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血液1滴から13種類のがんを99%の精度で検出する技術を開発 健診の血液検査でがんを早期発見
2019年11月27日

東芝は、血液中の「マイクロRNA」を使った簡便で高精度ながん検出技術を開発した。血液1滴から13種類のがんを99%の精度で検出できるという。
健康診断などでの血液検査により、生存率の高いステージ0から、がん罹患の有無を識別できるようになる可能性がある。
健康診断などでの血液検査により、生存率の高いステージ0から、がん罹患の有無を識別できるようになる可能性がある。
がんは早期に発見すれば生存率が著しく向上
研究成果は、東芝と東京医科大学および国立がん研究センター研究所の共同研究によるもの。今後は早期の社会実装に向けて、2020年から実証試験を進めていく予定だ。
人口動態統計によると、がんは1981年以降長らく日本人の死亡原因の1位を占めている。2018年のがんによる死亡者数は約37万人、生涯でがんに罹患する確率は男性62%、女性47%に上る。
治療法は進歩しており、がんは早期に発見できれば、生存率が著しく向上する。たとえば肺がんの場合、ステージIIの5年生存率は約60%だが、ステージ0では97%だ。早期発見によりがんの生存率を向上することが社会的に重要な課題となっている。
血液中のマイクロRNAを調べればがんを早期発見できる
こうした課題の解決に向け、近年、簡便かつ高精度にがんを検出する手段として、血液中に約2,500種類ある「マイクロRNA」が注目されている。
「マイクロRNA」は、体の中で遺伝子やタンパク質を制御している20塩基程度の短い核酸分子で、血液中にも安定に存在していることが知られている。最近の研究で、血液中の「マイクロRNA」の種類と量を調べると、肺がんや乳がんなどのさまざまながんを早期に見つけられる可能性のあることが分かり、新しい診断マーカーとして期待されている。
生存率の高いステージ0からがん罹患の有無を識別
同社は、日本医療研究開発機構の次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発事業(体液中マイクロRNA測定技術基盤開発)に参画し、「マイクロRNA」を用いたがん検出技術の開発に取り組んできた。
共同研究では、東京医科大学と国立がん研究センターがもつ「マイクロRNA」に関する高度な医学的知見と、東芝が開発した「マイクロRNA」検出技術を融合することで、13種類のがんの患者と健常者を99%の精度で網羅的に識別することに成功した。
この中にはステージ0の検体も含まれている。今回の成果は、13種類のいずれかのがん罹患を簡便・高精度に検出するスクリーニング検査に適応可能だという。また、独自の「マイクロRNA」チップと専用の小型検査装置を用いることで、検査時間を2時間以内に短縮し、即日検査への適応が可能となる。
今回開発した「マイクロRNA」検出技術を用いることで、高精度でのがんの早期発見が期待できる。同社グループは、「超早期発見」「個別化治療」を特徴とした精密医療を中核として医療事業への本格的な再参入を表明している。

体液中「マイクロRNA」測定技術基盤開発」事業(国立がん研究センター)
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