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くるみで生活習慣病対策 高血圧や糖尿病、脂質異常症を改善

 くるみは、不飽和脂肪酸が豊富に含む健康的な自然食品。毎日食べると体に良い影響が出てくることが、さまざまな研究で確かめられている。

くるみに多く含まれる脂肪酸は"体内で合成できない必須脂肪酸"
 脂質は、体の細胞膜をつくる材料になり、エネルギー源にもなる大切な栄養素。しかし、生活習慣病を予防・改善するために、食事でとる脂肪は量だけでなく質にも注意することが大切だ。

 ひとくちに脂肪といっても、「飽和脂肪酸」「n-3系脂肪酸」「n-6系脂肪酸」「コレステロール」などさまざまな種類の脂肪がある。脂肪を構成している要素である脂肪酸は、分子の構造的な違いから飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられるが、そのうちくるみなどナッツ類や青魚に多く含まれるものを不飽和脂肪酸という。

 不飽和脂肪酸のうち、n-6系とn-3系の脂肪酸は体内で合成できず、不足すると皮膚炎などの不調の原因となる必須脂肪酸なので、食事で十分な量をとりたい。

 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」では、増やすべき栄養素として「食物繊維」「n-3系脂肪酸」「カルシウム」「カリウム」、減らすべき栄養素として「コレステロール」、「ナトリウム(食塩)」が挙げられている。

 くるみなどのナッツ類は、低飽和脂肪・低コレステロールであるだけでなく、n-3系(オメガ3)脂肪酸が豊富に含まれる代表的な食品だ。くるみには、良質な蛋白質、炭水化物、カルシウム、各種ビタミン、食物繊維などの栄養素もバランス良く含まれている。

 n-3系脂肪酸には、植物由来のα-リノレン酸、魚介類由来のDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)などがあり、体内へ入ったα-リノレン酸は一部EPAやDHAに変換され、動脈硬化や血栓を防ぎ、血圧を下げるほか、悪玉のLDLコレステロールを減らすなど、さまざまな健康増進に役立つ作用をもつことが知られる。

 カリフォルニアくるみは、ナッツ類の中でも特にn-3系(オメガ3)脂肪酸が多く含まれているので、健康的な自然食品として注目されている。くるみひとつかみで、1日の摂取量として十分なn-3系脂肪酸をとることができる。

くるみは高血圧、糖尿病、メタボの予防・改善にも有用
 米国やカナダの食事摂取基準では、多くの研究結果をもとに、脂質と炭水化物のエネルギー比率、コレステロールや中性脂肪のバランスなどを解析し、食事でとる脂肪のエネルギー比率は20%以上が良いとしている。米メリーランド大学医療センターは、n-3系脂肪酸は特に体にとって必要であると発表している。*1

【 n-3系脂肪酸を十分にとり生活習慣病を予防・改善 】

高血圧
 高血圧は脳卒中や心臓病のリスクを高めるが、n-3系脂肪酸をとっていると高血圧を改善できるという研究が報告されている。米メイヨークリニックによると、くるみなどに含まれるオレイン酸やDHAにより、血圧を下げる効果を期待できるという。n-3系脂肪酸には、善玉のHDLコレステロールを下げずに悪玉のLDLコレステロールを減らす働きもがある。*2

糖尿病
 糖尿病のある人では、高中性脂肪や低HDLコレステロールなどの脂質異常を伴っていることが多い。しかし、n-3系脂肪酸をよくとっている人では、中性脂肪値が低下し、善玉のHDLコレステロール値は上昇することが多い。n-3系脂肪酸の豊富なくるみは、糖尿病の人にも便益をもたらす可能性がある。

脂質異常を伴う過体重・肥満
 肥満と高コレステロールは、いずれも脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患や、メタボリックシンドロームの危険因子となる。これらの要因に糖尿病や高血圧症などの疾病が重なると危険性はより高まる。n-3系脂肪酸が悪玉のコレステロールを低下させるなど有用な働きをすることが、メイヨークリニックの研究でも確かめられている。

(以上、メリーランド大学医療センター、メイヨークリニックが公表している資料より)*1*2

地中海食 くるみを加えることで改善効果が高まる
 地中海式の食事スタイルは、新鮮な野菜や魚、全粒粉、くるみなどナッツ類、果物を多くとり、牛や豚などの赤肉を控え、不飽和脂肪酸であるオレイン酸を含むオリーブオイルとナッツをふんだんに使うのが特徴で、南イタリアやギリシア、スペインなど地中海地域で発達した伝統的な食事スタイル。

 地中海食が健康に良いことは世界的に知られており、人気が高い。くるみ主体のナッツ類を含む地中海食が、肥満やメタボへのリスク抑制につながるという研究も発表されている。

 スペイン保健省の支援を受け欧州で実施された多施設共同研究「PREDIMED」では、くるみを主体にナッツ類をよく摂取する地中海式食事により、メタボリックシンドロームを抑制することが示された。

 この研究は、55-80歳の心疾患のリスクの高い患者1224人を対象に、地中海食の影響を調べたもので、医学誌「Archives of Internal Medicine」2008年12月号に発表された。*3

 対象者を(1)オリーブオイルを含む地中海食をとるグループ、(2)くるみを主体とするナッツ類(1日30g)を含む地中海食をとるグループ、(3)低脂肪食のアドバイスのみを受けるグループに分け比較した。

 ベースライン時に対象者の61.4%がメタボリックシンドロームの基準を満たしていたが、1年後に(1)で6.7%、(2)で13.7%、(3)で2.0%、それぞれ抑制された。メタボを改善するためにもっとも効果的なのは、くるみを主体とするナッツ類を含む地中海式食事をとったグループであることがあきらかになった。

 研究者らは「伝統的な地中海食にくるみを加えた食事は、健康増進に有用であることが確かめられた」と指摘している。

 この調査については、別の研究報告が医学誌「Archives of Internal Medicine」2006年6月号に発表されている。くるみを加えた地中海食をとった人では、血糖値、血圧値、コレステロール値など多くの検査値が改善し、地中海食のみの場合に比べ、より効果的であることが分かった。*4

くるみは健康的な自然食品
 くるみは栄養的にとてもバランスのとれたヘルシーな自然食品であることが、世界中で行われたさまざまな研究で確かめられている。くるみの栄養素を摂取するためには、1日あたり約42-57g(2つ割りを8個)をとるのが効果的。毎日の食生活にくるみを取り入れ、くるみの健康効果を試してみてはいかがだろうか。

  • Omega-3 fatty acids(University of Maryland Medical Center)
  • Omega-3 fatty acids, fish oil, alpha-linolenic acid(Mayo Clinic)
  • Effect of a Mediterranean Diet Supplemented With Nuts on Metabolic Syndrome Status
    (Archives of Internal Medicine, Arch Intern Med. 2008;168(22):2449-2458)
  • Effects of a Mediterranean-Style Diet on Cardiovascular Risk Factors
    (Archives of Internal Medicine, July 4 2006, vol. 145 no. 1 1-11)
    [保健指導リソースガイド編集部]
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