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【新型コロナウイルス感染症】医療従事者への風評被害が深刻化 「ともに立ち向かおう」と呼びかけ
2020年04月15日

多くの医療従事者が、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止しようと、日々、懸命に働いているが、そうした医療従事者への風評被害が増えている。
海外では医療や福祉の関係者に感謝と敬意を込めて拍手をおくる運動が広がっている。「新型コロナウイルス感染症に対し、ともに立ち向かおう」と呼びかけられている。
海外では医療や福祉の関係者に感謝と敬意を込めて拍手をおくる運動が広がっている。「新型コロナウイルス感染症に対し、ともに立ち向かおう」と呼びかけられている。
医療従事者が受けているいわれなき誹謗中傷
新型コロナウイルス感染症に感染した患者の増加にともない、医療機関が感染した患者の診察に当たる機会が増えている。同時に、院内感染やその疑いのあるケースも全国各地で報告されている。
その影響で、感染患者を診たというだけで、医師や看護師など医療従事者がいわれなき誹謗中傷を受ける事例が各地で散見されている。
日本医師会はこの事態を憂慮し、「"うつさない、うつらない"が合言葉」として動画の公開を開始した。
医療従事者への風評被害として、「感染者を診たというだけで、"あそこには行くな"という風評が広まり、休診せざるをえなくなった」という医療機関や、「感染症患者の対応をしている施設の職員というだけで接触を拒まれた」「クラスター(集団)感染が起きた施設の従業員の子供が学校でいじめられている」といった事例を紹介。
「全国の医療従事者は感染拡大を防ぐため全力で取り組んでいます。この感染症を終息させるためには、国民の皆さまと医療従事者が一丸となって取り組んでいくことが必要です」と、日本医師会常任理事の城守国斗氏は述べている。
見えないウイルスに対する不安が風評被害を生む
日本看護倫理学会も声明を発表し、「病院や訪問看護ステーションなどの医療機関、およびそこで働く医療従事者が、誹謗中傷や風評など、不条理な被害を受けています」と訴えた。
医療機関の職員の子供に対するいじめ、保育園への出入り禁止、職員や患者のタクシー乗車拒否、患者からの受診拒否、転院希望などが報告されている。
新型コロナウイルス感染症と無関係であっても、患者の転院先や退院先の療養環境の確保が難しくなったケースや、コロナ陽性患者を最初に診た診療所の医師が診療中止の張り紙を出したところ、嫌がらせの電話やいたずら書きを受けるといった事態も起きている。
訪問看護ステーションでは、看護師が「お前は看護師か、なぜ看護師が外を歩いている。お前のせいで感染が拡がる。迷惑だから外を歩くな」という暴言をされたケースもあるという。
「世界中の人びとが、これまでに経験したことのない見えないウイルスに不安を抱いているのは当然です。しかし、最前線で医療に携わっている人たちは、自身の健康が危険にさらされるような過酷な状況で頑張っています。そうしたなかでの誹謗中傷、そして差別は、その士気を下げることにつながります。1人でも多くの人を救うために努力している医療従事者の尊厳を守ってください」と、同学会では強調している。
「職員のためのサポートガイド」を公開
新型コロナウイルスとの戦いもすでに長期に及んでいる。日本赤十字社は、「感染症対応に従事されている方々やそのご家族が、ストレス反応を抑え、こころの健康を維持する必要があります」として、「職員のためのサポートガイド」の公開を始めた。
未知のウイルスは人々を不安に駆りたて、ウイルスを連想させるものへの嫌悪・差別・偏見を生みだし、人と人との間の連帯感や信頼感を破壊する。最前線で対応する職員はその影響をもっとも強く受けやすい。
困難な状況で働く職員がメンタルヘルスを維持するために、(1)身体的安全の確保や職務遂行に必要な技能の補強や環境整備、(2)個人のストレスマネジメント能力、(3)家族や同僚からのサポート、(4)組織からのサポートが必要だという。
正確な情報を共有し、相談しやすい環境をつくり、協力し合うことが必要となる。「身近な人同士で互いに支えあい、組織としてサポートすることが、このウイルスに対する最大の防御となります」と強調している。
医療や福祉の関係者に感謝と敬意を込めて拍手
新型コロナウイルス感染症が流行するなか、最前線で戦っている医療や福祉の関係者に感謝と敬意を示し、拍手をおくる取り組みが、欧州や米国で広がっている。これらの医療従事者は、感染するリスクを負いながらフル活動で働いている。
この取組みは「クラップ フォー ケアラーズ:医療従事者に拍手を」と呼ばれており、感染リスクの高い医療関係者らに対する偏見を抑制しようと、欧州などを中心に交流サイト(SNS)上で広まったものだ。
英国でも、医療や介護に従事している約130万人に対して感謝を示す活動が展開されている。感染症の拡大の影響で国民の間で広がってしまった距離を縮めて、団結と士気を向上させようという狙いもある。
英国の「クラップ フォー ケアラーズ」は木曜日の午後8時に行われ、全国の人々が玄関先やバルコニー、庭に出て拍手し、歓声を上げる。社会的距離(ソーシャル ディスタンス)を保ちながら、鍋やフライパンを叩いたり、歌ったり踊っている人もみられる。
クラップ フォー ケアラーズ
英国人がコロナウイルスと戦っている医療従事者に拍手をして感謝を示した
英国のTelegraphが公開しているビデオ
英国人がコロナウイルスと戦っている医療従事者に拍手をして感謝を示した
英国のTelegraphが公開しているビデオ
治療をしてくれた医師や看護師に感謝の意を
新型コロナウイルスに感染し入院していて、回復した後に4月12日に退院したジョンソン英首相も、「クラップ フォー ケアラーズ」に加わった。ジョンソン首相は48時間、生死の瀬戸際にあり、治療をしてくれた医師や看護師に感謝の意を示している。
「医療機関の素晴らしい対応に感謝の気持ちで一杯です。また、同じような状況にある人々に心から同情します」としている。
こうした動向は世界中に広がっており、ドイツのメルケル首相は医療従事者に対する敬意と感謝を表明し、フランスではエッフェル塔に「MERCI(ありがとう)」というメッセージが映しだされた。
ヨーロッパがコロナウイルスと戦っている医療従事者に拍手
フランスのAFPが公開しているビデオ
新型コロナウイルス感染症の正しい理解のために(日本医師会)フランスのAFPが公開しているビデオ
新型コロナウイルスと闘う医療従事者に敬意を(日本看護倫理学会)
新型コロナウイルス感染症対応に従事されている方のこころの健康を維持するために(日本赤十字社)
新型コロナウイルス感染症関連情報(日本看護協会)
感染者および医療従事者に対する精神的ケアの必要性(日本感染症学会)
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