オピニオン/保健指導あれこれ
「働く母1000人実態調査~健康×子育て×働き方」を実施して ~働きながら、安心して妊娠・出産・子育てができるために~

No.4 働く母のマイナス感情「罪悪感・劣等感・不安感・つらさ」

(株)ウェルネスライフサポート研究所 代表取締役、保健師
加倉井 さおり

「罪悪感」「不安感」を抱えながら働く母は6割以上、「劣等感」を感じる割合は4割、仕事をしながら子育てをする現状に「つらさ」を感じる母は7割以上

 働く母1030人にアンケートを行ったところ、仕事と育児を両立していく中で職場や家族に対して何らかの「罪悪感」を抱えている割合は63.4%、何らかの「劣等感」を感じる割合は40.2%、何らかの「不安」を感じている割合は65.7%、さらに現状を「つらい」と感じている割合は73.1%と、多くの働く母が、マイナス感情を抱えている状況にあることが確認できました。

①罪悪感
 罪悪感を抱いている内容は、「【職場に対して】急に休んだり早退したりせざるを得ないことへの罪悪感」(77.8%)が最も多く、「【子どもに対して】育児に十分な時間がとれないことに対する罪悪感」(75.5%)が次いで多いという状況でした。

 この他にも「【職場に対して】早く帰宅しなければならないことへの罪悪感」(51.1%)や、「【子どもに対して】小さなうちから保育園に預けることへの罪悪感」(46.1%)も半数近くの人が感じていることが分かり、いわゆる「3歳児神話」に苦しめられている母が多い実情があるのではないかと考えられます。

②劣等感
 「育児と仕事を両立していく中で、職場や家族に対して何らかの「劣等感」を感じることありますか?」という質問に、「よく感じる」は12.2%、「たまに感じる」は28%であり、4割を超える人が劣等感を感じていた結果でした。

 その内容は、「【職場に対して】子どもが居ない人やパートナーが専業主夫(主婦)の人と、自分が同じ評価基準で評価されることに対する劣等感」(53.1%)が一番多く、次いで「【夫またはパートナーに対して)自分の方が夫またはパートナーよりも家事の比率が大きいことに対する劣等感】(47.3%)、「【子どもに対して】主婦・主夫の家庭と同じ期待値(手作りの育児グッズ・PTAへの参加など)を求められることへの劣等感」(36.5%)という結果でした。

 女性の社会進出が進みつつも、フルタイム勤務の女性がまだまだマイノリティの現在、主婦の家庭と比較し、劣等感を抱いてしまう母は少なくないことがうかがえます。

③不安感
 不安の内容は「このままの子どもとのかかわり方でいいのか」が71.6%と最も多く、次に「このままの働き方でいいのか」は64.9%という結果でした。「子育て」と「働き方」に不安を抱えている働く母が多いことが分かります。

 また「このままの生活を続けたら、自分の心に支障が出るのではないか」(33.4%)、「このままの生活を続けたら、自分の身体に支障が出るのではないか」(32.9%)と自分の健康状態に不安を感じている状況もわかりました。「このままの配偶者との関係でいいのか」(25%)とパートナーとの関係性にも不安を抱えているのが実態です。た。

④つらさ
 仕事をしながら子育てをする現状につらさを感じている人は、「いつも感じる」(21.5%)、「たまに感じる」(51.6%)と7割を超えている結果でした。

 特につらいと感じることについては、「日々の時間のなさ」(84.2%)が一番多く、2位以下も「予想不能なことの多さ(子どもの急な発熱など)」(49.1%)、「仕事も育児も中途半端に感じ、自分を責めてしまうこと」(47.1%)、「自分自身が心身に不調を感じても休めないこと」(46.5%)といずれも半数に近い回答がありました。

「仕事を辞めたい、または働き方を変えたい」と思ったことがある母は7割以上

 出産後に仕事をやめたい、または働き方を変えたいと思ったことがある働く母は70.4%と、仕事の継続が難しいと思う働く母が多いことが確認できました。

出産後、働き方を変えたいと思ったことがある、現状思っていると答えた374名にどのように働き方を変えたいかを尋ねた結果は以下の通りでした。

 「働く時間を自由にしたい」(49.2%)が最も多く、「働く場所を自由にしたい」(33.2%)、「育児と仕事を両立するための制度が整っている職場に変えたい」(30.7%)、「業務量を変えたい」(27.8%)、「正当に評価される職場に移りたい」(22.7%)、「育児と仕事を両立することに理解のある職場に移りたい」(21.9%)という結果でした。

 また、「その他」の自由記述には、働く時間を少なくしたいという人だけではなく「もっと働きたい」という意見もあり、「働く母」といっても多様な考え方があることが分かり、個別性に対応した働き方へのマネジメントやキャリア支援も重要であると考えます。

パートナーの働き方への満足度が低いほど、働く母は「罪悪感」や「劣等感」を感じる割合が高い

 今回、夫またはパートナーの働き方への満足度と働く母の心の状態(罪悪感、劣等感・不安感・つらさ)との関連性も分析しました。

 共働きをするにあたり、夫またはパートナーの職場環境や勤務体制に満足しているかどうかについては「非常に満足」(9.3%)、「まぁまぁ満足」(36.8%)であり、満足している人の割合は 46.1%。また、「どちらともいえない」(22.2%)、「やや不満」(18.7%)、「非常に不満」(13%)でした。

 今回の調査では、夫またはパートナーの職場環境・勤務形態に不満がある人ほど、罪悪感、劣等感、不安、つらさを感じる割合が高いということが分かりました。

 つまり、働く母は自分自身の勤務先に対して満足していても、夫またはパートナーの勤務先に不満を抱えていると「罪悪感」「劣等感」「不安感」「つらさ」などのネガティブな感情を抱きやすいということが言えると思います。

企業側は男性社員に対しても共働きしやすい環境や風土を整えることが必要

 女性活躍推進という時代の中でも、まだまだ子どもを産み育てながら働く上で、罪悪感やつらさなどのマイナス感情を抱える働く女性が多い現状が浮き彫りになった調査結果でした。

 またパートナーである男性の職場環境や勤務形態への満足度も、働く母のマイナス感情に影響していると考えられることからも、企業側は女性社員だけでなく、男性社員に対しても共働きしやすい環境や風土を整えることが必要であると言えるでしょう。

 子どもを産み育てながら、仕事を通じて社会貢献している働く女性たちが、罪悪感やつらさなどマイナス感情を抱かずに働ける社会にしていかなければいけません。子育ても仕事も頑張っている自分を誇りに想って欲しいと思うのです。そのためにどうしたらいいかを次の連載からは提言していきたいと思います。

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