No.2 スマートダイエット教室
スマートダイエット教室の1回あたりの受け入れ人数は8~30人で、5回コース、8回コース、12回コースともに脱落率が0~12%(平均5%)です。
指導者は行政栄養士、行政保健師、大学教員、大学院生、健康運動指導士、食生活改善推進員、住民リーダーなど多岐にわたりますが、栄養バランスのとれた食教育とダイアリー(食事日誌)の記載がしっかりなされれば、減量効果にさほど違いは出ません。
スマートダイエットのプログラム
スマートダイエット教室のプログラムは、個人またはグループ向け、自治体・企業・健康保険組合向け、シニア向けに開発されました。
- 個人またはグループ向け
個人や小人数のグループのニーズ合わせたオーダーメイドのプログラム - 自治体・企業・健康保険組合向け
住民や社員の健康づくりを目的(生活習慣病予防・肥満改善・低栄養予防等)に合わせたプログラム。特定保健指導としても、活用可能です。 - シニア向け
加齢に伴い栄養吸収率が低下しますし、たとえエネルギー摂取量が足りていても、栄養素が不足していれば低栄養につながります。また、肥満になれば、関節にかかる負担が増し、痛みによって日常生活動作に不自由が生じます。
シニア向けのスマートダイエットは、「さまざまな栄養素をバランスよく、多様な食品から、適量を摂る」ことへ導くプログラムです。
減量効果を左右する要因
参加者の減量に対する行動変容を導くために、教室では以下の4つの点に気を配っています。指導スタッフの熱心さだけでも、5~7kg、減量成功者のメッセージや数値目標のフィードバックが加わることで、8~13kgの減量が達成できます。
1. 指導スタッフの熱心な導き
指導スタッフによる熱心な導きに心を打たれ、本気モード(スイッチON)になる人が少なくありません。優しい導きが有効なケースと厳しい口調でのアドバイスが奏功するケースがあり、対象者によって使い分けることが重要です。資格の種類、指導歴はさほど影響しません。
2. 減量体験者による熱い(そして優しい)激励メッセージ
減量体験者の生の声は動機づけに有効で、5分間の短いメッセージであっても、自身の体重や体型の変化とともに、自信の回復や仕事・家事への意欲高揚などを語ってもらうことで、本気モード(スイッチON)が維持されます。
3.科学的情報の提供(内臓脂肪画像、活力年齢、体力年齢、血管年齢、血液検査値などのフィードバック)
活力年齢や体力年齢は、暦年齢よりも5~10歳ほど高くなって(老いて)おり、一念発起する動機づけになることもあります。悪い結果を見せられて落胆してしまうケースもありますが、3か月後には平均7~8歳ほど若返ることを説明し、行動意欲のスイッチONへと導きます。
さらに、検査値変化(実績)を伝えることも意欲喚起につながります。また、体重減少1 kgは腹囲減少1 cm前後に相当することを確認しており、腹囲の目標値を予め設定することも動機づけになります。
◆ 検査値の変化フィードバック例(男女1,014名)
- 体重:ダイエット単独で7.2 kg、運動併用で9.3 kg下がりました。
運動単独で2.5 kgの減少でした。 - 血圧:ダイエット単独で10.4 mmHg、運動併用で12.3 mmHg下がりました。
- 中性脂肪:ダイエット単独で37.4 mg/dL、運動併用で53.3 mg/dL下がりました。
- LDL-C:ダイエット単独で10.4 mg/dL、運動併用で15.2 mg/dL下がりました。
- HDL-C:ダイエット単独で0.9 mg/dL、運動併用で2.2 mg/dL上昇しました。
運動群では2.6 mg/dLの上昇がみられました。 - 血糖値:ダイエット単独で6.0 mg/dL、運動併用で9.3 mg/dL下がりました。
◆ 体重減少1㎏あたり腹囲減少は約1 cm
- 体重の減少量×1.08=腹囲の減少量(大阪市立大学減量データ、女性53名)
- 体重の減少量×1.11=腹囲の減少量(某企業減量データ、男女345名)
- 体重の減少量×0.94=腹囲の減少量(筑波大学減量データ、女性633名)図2
- 体重の減少量×0.86=腹囲の減少量(筑波大学減量データ、男女1,177名)図2
- 体重の減少量×0.97=腹囲の減少量(THF減量データ、男女534名)1期
- 体重の減少量×1.10=腹囲の減少量(THF減量データ、男性 44名)2期
- 体重の減少量×1.25=腹囲の減少量(THF減量データ、女性444名)2期
図2. 体重減少と腹囲減少の関係(男性544人、女性633人、計1,177人)
4. 特別ミニ講義の提供
乳酸が蓄積しない運動ばかりだと心臓、肺、筋肉の老化が進むこと、体脂肪は空腹時に最も燃焼効率が高まるものの総燃焼量は少ないため運動が有効なこと、有酸素運動中に4~5%の酸素を体内に運んでいるが、無酸素運動中でも3~3.5%の酸素を利用していることなどの教科書に記載されていない科学的な解説を行います。
- 乳酸の蓄積は糖を分解した証で、疲労物質との認識は正しくない。
- 体脂肪の燃焼効率は空腹時に最高だが、脂肪を最も減少させるには40~60分の運動を!
- 正しい体脂肪の測定方法:季節変動、日内変動など。
- 身体が無酸素状態になることは皆無:無酸素運動中も体内で酸素が利用されている。
- 血糖値を下げるコツ:食べ物、飲み物、運動の強さと時間など。
スマートダイエットの目的は健康的な減量
スマートダイエットは女子栄養大学式(香川綾:医学博士、香川栄養学園の創始者)の4群点数食事法を参考にしており、栄養バランスを重視した摂取エネルギー制限(女性1,200 kcal、男性1,680 kcal)のダイエットです。減量幅が大きければ大きいほど良いわけではなく、健康的に減量することが目的です。
教室開催前には、「食事はバランスよく上手にいただいて、心身の体調を整えるとともに、減量が必要なら確実に体重を落とす」ことを参加者に確約していただきます。
極端な低カロリー食、脂質をほとんど摂らない脂質カット食、糖質をシャットアウトする糖質カット食とは異なり、スマートダイエットは、脂質と糖質の摂取を適度に抑え、摂取エネルギー(カロリー)を少量に保ちながら、栄養バランスをしっかり良好にする食事日誌(ダイアリー)チェック法を採用しています。
減量に成功した集団の食事記録からわかること
3ヵ月後に平均7~9 kg減量できた食事調査結果によると、女子栄養大学の4群点数法から見て、1群の牛乳・乳製品、卵などの摂取量の微増、2群の肉類・魚類・豆類などの微減、3群の野菜類、海藻類、キノコ類などの大幅な増加、そして4群の米穀類、油脂類、砂糖類などの大幅な減少により、確実に減量できることを国内外の多数の学会誌へ報告しています。
運動の効果は軽微であるが期待できるものであり、適切な食生活の徹底と運動実践の組合せが最適と言えます。なお、運動嫌いの人や3ヵ月間の減量教室だけでなく、その後においても週に3~7日も運動をやり続ける自信のない人は、運動を後回しにしても良いのです。これは重要なポイントで、熟考し決断し、決断したからには実行に移すよう心からのサポートを続けることで成功につながります。
スマートダイエットをより詳しく知っていただくには
詳細については、THF発行の『スマートダイエットテキスト』 2018 【1000円】、サンライフ企画発行の『健幸華齢のためのスマートライフ』 2019 【2800円】、(公財)健康体力づくり事業財団発行の『スマートダイエット』 2012 【1500円】などが参考になります。
「減量支援はお任せください!「スマートダイエット教室」」もくじ
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