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お母さんのやせは次世代の生活習慣病のリスクを高めます
~公益財団法人骨粗鬆症財団オンライン公開講座が YouTubeで公開中!~

 公益財団法人骨粗鬆症財団は、3月8日の「国際女性デー」および3月1日~8日の「女性の健康週間」にあわせたオンライン公開講座を開催しました。テーマは「お母さんのやせは次世代の生活習慣病のリスクを高めます」。
 歳とともに発症しやすい、かつて「成人病」と呼ばれていた疾患群が、年齢だけでなく生活習慣の影響も強いことを強調するために「生活習慣病」と呼ばれるようになったのは1996年のことでした。しかしそれよりも早く1993年に、生まれた時の体重が低いほど成人後の心血管死による死亡率が高いというデータが報告されていました。
 生活習慣病とされる疾患の一部は、胎児期からそのリスクが上昇し始めている可能性があるということです。この報告以来、この考え方は「ドーハッド(Developmental Origins of Health and Disease;DOhaD)説」と呼ばれ、多くの研究が重ねられてきています。

 本講演では、福島県立医科大学特任教授で一般社団法人DOHaD学会 前理事長の福岡秀興先生が、DOhaD説のエビデンスの紹介と、次世代に生活習慣病リスクを持ち越さないための対策を解説しました。
 本講演は「骨粗鬆症財団 YouTube チャンネル」で公開されているので、ぜひ視聴してみてはいかがでしょうか。

講演要旨

今の日本の赤ちゃんは、終戦後の赤ちゃんより小さい

 講演ではまずDOhaD説の確かさを裏打ちする多くの疫学データが紹介されました。例えば、出生体重(生まれた時の体重)が低いことと、将来の2型糖尿病、高血圧、心血管疾患のリスクの高さが有意な関連があるといったデータです。

 そして、危惧すべきことに、日本の低出生体重児(2,500g未満)の割合は、終戦後の1951年が7%強であるのに対して、現在は10%弱に達し、31%増加しているとのことです。さらに、低出生体重児の割合が最も低かった1970年代との比較では、実に87%増、ほぼ倍増と言うべきほどに増加しているということです。

小さく生まれた女児は妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群のリスクが高い

 出生体重が低いと、その赤ちゃんが成長後の生活習慣病のリスクが高いだけでなく、その女性が妊娠した場合にトラブルが起きやすいことも示されています。実際、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群などを発症しやすく、かつ、重要なこととして、妊娠糖尿病を発症した女性から生まれた赤ちゃんもまた、成人後の糖尿病リスクが高いことが示されています。

 そのほかにも、出生体重の低さが、腎機能の低下や学童期の認知機能の低さと関連のあることも示唆されているとのことです。

受精時と妊娠中の低栄養が主要な原因

 では、1970年代は少なかった日本の低出生体重児が、なぜ今では2倍近くに増えてしまっているのでしょうか? 

 その原因を福岡先生は、若年女性の過剰なダイエット思考による受精時と妊娠時の低栄養にあるやせ願望にあると説明します。実際に若年日本人女性の摂取エネルギー量は1,600kcalを切っていて、妊娠中でさえ必要量を大きく下回っているとのことです。

 最近になり、この問題の重要性がようやく注目されるようになり、各地で公衆衛生対策がスタートしています。「母子手帳」などに出生体重が低いことのリスクを記したり、自治体をあげて低出生体重児出産の減少に取り組んでいる事例などが、講演で紹介されました。

小さく生まれた子どもを社会でサポート!

 このような多くの知見を基に福岡先生は、「小さく生まれて大きく育てる」は正しくないと語ります。しかし、小さく生まれたお子さんでも、成長後に生活習慣に気を付けることでリスクを下げられること、そのために「行政と医療と家庭が一丸となって対策にあたることが重要だ」と述べています。

一般社団法人 日本生活習慣病予防協会」ニュースより

[保健指導リソースガイド編集部]
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