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「ドライアイ」で苦しむ人は働き盛り世代に多い スマホを利用した「クラウド型臨床研究」で明らかに
2019年12月11日

現代病のひとつである「ドライアイ」で苦しむ人は増えているが、その多くは治療を受けていない。
順天堂大学は、「ドライアイ未診断者」の特徴を、ドライアイ指数を算出できる世界初のスマホアプリ「ドライアイリズム」を使い明らかにした。
順天堂大学は、「ドライアイ未診断者」の特徴を、ドライアイ指数を算出できる世界初のスマホアプリ「ドライアイリズム」を使い明らかにした。
ドライアイは生活の質や生産性を低下させる
「ドライアイ」は、涙の不足などが原因で目の表面に傷や障害などが生じる病気。もっとも一般的な眼科疾患で、有病者数は日本では2,000万人以上、世界では10億人以上と推測されている。
ドライアイの有病者数は多いが、診断を受けて治療を受けているのはごく一部だ。加齢やストレス、デジタル機器の使用時間の増加などを背景に、ドライアイは現代病として今後も増加するとみられている。
ドライアイの症状は、眼精疲労、眼痛、頭痛、自覚視力の低下、肩こりなどで、QOL(生活の質)を下げ、仕事の生産性を下げる原因となっている。
ドライアイの診断基準は2016年に改訂され、診断項目として、眼の不快感や視機能異常といった自覚症状と、「涙液層破壊時間(目を開いてから目の表面の涙の膜が破壊されるまでの時間)」が5秒以下であることが採用された。
順天堂大学は2018年に、「最大開瞼時間(まばたきをできるだけ我慢できる時間)」がドライアイのスクリーニング検査としての有用という研究を発表している。まばたきを我慢できる時間が12秒以下だとドライアイの疑いがあるという。
「ドライアイ指数」を計測するアプリを提供
順天堂大学は、ドライアイや眼精疲労といった症状と生活習慣の関連性を明らかにするため、世界初のアプリケーション「ドライアイリズム」を2016年にリリースした。
このアプリでは、まばたき回数の測定、ドライアイ質問紙票(OSDI)を用いてドライアイ指数を計測する。
日々のストレス、睡眠時間、VDT作業時間、便の回数、水分摂取量などを記録することで、ドライアイとの相関性を確認することもできる。
同大学は、「ドライアイリズム」を使った「クラウド型臨床研究」の成果を発表した。
「クラウド型大規模臨床研究」は、インターネットなどネットワークを経由して情報を収集する研究。通常の大規模研究は多くの費用や時間などが必要となるが、クラウド型であれば、ネットを通じて、実際の問診票や質問紙票を使わずに大規模に行える。
研究は、順天堂大学大学院医学研究科眼科学の村上晶教授、猪俣武範助教らの研究グループによるもの。研究成果は、米国医師会の眼科学雑誌「JAMA Ophthalmology」に掲載された。
「ドライアイ未診断者」の特徴が明らかに
研究では、ドライアイの症状はあっても、治療を受けておらず症状に苦しんでいる「ドライアイ未診断者」の特徴を明らかにした。
研究チームは、「ドライアイリズム」は研究期間中に、1万8,891回のダウンロードを得て、2万1,394の個別医療ビッグデータを収集した。
そのうち、基本情報、病歴、生活習慣、OSDI(ドライアイ疾患特異的問診票)などに回答した4,454人を研究対象とした。
その結果、53.8%(2,395人)がドライアイ症状はあるがドライアイと診断されていない「ドライアイ未診断者」であることが判明。
ドライアイ未診断者は、▼若年齢、▼男性、▼膠原病・精神疾患・眼手術の既往がない、▼コンタクトレンズの装用経験がない――とった危険因子をもつことが明らかになった。


スマホを使った個別医療や先制医療に発展
ドライアイを治療を受けず、生活の質(QOL)の低下や、仕事や勉学の生産性の低下に苦しんでいる人は多い。
「ドライアイ未診断者に対して早期の予防や効果的な介入が可能となる可能性があります」と、研究者し話している。
「発展的には、人工知能を用いた個別のドライアイの発症予測アルゴリズムの創出につなげたいと考えています。これにより将来のスマートフォンアプリを使った個別医療や先制医療に資することが可能になります」としている。
順天堂大学大学院医学研究科眼科学ドライアイリズム
順天堂大学が開発・公開しているスマホアプリの一覧
Characteristics and Risk Factors Associated With Diagnosed and Undiagnosed Symptomatic Dry Eye Using a Smartphone Application(JAMA Ophthalmology 2019年11月27日)
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