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くるみは2型糖尿病患者の動脈硬化対策にも有用

 11月14日は「世界糖尿病デー」。くるみが動脈硬化や脂質異常の予防・改善に役立つという研究は多い。くるみが健康的な自然食品であることは世界的に知られているが、実は2型糖尿病患者にとっても有用な食品だ。

 くるみが注目されているのは、オメガ3脂肪酸を多く含んでいるから。オメガ3脂肪酸は青魚にも多く含まれるが、最近では日本人の魚離れが進んでいる。くるみは、魚以外でオメガ3脂肪酸をおいしく、手軽にとれる代表的な食品だ。

 くるみはスーパーなどで手軽に購入できるようになっており、栄養バランスも良好な優れた自然食品として人気が高まっている。

くるみの豊富な脂肪酸 ひとつかみで1日に必要なオメガ3脂肪酸をとれる
 くるみには飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸の両方が含まれるが、特に豊富に含まれるのは多価不飽和脂肪酸。多価不飽和脂肪酸には、n-6系と、n-3系がある。このうちn-3(オメガ3)系脂肪酸は、脂質異常症や血栓症などの予防や改善に有効であることが、さまざまな研究や調査で確かめられている。

 オメガ3系脂肪酸は体内でつくることができないので、食事でとる必要がある。「日本人の食事摂取基準」では、1日のエネルギー量の1%以上をオメガ3系脂肪酸でとることが勧められている。*1

 ナッツ類はオメガ3系脂肪酸が豊富に含まれる代表的な食品だが、なかでも、くるみには断然オメガ3脂肪酸が多く含まれる。くるみ1皿分(1オンス=28g)に含まれる脂肪酸約19gのうち、約14g以上がオメガ3系を含む多価不飽和脂肪酸(五訂日本食品標準成分表による)。くるみをひとつかみ食べるだけで、1日に必要な量のオメガ3脂肪酸をとることができる。

 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」では、「日本人でも、α-リノレン酸による冠動脈疾患の予防効果は期待できる。このため、18歳以上では、平成17年及び18年国民健康・栄養調査のデータ・ベースから計算されたα-リノレン酸摂取量の50パーセンタイル値以上の摂取が望まれる」とされている。*1

 くるみを毎日食べるだけで、十分な量のα-リノレン酸を補給でき、体に良い効果を期待できる。

糖尿病の人にもくるみは有用 毎日食べると動脈硬化が改善
 糖尿病の食事療法では、エネルギー摂取量と栄養バランスを適切に管理することが大切。毎日の食事に適切な量のくるみを加えると、2型糖尿病患者の血糖コントロールや動脈硬化予防でも、良い影響が出てくる。

 米国人を対象に行われた研究では、動脈硬化が抑えられ、心筋梗塞などの危険性が低下することが示された。この研究は、米国糖尿病学会(ADA)の医学誌「Diabetes Care」の2010年2月号に発表された。*3

 研究では、2型糖尿病の男女24人(中間年齢58歳、女性14人、男性10人)に参加してもらい、無作為に2グループに分け、1つめのグループには毎日、食事に1日56g(366kcal)のクルミを加えてもらった。もう1つのグループはくるみを食べなかった。

 8週間後に、心機能や動脈硬化の状態を検査し比較した。動脈硬化を調べるために、超音波エコーで動脈拡張をみて、FMD(血流依存性血管拡張反応)検査で血管の内皮機能を判定した。また、血中脂質、HbA1C、空腹時血糖値、空腹時の血中インスリン値と血糖値からインスリン抵抗性を調べるHOMA-R、コレステロール値で判定した。

 FMD検査結果は、くるみを食べたグループでは2.2±1.7(P=0.04)だったが、食べなかったグループでは1.2±1.6にとどまった(同)。くるみを食べたグループで、血管の内皮機能が改善したことが認められた。

 また、総コレステロール値やLDL(悪玉)コレステロール値も、くるみを食べたグループではベースライン時から改善していた。総コレステロール値は9.7±14.5 mg/dL(P<0.01)、LDLコレステロール値は7.7±10 mg/dL(同)、それぞれ低下した。

 研究者らは「2型糖尿病患者が適量のくるみを摂取すると、血管の拡張反応が改善し、動脈硬化が改善され、心疾患の危険性を低下する可能性がある」と結論付けている。

 なお、米国人の研究結果であり、日本人では、食事の平均的な摂取エネルギー量は異なる。食事内容や体質も違うので、ただちに比較はできないが、日本人にとっても参考になる研究結果といえる。

  • 日本人の食事取基準(2010年版)(厚生労働省)
  • 五訂増補日本食品標準成分表 脂肪酸成分表編(文部科学省)
  • Effects of Walnut Consumption on Endothelial Function in Type 2 Diabetic Subjects
    (Diabetes Care, February 2010 vol. 33 no. 2 227-232)
    [保健指導リソースガイド編集部]
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