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尿を使う高感度・低コストのがん検診が実用化 線虫で15種類のがんを早期発見 世界初
2020年02月26日
体長わずか1mmの「線虫」が、がん患者の尿を高い精度で嗅ぎ分ける――。
生物の能力を活かして高感度・低コストでがん検査を行う世界初の生物診断である「N-NOSE」が実用化された。
生物の能力を活かして高感度・低コストでがん検査を行う世界初の生物診断である「N-NOSE」が実用化された。
尿を使う非侵襲で簡便ながん検査が実現
「N-NOSE」は、線虫(C. elegans)が優れた嗅覚により、尿中のがんの匂いを識別する性質を利用した検査。線虫が匂いに対して走性行動(がん患者の尿には誘引行動を、健常者の尿には忌避行動)を示す性質を利用している。
1万円で革新的ながん検診を受けられる
「HIROTSUバイオサイエンス」は、九州大学でこの研究を主導した広津崇亮氏が2016年に設立した福岡発のベンチャー企業。
福岡県から4年間、「革新的がん超早期診断技術実用化事業」として助成を受け「N-NOSE」を開発。今年1月から実用化し、検査を受けられる体制になっている。
「N-NOSE」の検査の流れは、(1)N-NOSE取り扱い施設へ検査の申し込み、(2)施設で採尿、凍らせた尿検体を検査センターへ運ぶ、(3)N-NOSE検査センターで検査を実施し、結果票を施設へ送付、(4)施設から検査結果を報告――というもの。
「N-NOSE」は1万円程度の料金で利用できる。同社のホームページ「エヌノーズ.com」では、1月よりこの検査を受けられる施設が公開されている。
9割以上の精度でがんを検出
生物の能力を活用したこの新しい検査は、簡単で痛みがなく、早期がんにも反応することが確かめられている。
「N-NOSE」では、早期とされるステージ0~1を含めすべてのステージで9割以上の患者を検出できた。統計学上の感度は90%異常、がん患者でない人を正しくがん患者でないと識別する特異度も95%と、高い精度を示している。
鹿児島市の病院を受診した消化器がん(大腸・胃・膵臓・食道・胆道胆嚢)の患者180人と健常者76名から尿を採取して「N-NOSE検査を実施。
「N-NOSE」は既存の腫瘍マーカーより高い検査性能を示し、とくにステージ0からIの早期がんについて、高い精度(AUC値で0.860)を示した。
また、がん切除手術の前と後で「N-NOSE」の値が変化し、手術評価として使用できることや、その後の経過観察、再発モニタリングにも有用な新たな指標になりえることなども確かめられている。
また、鹿児島市の病院を受診した大腸・胃がんの患者78名から、がん切除手術前と手術後とで尿を採取し、「N-NOSE」検査を実施。59人で、術前の検査値と比較して術後の検査値が有意に低下することが判明した。
がんの入り口の検査としての普及を目指す
「N-NOSE」を、まずスクリーニングとして受診し、その結果が陽性なら次の段階の検査に進む。定期的にこの検査を受け、ある時点で陽性になっても、早期がんの段階で発見できるので、生存の可能性はきわめて高くなると考えられている。
日本はほかの先進国に比べがん検診の受診率が低く、3割程度にとどまる。がんが進行してから治療を受けた場合、死亡率が高くなり、治療費も高額になる。がんの早期発見の価値は大きい。
「N-NOSEを、がんの入り口の検査(1次スクリーニング検査)として確立・普及させていきたい。これまでがん検査を受けていなかった人々、たとえば子育てや仕事で忙しく検診率が低い女性などの意識を変え、がん検診の受診率を大幅に引き上げることを目指す」と、広津社長は述べている。
現在、線虫の遺伝子を組み替え、がん種を特定できる固体の開発も進められている。すでに、膵臓がんをターゲットにした線虫ができているという。
がんの早期発見のサポートやがん検診受診率向上に向けた啓発を促進するため、HIROTSUバイオサイエンスとSOMPOひまわり生命保険、ウェルネス・コミュニケーションズは1月10日に業務提携を行うことを発表した。
「N-NOSE」の申込方法については専用サイト「エヌノーズ.com」で紹介されている。受診可能な医療機関なども順次、掲載される。現在、多くの健康保険組合などから検査対応に関する問い合わせがが寄せられているという。
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