ニュース
ウォーキングなどの運動は「1日にわずか12分」でも効果がある 運動など生活スタイル改善の指導を容易に
2020年12月22日

ウォーキングなどの運動が有益であることは知っていていても、「仕事が毎日忙しくで運動の時間をとれない」という人は多い。
そんな人も、1日にわずか12分の運動であっても、続ければ恩恵を得られる可能性があることが、米マサチューセッツ総合病院などによる研究で明らかになった。
フラミンガム心臓研究に参加した411人の中年の男女のデータから、運動の前後で、アミノ酸、脂肪酸、脂質、炭水化物などの代謝により生成される588種類の代謝物を調査した。
そんな人も、1日にわずか12分の運動であっても、続ければ恩恵を得られる可能性があることが、米マサチューセッツ総合病院などによる研究で明らかになった。
フラミンガム心臓研究に参加した411人の中年の男女のデータから、運動の前後で、アミノ酸、脂肪酸、脂質、炭水化物などの代謝により生成される588種類の代謝物を調査した。
たった12分のウォーキングでも体の代謝に変化が
ウォーキングなどの運動の短期的な効果として、体でブドウ糖や脂肪酸の利用が促され、血糖値が低下することが挙げられる。
運動を続けることで、高血圧や脂質異常症の改善効果も得られる。カロリーの摂取量と消費量のバランスが良くなり、肥満を予防・改善できる。さらに、心肺機能も良くなり、体の代謝や心臓血管も良くなる。
しかし、運動により得られる恩恵はそれだけにとどまらない。活発なウォーキングなどの有酸素運動を、たった12分という短い時間行うだけでも、体の多くの代謝物に変化が出ることが、米マサチューセッツ総合病院(MGH)などによる研究で明らかになった。
12分間の運動を集中して行うことで、健康増進と関連の深い代謝物の80%以上に影響があらわれるという。この研究の成果は、米国心臓学会(AHA)が発行している医学誌「Circulation」に掲載された。
短時間の運動は効果があるのか? 運動の代謝への影響を調査
「軽めのウォーキングなどの運動を短時間行うことからはじめて、少しずつ強度や時間を上げていくことが、運動ガイドラインで勧められています。とにかく少しでも良いから、運動をした方が、何もしないでいるよりはずっと良いのです」と、MGHの心不全部長であるグレゴリー ルイス氏は言う。
「運動の強度を少しずつ高めていき、時間を延ばしていくのが理想的ですが、そうした余裕のない人も多くいます。短い時間の運動は効果がないのか、効果があるとしたらどにような影響があるのかは、これまでよく分かっていませんでした」。
「今回の研究では、運動と特定の代謝経路との関連を調べ、運動の代謝への影響を包括的にみることで、運動が長期的にどれだけ健康増進に関わっているかを明らかにすることを目指しました」と、ルイス氏は言う。
その結果、短時間に集中して行う運動であっても、インスリン抵抗性、酸化ストレス、血管反応性、炎症、長寿などの身体機能に深く関わる重要な代謝物の循環に影響があらわれることが明らかになった。
「運動を続けることで、心臓や血管が良くなります。逆に運動不足であると、血行不良になり、血管などに炎症が起こりやすくなることが知られています。2型糖尿病や認知障害などの加齢性の慢性疾患にも、炎症は深く関わっています」と、ルイス氏は指摘する。
関連情報
12分間の活発な運動により、体の代謝物に好ましい変化が

高血圧や2型糖尿病は代謝の上でもリスクに
研究ではさらに、こうした代謝反応は、性別や肥満度(BMI)など、運動以外の要因によって調節されている可能性があることも示された。肥満のある人は、運動のもたらす恩恵に対して、体が部分的に抵抗してしまっているおそれがある。
「こうした代謝物を調べることで、運動のもたらす生理学的反応を知ることができるかもしれません。たとえば腎臓や肝臓などの機能を調べる指標を得るために血液検査が行われていますが、運動についても検査で分かることが多いのではないかと考えられます」と、MGHの心臓病部のマシュー ナヨール氏は言う。
「たとえば、検査でDMGV値が低いことが示されれば、その人は運動をよくしていて、フィットネスレベルが高まっている、といった具合にです」。
「私たちは、運動が健康増進にどのように役立つているかを、分子レベルで明らかにしようという研究を始めています。高血圧や2型糖尿病などの疾患は、代謝の上でも危険因子となります。代謝物を調べることで、そうしたリスクの高い人を早期に発見すれば、早い時期から食事や運動などの生活スタイルの改善を促す介入ができるようになります」と、MGHの心臓病部のラビ シャー氏は言う。
Bursts of exercise can lead to significant improvements in indicators of metabolic health(マサチューセッツ総合病院 2020年11月16日)Metabolic Architecture of Acute Exercise Response in Middle-Aged Adults in the Community(Circulation 2020年9月15日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「健診・検診」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
- 2025年02月17日
- 働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」
- 2025年02月10日
- [高血圧・肥満・喫煙・糖尿病]は日本人の寿命を縮める要因 4つがあると健康寿命が10年短縮
- 2025年01月23日
- 高齢者の要介護化リスクを簡単な3つの体力テストで予測 体力を維持・向上するための保健指導や支援で活用
- 2025年01月14日
- 特定健診を受けた人は高血圧と糖尿病のリスクが低い 健診を受けることは予防対策として重要 29万人超を調査
- 2025年01月06日
-
【申込受付中】保健事業に関わる専門職・関係者必携
保健指導・健康事業用「教材・備品カタログ2025年版」 - 2024年12月24日
-
「2025年版保健指導ノート」刊行
~保健師など保健衛生に関わる方必携の手帳です~ - 2024年12月17日
-
子宮頸がん検診で横浜市が自治体初の「HPV検査」導入
70歳以上の精密検査無料化など、来年1月からがん対策強化へ