によると、日本人のnon-HDLコレステロール値の平均値は男性 142.9mg/dL、女性 143.2mg/dL。
「脂質異常症の重症化予防」を追加
2020年版では食事で摂取する飽和脂肪酸について「過剰摂取を介して生活習慣病に関連している」として重視。飽和脂肪酸の目標量の上限が設定される。
飽和脂肪酸と同じく、脂質異常症および循環器疾患に関与する栄養素としてコレステロールがある。「コレステロールに目標量は設定しないが、これは許容される摂取量に上限が存在しないことを保証するものではない。また、脂質異常症の重症化予防の目的からは、200mg/日未満に留めることが望ましい」と記述された。
高齢者のタンパク質の目標量を引き上げ
タンパク質については、推定平均必要量が設定される。成人・高齢者・小児の全年齢区分で男女ともに同一のタンパク質維持必要量[0.66g/kg体重/日]を用いて算定。
目標量の下限は、推奨量以上で設定。高齢者のフレイル予防を目的とした量を定めることは難しいが、高齢者については、摂取実態とタンパク質の栄養素としての重要性を鑑みて引き上げる。
タンパク質が関与し重症化予防の対象となる重要な疾患としてフレイル(サルコペニア含む)と慢性腎臓病があるが、研究報告の数が十分でなく、一定の結論を得られていないことから、量の設定は見送りされる。
フレイル予防について、65歳以上の高齢者で目的量を定めるのは難しいが、「身長・体重が参照体位に比べて小さい者や、特に75歳以上であって加齢にともない身体活動量が大きく低下した者など、必要エネルギー摂取量が低い者では、下限が推奨量を下回る場合があり得る。この場合でも、下限は推奨量以上とすることが望ましい」とされる。
食事摂取基準の策定ポイント(厚生労働省健康局健康課栄養指導室)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「保健指導リソースガイド」に関するニュース
- 2024年01月18日
-
【アンケート:抽選でAmazonギフト500円プレゼント】
「健康課題」と「健康管理システム/健康支援サービス」の活用について - 2023年11月27日
- 2023年度版【保健指導アトラス】を公開!保健指導に携わる人が知っておきたい法律・制度
- 2023年10月20日
-
インスリン・フォー・ライフ(IFL)グローバル
最近の活動と取組みについて(アリシア・ジェンキンス代表) - 2023年09月15日
- 2023年インスリン・フォー・ライフ(IFL)のウクライナ支援(IDAF)
- 2023年09月12日
- 期間限定40%オフ!「健診・予防3分間ラーニング」DVDセール開催中!2023年10月13日(金)まで
- 2023年07月12日
- 【アルコールと保健指導】「飲酒量低減外来」についてのインタビュー/面談時に30秒でできるアルコール指導ツールの紹介
- 2023年07月04日
- 健康経営の推進に!課題解決に合ったものを探せる「健康管理システム」一覧をリニューアルしました【サイト情報】
- 2023年04月04日
- 【サイト情報】「よろず相談センター」終了のお知らせ
- 2023年02月20日
- 【サンプル提供】間食指導に♪糖類ゼロでおいしい甘さ「パルスイート® カロリーゼロ」&ヘルシーレシピ集
- 2023年02月10日
- 【オピニオン公開中】職域でのアルコール指導・減酒支援、多職種・チーム連携