ニュース
糖質の摂り過ぎが恐いのは肥満だけではない 加糖飲料が50歳未満の女性の大腸がんリスクを上昇
2021年06月01日

50歳未満の女性が糖質の多く含まれる飲料を摂り過ぎていると、大腸がんのリスクが2倍以上に上昇することが明らかになった。
「糖質を多く含む高カロリーの飲料については、肥満や2型糖尿病などの代謝性疾患にもたらす悪影響が強調されることが多いのですが、今回の研究で、がん予防の観点からも飲み過ぎを控えた方がよいことが示されました」と、研究者は述べている。
「糖質を多く含む高カロリーの飲料については、肥満や2型糖尿病などの代謝性疾患にもたらす悪影響が強調されることが多いのですが、今回の研究で、がん予防の観点からも飲み過ぎを控えた方がよいことが示されました」と、研究者は述べている。
若い世代の大腸がんが30年間で増加
50歳未満の女性が糖質の多く含まれる飲料を摂り過ぎていると、大腸がんのリスクが上昇することが、米ワシントン大学医学部の研究で明らかになった。世界的に若年層の大腸がんが増えており、研究成果はそのメカニズムの解明に役立つと期待されている。
糖尿病はがんのリスクも高める。日本人でも、主に2型糖尿病は、大腸がん、肝臓がん、膵臓がんなどのリスク上昇と関連していることが報告されている。
「今回の研究は、高カロリーの清涼飲料や菓子類、ジャンクフードなど、糖質の摂り過ぎを抑制する公衆衛生上の取組みを支持するものになりました。若年層の大腸がんの発症率がこの30年間で上昇しており、がんを予防するために優先して取り組まなければならない課題になっています」と、ワシントン大学公衆衛生学部のイン カオ氏は言う。
「若い年齢層で大腸がんを発症するケースが増えたことで、米国の大腸がんと診断される平均年齢は72歳から66歳に下がりました。若年者のがんは診断時に進行していることが多く、高齢者のがんとは異なる特徴があります」としている。
同大学は、がんのリスク因子や分子構造を明らかにし、精密検査を普及させるなどの戦略をたてて、がんの早期発見・予防を促進するための研究を、米国立がん研究所(NCI)や全米総合がんセンターネットワークの支援を得て行っている。
「これまでの研究で、不健康な食事により大腸がんの早期発症のリスクが高まることが示されていましたが、特定の栄養素や食品についてはよく分かっていませんでした」と、カオ氏は言う。
糖質の多い高カロリー飲料の飲み過ぎで大腸がんリスクが2倍以上に
研究グループは、米国の女性看護師を対象に実施されているコホート研究「看護師健康研究II(Nurses' Health Study II)」のデータを解析した。これは、女性の2型糖尿病やがんなどの慢性疾患のリスク因子を探る目的で、1989年に登録がスタートし10万人以上が参加している大規模な前向き研究だ。
25~42歳の9万5,464人の女性が4年ごとの食事アンケートに回答し、さらに4万1,272人は自分が10代(13~18歳)のときに摂取していた飲料の種類と量についての質問にも回答した。
その結果、コーラやジュースなど糖質が含まれる飲料を週に237mL(8オンス)未満しか飲んでいない女性に比べ、1日に2杯以上飲んでいた女性は、若年性大腸がんを発症するリスクが2.18倍に上昇した。
1日の高糖質の飲料の摂取量が1缶分(237mL)増えるごとに、若年性大腸がんの発症リスクは16%上昇することも明らかになった。
13~18歳の時期は体の発育にとって重要だが、この時期に高カロリー飲料を毎日飲んでいると、50歳までに大腸がんを発症するリスクが32%増加することも分かった。
さらに、高カロリー飲料を、低カロリー甘味料の入った飲料、コーヒー、牛乳などに置き換えた場合、若年性大腸がんのリスクは17~36%低下することも示された。
インスリン抵抗性ががん発症を促している可能性
「糖質が多く含まれる高カロリー飲料は、成人だけでなく子供や若者でも、2型糖尿病や肥満などの代謝性疾患に関連していると考えられていますが、今回の研究で、若い人の大腸がんの発生にも影響していることが分かりました」と、カオ氏は述べている。
若年性の大腸がんの発症率はこの30年間で増加しているが、それに合わせたように高カロリー飲料の消費も増えている。とくに、米国では20~34歳の若年層で高カロリー飲料の消費が多い。
これまでの研究では、50歳未満の若年期の肥満が大腸がんのリスクと関連があることが示されている。これらの背景に共通してあるものとして、血糖を下げるインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性などの代謝障害が考えられる。インスリン抵抗性が、がんの発症に重要な役割を果たしている可能性があるという。
米国では一般的に、大腸がんの検査を受けることが推奨されるのは50歳からだ。しかし、米国がん学会(ACS)は最近になり、大腸内視鏡検査の初回スクリーニング検査の推奨年齢を45歳に引き下げた。同学会のガイドラインによると、がんの家族歴などリスク要因を追加してもっている人は、さらに早い段階で検査を受ける必要がある。
「高カロリー飲料の摂取量を減らし、低カロリー甘味料を使った飲料に変更することは、健康を長期的に守るためのひとつの効果的な手段となりえます」と、カオ氏は指摘している。
Sugar-sweetened drinks linked to increased risk of colorectal cancer in women under 50(ワシントン大学 2021年5月6日)Sugar-sweetened beverage intake in adulthood and adolescence and risk of early-onset colorectal cancer among women(Gut 2021年5月6日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2022 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「特定保健指導」に関するニュース
- 2021年12月21日
- 特定健診・保健指導の効果を10年間のNDBで検証 体重や血糖値が減少し一定の効果 ただし体重減少は5年後には減弱
- 2021年12月21日
- 【子宮頸がん】ワクチン接種を受けられなかった女性へのキャッチアップが必要 子宮頸がん検診で異常率が上昇
- 2021年12月21日
- 肥満や糖尿病の人ではFGF21の抗肥満作用が低下 朝食抜き・毎日飲酒・喫煙といった生活スタイルが影響
- 2021年12月21日
- 【申込開始】今注目のナッジ理論、感染症に関する教材が新登場!遠隔指導ツールも新作追加! 保健指導・健康事業用「教材・備品カタログ2022年版」
- 2021年12月20日
- 牛乳を毎日コップ1杯飲んでいる女性は脳卒中のリスクが低下 牛乳に血圧を下げる効果が?
- 2021年12月20日
- 「住環境」は健康増進にも影響 「断熱と暖房」が血圧や住宅内での活動量に寄与 足元が暖かいことも大切
- 2021年12月13日
- 早食いは肥満や体重増加につながる ゆっくり味わってよく噛んで食べるとエネルギー消費量を増やせる
- 2021年12月13日
- 【新型コロナ】子供の心の実態調査 食事を食べられなくなる「神経性やせ症」の子供がコロナ禍で増加
- 2021年12月13日
- 【新型コロナ】ファイザーのワクチンの3回目接種はオミクロン株にも効く? 抗体価は半分に減るものの2回接種より25倍に増加
- 2021年12月13日
- 【新型コロナ】日本人はなぜ感染・死者数が少ない? 風邪でつくられた免疫が新型コロナにも有効に働いている可能性 理研
最新ニュース
- 2022年05月23日
- 【新型コロナ】保健師がコロナ禍の拡大を食い止めている 保健師の活動が活発な地域では罹患率は減少
- 2022年05月23日
- 【新型コロナ】起床・朝食が遅くなった子供で運動不足や栄養バランスの乱れが 規則正しい食事・睡眠が大切
- 2022年05月23日
- 【新型コロナ】コロナ禍で結婚数と出生数が減少 将来に対する不安や経済的な悩みが原因?
- 2022年05月23日
- 【子宮頸がん】HPVワクチンの予防効果は優れている 接種9年後の感染率は0% ワクチンの有効率は100%
- 2022年05月23日
- 余暇に軽い身体活動をするほど健診結果は良くなる 活動量の実測データにもとづく世界初の研究
~保健指導・健康事業用 教材~
-
アイテム数は3,000以上! 保健指導マーケットは、健診・保健指導に役立つ教材・備品などを取り揃えたオンラインストアです。 保健指導マーケットへ