ニュース

日本人は糖尿病を発症しやすい 少しの体重増で2型糖尿病を発症

 日本人を含む東アジア系民族は、インスリン感受性は良好だが、インスリン分泌能は低い傾向があるという研究が発表された。日本人は、標準体重をわずかに超過しただけで、インスリン感受性が低下し、2型糖尿病発症の危険性が上昇するという。

 糖尿病は、インスリン作用不足により慢性の高血糖状態が引き起こされる代謝症候群で、「インスリン分泌能の低下」と「インスリン抵抗性の増大」という2つの生理機能障害を主徴としている。

 これらのバランスの最適化は、民族や人種によって異なることが、米スタンフォード大学の児玉桂一氏(小児科学)とスウェーデンのルンド大学のデイモン トジャル氏、日本の北里大学の研究チームによって明らかになった。

 研究は、米国糖尿病学会(ADA)が発行する「Diabetes Care」に発表された。

アジア人はBMIが低いうちから2型糖尿病の発症が増える
 研究チームは180件の研究を系統的に検討し、74件のコホート研究(コーカソイド系31件、アフリカ系19件、東アジア系24件)から正常耐糖能(NGT)症例3,813件を対象に解析した。

 研究では、頻回測定静注ブドウ糖負荷試験を実施し、1分から5分毎に血糖を測定し、血糖消失曲線を描き、急性インスリン反応(AIR)およびインスリン感受性指数(Si)を算出。2つ機能が民族によって大きな違いがあり、正常な血糖値を維持する機構が民族によって異なることを発見した。

 その結果、コーカソイド系、アフリカ系、東アジア系の同齢集団では、インスリン感受性とインスリン反応の間に双曲線形相関があることが示された。

 アフリカ系はインスリン感受性が低い傾向があり、インスリン分泌の増加によりインスリン作用を補うことで正常な血糖を維持する。

 一方、東アジア系は、インスリン感受性は良好だが、インスリン分泌能は低い傾向があるという。コーカソイド系は、アフリカ系と東アジア系の中間の特性をもっている。

 耐糖能異常(IGT)があるか、耐糖能が低下し糖尿病と診断された人々でも、同じパターンが観察され、インスリン分泌とインスリン感受性の両方が関わっていることが示された。

 アジア人では白人と比べて、BMIが低いうちから2型糖尿病の発症が増え、腹囲周囲径が同程度でも内臓脂肪が多いという特徴がある。境界型糖尿病の多くで耐糖能異常(IGT)がみられ、特に日本人では食後のインスリンの追加分泌が低下する場合が多い。

 日本人を含む東アジア人は肥満が少ないにもかかわらず、コーカソイド系人種より2型糖尿病を発症しやすいことは、従来の研究でも指摘されている。

 2型糖尿病では、肥満などによるインスリン抵抗性に対して、代償的に膵β細胞からのインスリン分泌が亢進し続けるうちに膵β細胞が疲弊し機能不全が生じる。そのため、糖代謝が正常な日本人でもBMIのわずかな増加により、膵β細胞の代償機能不全からインスリン感受性が低下するという。

 今回の結果は、臨床で観察されることと一致している。米国に移住したアジア系、太平洋諸島系の人々の間で糖尿病が急増しており、約10%のアジア系アメリカ人が糖尿病を発症し、うち90~95%は2型糖尿病であることが知られる。

 米国に住んでいる日系アメリカ人の方が、日本に住んでいる日本人より糖尿病の比率が高いという研究結果も報告されている。

 アジア系の人はコーカソイド系における「標準体重」であっても糖尿病発症率が高いことから、肥満はアジア系にとっては糖尿病発症の重要な因子ではないとの指摘がある。

 このことに関して研究者は「アジア系の人は各民族の標準体重をわずかに超過しただけでインスリン感受性が低下し、2型糖尿病発症の危険性が著しく上昇するため、慎重な体重管理が必要となる。糖尿病の発症条件はインスリン作用の不足であり、東アジア人はインスリン分泌が少ない」と指摘している。

Ethnic Differences in the Relationship Between Insulin Sensitivity and Insulin Response
Diabetes Care; June 2013 vol.36 no.6, 1789-1796

[保健指導リソースガイド編集部]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2025年08月21日
歯の本数が働き世代の栄養摂取に影響 広島大学が新知見を報告
2025年07月07日
子供や若者の生活習慣行動とウェルビーイングの関連を調査 小学校の独自の取り組みを通じた共同研究を開始 立教大学と東京都昭島市
2025年06月27日
2023年度 特定健診の実施率は59.9%、保健指導は27.6%
過去最高を更新するが、目標値と依然大きく乖離【厚労省調査】
2025年06月17日
【厚労省】職域がん検診も市町村が一体管理へ
対策型検診の新項目はモデル事業で導入判断
2025年06月02日
肺がん検診ガイドライン19年ぶり改訂 重喫煙者に年1回の低線量CTを推奨【国立がん研究センター】
2025年05月20日
【調査報告】国民健康保険の保健事業を見直すロジックモデルを構築
―特定健診・特定保健指導を起点にアウトカムを可視化
2025年05月16日
高齢者がスマホなどのデジタル技術を利用すると認知症予防に 高齢者がネットを使うと健診の受診率も改善
2025年05月16日
【高血圧の日】運輸業はとく高血圧や肥満が多い 健康増進を推進し検査値が改善 二次健診者数も減少
2025年05月12日
メタボとロコモの深い関係を3万人超の健診データで解明 運動機能の低下は50代から進行 メタボとロコモの同時健診が必要
2025年05月01日
ホルモン分泌は年齢とともに変化 バランスが乱れると不調や病気が 肥満を引き起こすホルモンも【ホルモンを健康にする10の方法】
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶