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「フレイル」の前兆は40代の中年期にあらわれる 早期の生活改善で対策 食事ではタンパク質と糖質をバランス良く

 フレイル(虚弱)は、加齢にともない心身が衰えた状態で、要介護状態にいたる前段階として位置づけられている。

 フレイルの前兆は、40歳くらいの中年期にすでにみられ、このころから心身の健康を維持することを意識して対策することが必要という研究が発表された。

 フレイル予備群の人を早くから特定し、ライフスタイル介入を提供することで、筋力と歩行速度を高め、うつ症状を軽減し、認知機能を改善できることも示された。

 筋肉と骨の機能を維持するために、必要なタンパク質と糖質をとることが重要であることも、新しい研究で明らかになった。

フレイルの前兆は40代の中年期にすでにあらわれている

 フレイル(虚弱)は、加齢にともない心身が衰えた状態で、要介護状態にいたる前段階として位置づけられている。

 高齢者は、身体的な脆弱性だけでなく、精神・心理的な脆弱性や社会的な脆弱性など、多面的な問題を抱えやすく、健康障害をまねきやすいことが知られている。

 フレイルの前兆は、40歳くらいの中年期にすでにみられ、このころから心身の健康を維持することを意識して対策することが必要という研究を、オーストラリアのフリンダース大学が発表した。

 研究グループは、オーストラリア在住の平均年齢が59.9歳の参加者656人を対象に調査した。うち67%が女性だった。

 「40~49歳の人の45%に、フレイルや健康状態の悪化の前段階がみられることが分かりました」と、同大学高齢化回復ケア学部のスー ゴードン教授は言う。

 「40歳代で、体幹の動的安定性や下肢の筋力の低下、バランス感覚の低下、足の感覚の低下、低体重、骨盤底筋の低下、栄養不良などが該当する人は対策が必要です。これらは、早い時期からさまざまな改善をすることで、ご自分の力で対処することが可能です」としている。

フレイル対策は早期に開始すると効果が高い

 年齢を重ねてからフレイルになるのを防ぐために、早くから対策をはじめた方が良いことは、シンガポール国立大学(NUS)の研究でも示されている。

 「身体的なフレイルのある高齢者は、健康な高齢者に比べて、日常生活で機能障害を負ったり、入院したり、早期に死亡する可能性が2~10倍高いことが示されました」と、同大学医学部心理医学科のン ツェ ピン氏は言う。

 「さらに、身体的フレイルと認知障害が同時にある場合は、障害を負ったり、入院したり、早期に死亡する可能性は20倍以上高くなることも分かりました」としている。

 研究グループは、2010~2013年の4年間に、シンガポール地域で暮らす65歳以上のフレイルの兆候を示す高齢者250人を対象に試験を実施した。対象者を5つのグループにランダムに割り当てて、ライフスタイル介入を実施した。

 その結果、運動・身体トレーニング、食事指導、認知トレーニングの提供を受けた高齢者は6ヵ月後に、虚弱性と抑うつ症状が軽減され、認知機能も改善することを明らかにした。さらに、その効果は試験終了後も6ヵ月持続することも確かめた。

 「フレイル予備群の人を早くから特定し、ライフスタイル介入を提供することで、フレイルを回復し、筋力と歩行速度を高め、うつ症状を軽減し、認知機能を改善できると考えられます」と、ピン氏は言う。

 「高齢者の身体的フレイルを軽減したり、回復できるようになれば、高齢者の生活の質を大幅に向上することができます」としている。

食事はタンパク質と糖質のバランスが大切
筋肉と骨を維持するためにタンパク質と糖質が必要
 「栄養障害の二重負荷」とは、「低栄養」(やせ、栄養不足など)と「過栄養」(過体重、肥満、2型糖尿病などの食事との関連の深い疾患)が、個人や集団で同時にみられたり、同じ人でも生涯で過栄養と低栄養の時期がある状態のこと。

 壮年期や中年期に肥満症や糖尿病のリスクが高かった人も、老化とともに必要な栄養をとれなくなり、フレイルや低栄養のリスクが高くなる場合がある。バランスの良い食事を生涯続けることが重要とされている。

 日本では女性のやせも課題になっている。朝食を欠食していると、その影響で1日の摂取エネルギーと栄養素が足りなくなり、とくにタンパク質、鉄、カルシウム、亜鉛などが不足しやすくなるという調査結果がある。

 筋肉と骨の機能を維持するためには、必要なタンパク質と糖質をとることが重要であることが、藤田医科大学の新しい研究で示された。

 とくに体重減量のために食事のエネルギーを制限をしている人は、骨と筋肉の量を維持するために、[タンパク質:脂肪:炭水化物]の栄養バランスの良い食事をとることが勧められる。

 また、肥満や2型糖尿病のリスクのある人に効果があると人気の高い低炭水化物ダイエットは、食事療法にタンパク質の制限が加わると、体重が減少するだけでなく、筋力や骨密度の低下を引き起こすおそれががる。

 研究グループは、糖質や脂質の代謝を調節する転写因子の遺伝子をなくしたマウスに、低タンパク質の食餌を与え、インスリン作用やグルコース作用が、筋肉量と筋力、骨密度に与える影響を調べた。

 その結果、体重や脂肪の量が減り、エネルギー貯蔵がうまくできなくなり、筋肉の機能も低下した。筋肉と骨の量と機能を維持するためには、タンパク質や糖質などもバランス良く摂取することが重要であることが示された。

 研究は、藤田医科大学臨床栄養学講座の飯塚勝美教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」で発表された。

'Pre-frailty' from age 40 - what to look out for (フリンダース大学 2020年4月18日)
Pre-frailty factors in community-dwelling 40-75 year olds: opportunities for successful ageing (BMC Geriatrics 2020年3月6日)
Older adults' understandings and perspectives on frailty in community and residential aged care: an interpretive description (BMJ Open 2020年3月)
Feasibility and acceptability of commonly used screening instruments to identify frailty among community-dwelling older people: a mixed methods study (BMC Geriatrics 2020年4月22日)
Good nutrition, physical training and mental exercises can reverse physical frailty in the elderly: NUS study (シンガポール国立大学 2017年6月19日)
藤田医科大学医学部 臨床栄養学講座
筋肉および骨の維持には、糖質とタンパク質の適切な摂取が不可欠なことを明らかに (藤田医科大学 2025年2月3日)
Chrebp Deletion and Mild Protein Restriction Additively Decrease Muscle and Bone Mass and Function (Nutrients 2025年1月29日)

[Terahata]
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