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睡眠を改善すれば認知症を予防できる可能性 睡眠不足は若い人にとっても深刻 肥満やメタボが増加

 睡眠を改善すれば、認知症を予防できる可能性があることが、研究で明らかになった。

 60歳以上の高齢者では、深い睡眠を失うことが、認知症のリスクを高めている可能性が示された。

 睡眠不足は、高齢者だけでなく、10代の若者にとっても深刻な影響をもたらしていることも分かった。

 若者の睡眠不足の習慣は、将来に肥満やメタボなどの健康障害をもたらす可能性がある。「学校の保健教育などで、良い睡眠習慣が重要であることを教えるべきです」としている。

深い睡眠を改善すれば認知症を予防できる可能性

 睡眠を改善すれば、認知症を予防できる可能性があることが、オーストラリアのモナシュ大学の研究で明らかになった。

 60歳以上の高齢者では、徐波睡眠として知られる深い睡眠が、年間にわずか1%でも減少すると、認知症のリスクが27%上昇するという。

 「深い睡眠は、脳の老化をさまざまな面でサポートしており、アルツハイマー病の原因となるタンパク質の凝集体を除去したり、脳の代謝老廃物を除去するのに役立っていると考えられます」と、同大学心理科学部脳・メンタルヘルス研究所のマシュー ペイスは言う。

 「今回の研究で、この深い睡眠を失うことが、認知症のリスクを高めている可能性が示唆されました。睡眠を改善することが、認知症の予防につながる可能性があります」としている。

深い睡眠が毎年減少している高齢者ほど認知症リスクは上昇

 「フラミンガム心臓研究」は、心筋梗塞や脳卒中などの効果的な予防策を解明するために、米国で1940年代から行われている大規模研究。研究グループは、研究に参加した60歳以上の346人を対象に、睡眠と認知症の発症の関連について調査した。

 参加者の二晩の睡眠を、夜間睡眠ポリグラフ(PSG)により、1995年~1998年と2001年~2003年の期間に調べた。さらに参加者を17年間追跡して、認知症の発症との関連を調べた。

 その結果、深い睡眠が毎年減少している高齢者ほど、認知症のリスクが上昇することが分かった。徐波睡眠として知られる深い睡眠が、年間にわずか1%でも減少すると、認知症のリスクは27%上昇することが示された。

睡眠不足は若者の過体重や肥満にも影響

 睡眠不足は、高齢者だけでなく、10代の若者にとっても深刻な影響をもたらしていることが、欧州心臓病学会(ESC)が発表した別の研究で示されている。

 ひと晩の睡眠時間が8時間未満の若者は、十分な睡眠をとっている若者と比べて、過体重や肥満になりやすく、脂肪の過剰な蓄積、血圧の上昇、血中脂質と血糖値の異常など、多くの不健康な特徴をあわせもつ可能性が高いことが示された。

 「今回の調査で、十分な睡眠をとれていない10代の若者は多いことが分かりました。そうした若者が年齢を重ねると、肥満やメタボリックシンドローム、さらには関連する健康障害が引き起こされる可能性があります」と、スペイン国立心臓血管研究センター(CNIC)のヘスス マルティネス ゴメス氏は言う。

14歳時に睡眠時間が短いと過体重や肥満のリスクが72%上昇

 研究グループは、スペインで義務教育を受けている平均年齢12歳の若者1,229人を対象に、14歳時、16歳時まで追跡して調査した。

 その結果、ひと晩に8時間以上の十分な睡眠をとっていた割合は、12歳の時点で34%のみで、14歳時には23%、16歳時には19%と、年齢が進むにつれ減少した。

 さらに、睡眠時間がもっとも短い若者は、十分な睡眠をとっている若者に比べ、過体重や肥満と判定された割合が、12歳時には21%、14歳時には72%高くなった。

 睡眠時間が少し減っただけでも、過体重や肥満の割合は、12歳時には19%、14歳時には29%高くなった。睡眠時間の短い若者は、メタボリックシンドロームのスコアも高かった。

子供や若者の睡眠を改善して将来の過体重やメタボを予防

 米国睡眠医学会(AASM)は、子供や若者に推奨されるひと晩の睡眠時間について、6~12歳は9~12時間、13~18歳は8~10時間としている。

 子供や若者の肥満が増えている背景として、スマホやパソコン、ゲームなどを操作しているスクリーンタイムが増えたことや、座位時間が長くなった結果、運動不足になっている可能性を指摘している。

 そうしたことは、高カロリーの清涼飲料やジャンクフードの利用にも影響する。研究グループは現在、子供や若者の肥満が増えている原因についても調査中としている。

 「睡眠自体が重要であり、エネルギー摂取量や身体活動レベルとは別に、睡眠不足は健康に障害をもたらすと考えられます」と、マルティネス ゴメス氏は指摘している。

 「若いときの睡眠不足の習慣は、年齢を重ねてから肥満やメタボリックシンドロームのリスクを高め、さらには心血管疾患などの深刻な疾患のリスクを高めます。学校の保健教育などで、良い睡眠習慣が重要であることを教えるべきです」としている。

Improving deep sleep may prevent dementia, study finds (モナシュ大学 2023年10月31日)
Association Between Slow-Wave Sleep Loss and Incident Dementia (JAMA Neurology 2023年10月30日)
Insufficient sleep in teenagers is associated with overweight and obesity (欧州心臓病学会 2022年8月24日)
Sleep duration and its association with adiposity markers in adolescence: a cross-sectional and longitudinal study (European Journal of Preventive Cardiology 2023年5月4日)
[Terahata]
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