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ウォーキングで糖尿病を予防 1000歩増やすだけでも効果 1日8000歩だと死亡リスクは51%減少

 本格的なスポーツや運動をしていなくとも、1日の歩数の合計を増やすと、2型糖尿病を予防できる可能性がある。

 ウォーキングの歩数が多いと、65歳以上の女性の2型糖尿病を発症するリスクが減少するという研究が発表された。

 糖尿病リスクは、歩数が1日に1,000歩増えると6%減少し、2,000歩増えると12%減少するという。

 1日に8,000歩を歩いている人は、死亡リスクが51%減少することも、大規模な調査で示された。

ウォーキングなどの運動で糖尿病を予防

 ウォーキングの歩数をできるだけ増やし、また運動の強度を高めるほど、糖尿病を発症するリスクを減少できるという調査結果を、カリフォルニア大学が発表した。研究の詳細は、米国糖尿病学会(ADA)が刊行する医学誌「Diabetes Care」に発表された。

 「女性の健康イニシアチブ」は、閉経後の女性の健康問題を研究するために、米国立衛生研究所(NIH)によって1991年に開始されたコホート研究。研究グループは今回、この研究に参加した4,838人の女性のデータを解析した。

 参加者に、24時間の身体活動を記録できる活動量計を1週間装着してもらい、健康診断を定期的に受けてもらい、最大7年間追跡して調査した。

 その結果、8%の女性が糖尿病を発症したが、糖尿病リスクは、ウォーキングの歩数が1日に1,000歩増えると6%減少し、2,000歩増えると12%減少することが明らかになった。

 「65歳以上の人は身体活動が低下すると、2型糖尿病のリスクが高まります。効果的な対策しないでいると、70歳や80歳になったときに、多くの人が運動障害などを抱えて生活しなければならなくなります」と、同大学の公衆衛生・人間長寿科学部のジョン ベレッティエール氏は言う。

 米国糖尿病学会(ADA)によると、米国で毎年150万人が糖尿病と診断されており、うち3分の1は高齢者だと推定されている。「もしも高齢者の全員が1日あたりの歩数を2,000歩増やしたとしたら、毎年6万人が糖尿病の発症を防げると考えられます」と指摘している。

「ややきつい」と感じる活発な運動が効果的

 米国保健福祉省(HHS)は、糖尿病を含む多くの慢性疾患のリスクを減らすために、週に150分以上の中程度から活発な身体活動を行うことを推奨している。

 「年配の成人が運動をするときには、無理に"きつい"と感じるような強い運動をする必要はありません。自分が"ややきつい"と感じる強さで運動することをお勧めします。これは、いつも歩いているよりは速く、ちょっと息は切れるが、多少の会話ができるくらいの強度です」と、ベレッティエール氏は説明する。

 「70~80歳の平均的な高齢者にとっては、街を1ブロック歩くだけで、中程度から活発な活動になります」としている。

 運動療法として行うウォーキングだけでなく、職場への通勤や移動、屋外での散歩、食料品店などへの移動など、日常でのあらゆるステップが重要だという。

 「もしも活動量計を持ち歩く余裕があるのなら、1日の歩数をカウントすることをお勧めします。スマートホンの歩数計でも、十分に役に立ちます。思っていたよりも歩数が多いと、嬉しい気持ちになります。そして、1日の歩数を500歩、1,000歩と少しずつ増やしていくことをルーチンにします」。

 1日に何歩を歩くと最大の効果を得られるかを知るためには、追加のランダム化比較試験が必要となるが、将来的には臨床医は、個々の患者の病状、遺伝的リスクや糖尿病の家族歴などから、運動療法を個別化できるようになる可能性がある。

毎日の歩数が多いほど死亡リスクは低下

 毎日の歩数が多いほど、死亡リスクが低下することは、4,800人を対象とした別の大規模調査でも示されている。1日に4,000歩しかない人に比べ、8,000歩の人は、全原因による死亡のリスクが51%減少するという。

 1日の歩数を1,000歩増やすごとに、全死亡や心血管疾患の発症および死亡のリスクが低下することも分かった。

 この研究は、米国立衛生研究所(NIH)、米国立がん研究所(NCI)、米国立老化研究所(NIA)、米疾病予防管理センター(CDC)の研究者によるもの。研究成果は、米国医師会が刊行している「Journal of the American Medical Association」に発表された。

 研究グループは、約4,800人の参加者に2003~2006年に活動量計を最大7日間着用してもらい、2015年まで健康状態を追跡して調査した。

 その結果、1日の歩数が多いほど、男女とも死亡率が低くなり、心血管疾患やがんによる死亡率が低くなることが分かった。

 1日に4,000歩の人に比べ、8,000歩の人は、全原因による死亡のリスクが51%減少した。さらに1日に1万2,000歩を歩くと、死亡リスクは65%減少した。

1日1,000歩増やすだけでも効果がある

 「1日を通して座ったまま過ごす時間をなるべく減らし、体をより多く動かすことで、健康増進の効果を得られます。運動をすることで、肥満、心臓病、2型糖尿病、一部のがんなどのリスクを低減できます」と、CDCの栄養・身体活動・肥満部門のジャネット フルトン氏は言う。

 「さらに、運動はストレス解消にもつながります。毎日を気持ち良く過ごせるようになり、睡眠を改善するのにも役立ちます」としている。

 糖尿病の人では、運動が勧められるのは、血糖コントロールが良好で、進行性の重篤な合併症のない2型糖尿病の人だが、注意して行えばほとんどの人は安全に運動ができるという。

 運動を始める前に、医師によるメディカルチェックを受け、糖尿病合併症や、膝や足の関節などの障害がないかなどをみてもらうと安心できる。

Step Up: Walking May Reduce Type 2 Diabetes Risk for Adults 65 and Older (カリフォルニア大学サンディエゴ校 2022年1月20日)
Associations of Daily Steps and Step Intensity With Incident Diabetes in a Prospective Cohort Study of Older Women: The OPACH Study (Diabetes Care 2022年1月17日)
Higher daily step count linked with lower all-cause mortality (米国立がん研究所 2020年3月24日)
Association of Daily Step Count and Step Intensity With Mortality Among US Adults (Journal of the American Medical Association 2020年3月24日)
[Terahata]
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