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厚労省が「腎臓病・糖尿病への対策」を中間とりまとめ 地域の保健師と連携し「発症予防」「医療機関との連携」を強化

 厚生労働省「腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会」は、「糖尿病対策に係る中間とりまとめ」を発表した。

 腎臓病・糖尿病を予防・改善し、人工透析が必要となる患者を減らすために、 地域の保健師・管理栄養士などと連携し、「腎臓病や糖尿病の発症予防の取組み」を強化し、「健診後の受診勧奨」や「健診後の医療機関受診をフォローアップ」する取組みを進めるとしている。

 地域の保健師などと連携した腎臓病・糖尿病の予防の取組み 医療機関とも連携

 糖尿病腎症が原因で透析治療を受ける患者が増えている。人工透析が必要となる患者の原因となる疾患は、この20年間、糖尿病性腎症がトップになっている。

 人工透析は患者本人と家族の苦痛が大きく、QOL(生活の質)を大きく損なう。それだけでなく、人工透析の医療費は高額なので、医療経済への影響も大きい。人工透析の1人当たり医療費は月額30~50万円程度で、年間総額は1.6兆円と推計されている。

 検査で腎臓病や糖尿病が発見されても、自覚症状がないために、適切な治療を受けず、生活習慣も改善しないでいると、10~20年間かけて徐々に悪化して、最後は人工透析が必要になる。

 糖尿病腎症が重症化するのを防ぐために、糖尿病腎症のリスクの高い人を見つけ出し、保健指導により生活習慣の改善を働きかけ予防を推進し、すでに進展してしまっている人には、医療機関の受診を勧奨することが、地域や自治体にとって重要なテーマになっている。

 そこで厚生労働省「腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会」は、「糖尿病対策に係る中間とりまとめ」を発表した。

 とくに重視されている検討事項は以下の通り――。

  •  国民健康づくり運動プラン(健康日本21)や医療費適正化計画の見直し。
  •  健診後の受診勧奨や、健診後の医療機関受診をフォローアップする取組み。
  •  地域の保健師・管理栄養士などと連携した糖尿病の発症予防の取組みや医療機関との連携、健診後の受診勧奨・医療機関受診状況などに係るフォローアップなど、予防と医療の連携。
  •  「糖尿病診療ガイドライン」などに記載された内容や、調査・研究の結果などをふまえて、治療などの記載を更新する。
  •  高齢者糖尿病でのコントロール目標、低血糖予防、フレイル対策、併存症としての心不全などについての実態把握、在宅医療・在宅訪問看護、介護・地域包括ケアとの連携。
  •  外来療養指導や外来栄養食事指導の強化、運動指導の重要性。
  •  かかりつけ医から糖尿病専門医への紹介基準、その他の専門領域への紹介基準などの、医療機関間の連携を含む取組み。
  •  糖尿病対策推進会議や糖尿病性腎症重症化予防プログラムなど、保険者と医療機関などが連携した取組み。
  •  厚生労働省の「事業場での治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」にもとづく、治療と仕事の両立支援。産業医などとも連携した職域での糖尿病対策。
  •  周術期や感染症入院中の血糖コントロールなど、糖尿病を併存している他疾患で治療中の患者の血糖管理体制の強化。
  •  患者とその家族などに対する教育や、国民に対する正しい知識の普及啓発。
  •  糖尿病の動向や治療の実態を把握するための取組み。

新型コロナなどの感染症に備えた診療体制の整備も必要

 検討会では「新型コロナウイルス感染症拡大時の経験もふまえ、地域の実情に応じて、多施設・多職種による重症化予防を含む予防的介入や、治療中断対策などを含む、より継続的な疾病管理に向けた診療提供体制の整備も必要」と指摘している。

 具体的には、「感染症流行下などの非常時でも、糖尿病患者が切れ目なく適切な医療を受けられるような体制整備を進める必要がある」とし、「ICTの活用やPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)の利活用、在宅医療との連携を含めた継続的・効果的な疾病管理に係る検討を進める」としている。

 「オンライン診療による対応が可能な糖尿病患者の病態像についても整理を進める必要がある」としている。

高齢者の糖尿病の実態把握や、ICTなどを活用した糖尿病対策のあり方も検討

 糖尿病対策に係る指標の見しについては、「第8次医療計画での糖尿病対策に係る指標については、厚生労働科学研究において提案された指標案などをふまえ見直す」としている。

 具体的には、▼糖尿病の予防、▼糖尿病の治療・重症化予防、▼糖尿病合併症の発症予防・治療・重症化予防、の3項目を軸として整理する。

 なお、「専門家数」あいるは「専門医療機関数」のいずれも用いうる指標については、医療提供体制の整備という観点から、「専門医療機関数」を採用する。

 また、「1型糖尿病に対する専門的治療を行う医療機関数」「妊娠糖尿病・糖尿病合併妊娠に対する専門的な治療を行う医療機関数」などは、「人口10万人当たり」を母数とすることが必ずしも適当でなく、かつ、適切な母数(母集団)の設定が難しい指標については、「実数」を用いる。

 さらに、「HbA1cもしくはGA検査の実施」や「重傷低血糖の発生率」など、糖尿病患者を対象とした検査の実施および糖尿病患者での合併症の発生については、母数として「糖尿病患者数」を用いるとしている。

 今後検討が必要な事項については、以下の2点を挙げている。

  •  高齢者の糖尿病の実態把握や、ICTなどを活用した糖尿病対策のあり方について引き続き検討する。
  •  糖尿病対策の取組みの評価に係る適切な指標について、引き続き検討する。

 同検討会には、植木浩二郎・国立国際医療研究センター糖尿病研究センターセンター長や、黒瀨巌・日本医師会常任理事、津下一代・女子栄養大学特任教授などが名を連ねた。

腎疾患対策及び糖尿病対策の推進に関する検討会 (厚生労働省)

糖尿病性腎症重症化予防の推進に向けた広報事業 (厚生労働省)
糖尿病性腎症重症化予防に関する事業実施の手引き
[Terahata]
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