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【新型コロナ】6月時点での神奈川県内65医療機関のSARS-CoV-2抗体陽性率は2.4% 神奈川県内科医学会
2020年09月25日
©YCU-CDC, amana/Hydroid
神奈川県内科医学会は、神奈川県における新型コロナウイルス不顕性感染調査の結果を公表した。1,603名の抗体検査を実施した結果、6月時点での神奈川県内65医療機関におけるSARS-CoV-2抗体陽性率は2.4%であることが明らかになった。
調査の詳細は、日本感染症学会の英文誌である「Journal of Infection and Chemotherapy」に掲載された。
調査の詳細は、日本感染症学会の英文誌である「Journal of Infection and Chemotherapy」に掲載された。
1603名の抗体検査で判明
神奈川県内科医学会は9月7日、神奈川県における新型コロナウイルス不顕性感染調査の結果を公表した。研究では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の不顕性感染の実態を抗体陽性率から調査した。また、被験者アンケートから、不顕性感染における背景要因を検討した。
COVID-19は無症候者や発症前にも感染力があるという報告もあり、不顕性感染者が感染拡大を助長する可能性もあるため、その実態を知ることは地域でのCOVID-19感染率を知る上で重要となる。
日本での報告では、抗体陽性率は0.03~3.3%と幅があるが、国外の調査結果の陽性率の幅はさらに大きく、1%台から10%を超えている。
しかし、これまでの報告では、被検者の行動や合併症などの背景情報と抗体陽性率との関係は明らかではない。また、BCGワクチンはウイルス感染に対する予防となることを示唆している報告もある。
そこで同学会は、こうした背景情報を含んだ調査を、神奈川県にて、患者・医師・看護師を対象に実施した。
神奈川県は日本最大都市の東京都に隣接し、人口も920万人で東京都に次ぐ2位。ダイヤモンドプリンセス号が停泊していた横浜があり、感染者数は1,500名を超え、日本で3位の県だ。神奈川県での調査結果は、大都市への電車での通勤・通学の多い各国のベッドタウンのモデルにもなりうる。
研究グループは、神奈川県の65医療機関で、患者・医師看護師1,603名を対象に、SARS-CoV-2抗体(IgG)陽性の割合および背景因子との関係を調査した。SARS-CoV-2抗体(IgG)の測定はイムノクロマトグラフテストで分析した。
抗体陽性率は2.4% 医師看護師では2.0%
その結果、39名(2.4%)がIgG抗体陽性を示し、患者では29名(2.9%)、医師看護師では10例(2.0%)、コントロールでは0名だった。
抗体陽性判明後は、各医師の判断により、必要に応じてPCR検査を実施したが、PCR検査にて陽性となった者はいなかった。医療機関当たりの陽性者は1人から6人であり、ばらつきがあったが、陽性者が多く見られた地域では1ヵ月以内にクラスター発生が認めらた地域もあった。
研究グループは、海外渡航者および海外渡航者との接触が不顕性感染の要因となる可能性も考慮したが、この点は有意な要因とはならなかった。抗体陽性者の中には、2020年の海外渡航歴のあるものはいなかった。一方で、陰性群には85名の渡航者がおり、COVID-19が流行した国に渡航した者もいた。また、2020年に海外渡航歴のある人もしくは訪日した人との接点に関しても、陽性群の方が少ない傾向がみられた。
密集・密接・密閉の観点からは、週5回以上の電車利用が、不顕性感染の要因になるかもしれないと考えたが、両群とも約20%だった。研究グループは「密集・密接・密閉を避けるように、行政から注意勧告がなされているが、今回の調査では満員電車からの影響は考えにくい」と示している。
生活圏における新型コロナウイルスの感染者の有無も影響は認められなかった。「電車利用が不顕性感染への影響がなかったこととあわせると、マスクの着用による飛沫感染防止が有効であった可能性もある」としている。
BCG接種も、抗体陽性の要因にはならなかったが、日本における接種率が高いこともあり、差がつきにくかった可能性がある。また、抗体陽性者には、インフルエンザの診断を受けたものはおらず、インフルエンザとは区別されており、併発している者もいなかったことを確認した。
基礎疾患としては、肺疾患が陽性は5例(12.8%)、陰性は84例(5.4%)であり、有意差は認められなかった。「多変量解析でも有意な要因ではなかったが、感染後の重症化のリスク因子のため注意は必要だろう」と、研究グループは述べている。
また、SARS-CoV-2は細胞表面のACE2(angiotensin-converting enzyme2)受容体に結合し、侵入することから、ACEIやARBの服用との関係も解析したが、とくに傾向はみられなかった。ACEIやARBは重症化リスクとはならないという報告もあるが、不顕性感染においても影響はないと考えられるとしている。
COVID-19の不顕性感染が想定よりも起きている可能性
このように、日本の神奈川県における医療機関および医療機関の外来での調査の抗体調査では、抗体陽性率は2.4%だった。また、年齢と性別とコントロール群の陽性率で補正した場合の、患者群と医師看護師群の陽性率は、それぞれ2.7%、2.1%だった。
「政府による東京・大阪の抗体陽性率よりも高く、不顕性感染が想定よりも起きていることが考えられる。また、不顕性感染による抗体陽性に影響を及ぼす背景因子は認められなかった。定期的な抗体検査は地域でのCOVID-19感染伝播を推定できる有効な手段と考えられる」と、神奈川県内科医学会学術部会長の松葉育郎氏は述べている。
神奈川県内科医学会
Survey of the current status of subclinical coronavirus disease 2019 (COVID-19)Journal of Infection and Chemotherapy 2020年9月6日
Ikuro Matsuba, Nobuo Hatori, Norihiko Koido, Yoshiyuki Watanabe, Futoshi Ebara, Yoko Matsuzawa, Tetsuo Nishikawa, Tomoyuki Kunishima, Hisakazu Degawa, Masanori Nishikawa, Yoshiaki Ono, Akira Kanamori
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