オピニオン/保健指導あれこれ
住み慣れた地域で最期まで暮らすことを目指した「暮らしの保健室」~医療・看護・介護を通じた住みよいまちづくりの試み~

No.4 無料講座について

看護師、社会福祉士、介護支援専門員、MBA(経営学修士)
神山 欣子

 平成29年6月に開設したしょうとく*まちかどステーションでは、保健室を多くの方に知っていただこうと考え、誰でも気軽に参加できる無料講座を月5回実施しています。

無料講座のねらい

 しょうとく*まちかどステーションのある大阪府枚方市では、いろいろな講座が大学や病院などで実施されています。有料のものは著名な方が講師として登壇されていますが、もっと身近でためになる話を聞ける機会があれば、地域の方に喜んでいただけるのではないかと考えています。

 当保健室で行う講座は、すべて無料としています。予約なしで気軽に空いた時間で参加していただくことで、何度も保健室に足を運び、何かあったら相談ができる関係づくりにつながることを目的の一つとし、健康意識の向上や介護予防を兼ねたリハビリテーション、健康の維持向上を目指しています。

 会場は一般の研修会のように前向きに座るのではなく、参加者同士の顔が見え、お互いに会話がはずむような配置を考えています。

 良いお話を聞くだけでなく、「私はこんな風に気を付けていてうまく行っているわ」「明日から実践してみたいけど家ではどんな風にしたらいいの?」など参加者同士が教え合う場となるようにし、生活の中で活かせる講座になるよう心がけています。

講師及び参加者について

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 講師は、専門職として現役で活動されている方から、現役を退かれた後にボランティアとして活動されている方まで幅広くご依頼しています。

 一般の市民が対象の講座のため、講師を務める専門職は、専門用語をわかりやすい言葉で伝えたり、目で見てわかるような図や写真・動画を使用することで理解を深めたりと努力します。そのことがまた、専門職の成長にもつながっていると実感しています。

 その他の講師は、保険会社のファイナンシャルプランナーやお墓の石材店、その他株式会社など多種多様です。

 おおむね終活に関連した内容であり、住民の関心は高く、その後、講師への個別相談につながる場合もあります。しかし、講座の目的はあくまでも情報提供と情報の正しい活用を見守ることです。

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近隣で開業している松木歯科医から
「加齢に伴う口腔機能の低下と予防」についての講義

 筆者は2か月に1度の頻度で、「もしもの時の『人生会議』」と題してエンディングノートを配布しながら最終段階の医療や介護について考える機会を提供しています。

 参加者は70~80代の女性が多いのですが、テーマによっては若い方や子育て中のママまで様々です。少人数で顔見知りが多いため質問もしやすく、「色々教えていただけるのでありがたい」などのご意見もあり、口コミで広がっていることを実感します。

 最近はご夫婦での参加や男性の参加者も多く、医療や健康に対する関心の高さが伺えます。

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効果と課題

 無料講座が、参加者同士の情報交換が積極的になることや一人暮らしの方同士のつながりの場となり、保健室の利用につながっていることは大きな成果ととらえています。

 単なる講座として教えることではなく、学び場のとしてお互いに学び合うことを目指しており、講師の話だけでなく参加者の困りごとを解決できる力を育むことが大切だと考えています。

 筆者が担当するエンディングに関する講座ではできるだけ参加者の思いを引き出すように努めていますが、もしもの時のことを考えている人はまだまだ少なく、家族とも話し合えていないのが現状です。

 保健室が担う講座としては、自分の将来に必ず訪れるであろう死について考え、終末期に対する希望や意向を形に残すところまで長期的に関わりたいと願っています。

 次回はエンディングノートの活用や意思決定に関する取り組みについて紹介します。 

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