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生活習慣病の発症率と医療費を予測するモデルを開発 精度は誤差5%
2014年03月14日
日立健康保険組合(日立健保)と日立製作所(日立)は、特定健診や診療報酬明細書(レセプト)の情報を活用し、日立健保が保有する特定健診とレセプトのデータから、将来の生活習慣病の発症率と医療費総額を予測するモデルを開発した。
日立健保の約11万人分のデータを用いて有効性を検証し、平均誤差5%で生活習慣病の医療費総額を予測できる見通しを得た。日立健保では、2014年度から同モデルを試験的に導入し、将来の医療費予測をもとに、費用対効果の高い保健指導の導入など施策の検討を行う予定。
11万人分の特定健診とレセプトデータを活用
医療費の高騰に対策するために、厚生労働省は2015年度から全ての健康保険組合(健保)が、健保が保有する特定健診やレセプトの情報を活用し、加入者の健康づくりや疾病予防に取り組む「データヘルス」を推進することを決定した。
これまで生活習慣病の発症予測は、疫学研究や医療現場で得られた知見をもとに、疾病ごとの個別モデルを生成する方法が一般的だった。生活習慣病では、各疾病が互いに影響しあい、重症化すると合併症を引き起こすことがわかっており、精度の高い予測を行うためには、疾病間の影響まで考慮した発症率予測とこれにもとづいた医療費予測が必要となる。
そこで、日立健保と日立は、日立健保が保有する複数年分のレセプトと特定健診のデータから、生活習慣病の疾病間の影響を考慮して、集団における生活習慣病の発症率と生活習慣病に関連する医療費総額を予測するモデルを開発した。
予測値と実データの誤差は5%以内
具体的には、特定健診とレセプトデータに含まれる生活習慣病に関わる検査値(BMIや血糖値など)や問診結果(飲酒や喫煙、運動状況など)、傷病名や診療内容、診療報酬点など多数の項目について、データの経年変化を分析し、ある状態から将来どのような状態に変化するかを確率的に求めた。
同時に、コンピュータがデータに潜むパターンや規則性などを自動で導き出す機械学習によって、例えばBMIと糖尿病など異なる項目間の影響度合いを求めた。これらの分析結果を用いて、集団における生活習慣病の発症率とそれに関わる医療費総額を予測するモデルを構築した。
2010年と2011年の約11万人分のレセプトと特定健診データを用いて検証実験も行った。11万人のデータを「A」(約9万人)と「B」(約2万人)に分け、Aグループの2年分のデータを用いて生活習慣病の医療費総額を予測するモデルを構築し、このモデルを使ってBグループの2010年のデータから2011年の医療費総額を予測して、2011年の実データと比較した。
その結果、予測値と実データの誤差は平均5%以内になり、疾病ごとに構築された個別モデルを使って予測した場合の誤差約10%に対し、高い精度で予測できることを確認した。なお、データ分析では、特定健診とレセプトのデータを、個人を匿名化した上で活用した。
費用対効果の高い保健事業を推進
日立健保はこれまでに、独自の生活習慣改善・減量プログラム「はらすまダイエット」を活用した保健指導を実施している。
「はらすまダイエット」は、参加者が日々の体重と生活習慣改善結果を記録し、保健師のアドバイスを受けながら6か月間で5%の減量をめざす減量プログラム。2013年3月末時点の成果として、体重の5%減量の成功率が50.2%、平均で体重4.4kg減の実績がある。参加者は不参加者と比較して医療費が低いという結果も確認している。
日立健保では、今回開発した医療費予測モデルを活用し、データヘルスの一環として費用対効果の高い保健事業を推進する予定。
日立健康保険組合日立製作所
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