ホウレンソウとブロッコリーで肥満や糖尿病を改善 野菜の抗酸化物質

食物として吸収した栄養を分解してエネルギーを得るのに、呼吸で酸素をとりいれる必要があるが、その酸素の数パーセントは活性酸素になる。活性酸素は体を細菌やウイルスから守るために重要な役割を果たすが、最近の研究で老化やがん、糖尿病などの原因となることも分かってきた。
体には活性酸素を消去する酵素があるが、年齢とともにその働きは弱まる。また活性酸素は呼吸だけでなく、多量飲酒や喫煙、太陽の紫外線などさまざまな原因で発生する。
太陽の光を浴びて育つ野菜と果物には、この活性酸素を消去する抗酸化物質がたくさん含まれている。抗酸化物質の多くは、植物が紫外線や害虫から身を守るために作り出す物質で、色や香り、アクの成分にあたる。
抗酸化物質は多く摂取するほど良いということはなく、食物からバランスよく摂取することが大切だ。そのため、特定の抗酸化物質を、サプリメントとして大量に摂取することは好ましくない。
また、ファストフードでは、こうした栄養成分を摂取しにくいという。「野菜を毎日食べることが大切です」と、研究者は注意を呼びかけている。

ルンド大学のシャロッテ・アーランソン-アルバートソン教授(食事行動学)は、食欲を抑える効果的な治療の研究をしており、「チラコイド」の作用に着目した。
チラコイドは、ホウレンソウなどの葉物野菜の葉緑体にある膜状の物質。積み重なり構造をつくり、葉緑素など光合成に必要な成分を含んでいる。
同教授は、チラコイドが腸での脂肪の消化・吸収を遅くし、食欲を増進するホルモンの分泌を抑えることを解明した。
満腹を感じる過程で、血糖やインスリン以外にもさまざまなホルモンが関わっている。脂肪細胞から分泌されるレプチンというホルモンは、脳の視床下部に作用して満腹感を感じさせ、摂食を抑え、体重を適正に保つとされる。
試験グループの15人に、チラコイドを含む注射剤を投与したところ、日中に食欲を抑えられるようになり、食べ過ぎが減少した。1日3回の食事で満足できるようになり、間食の頻度も減少したという。チラコイドを投与した患者では、レプチンの分泌も改善していた。
ただし、チラコイドはホウレンソウをつぶしてろ過し、遠心分離機にかけることで、抽出が可能になるという。普通にホウレンソウを食べただけでは、吸収できるチラコイドは限られている。
「ホウレンソウには他にも、ビタミンA、E、K、ベータカロテン、抗酸化物質、ルテイン、セレブロシド、タンパク質など、体に良い栄養素が多く含まれています。毎日食べることをお勧めします」と、同教授は述べている。

スルフォラファンは、カリフラワー、キャベツ、芽キャベツ、ケール、白菜、菜の花などに含まれるが、ブリッコリーのスプラウト(新芽)は特に含有量が多い。
糖尿病の人では、心臓発作や脳卒中などの心血管疾患の発症リスクが最大5倍に増加する。これらの疾患は、高血糖により血管がダメージを受けることで引き起こされる。
イギリスのウォリック大学の研究チームは、高血糖によって損なわれた血管細胞に対する、スルフォラファンの作用を調べた。そして、スルフォラファンが細胞にダメージを与える活性酸素種(ROS)を73%減少させることを突き止めた。
スルフォラファンは、抗酸化機能をもつ遺伝子の転写因子(Nrf2)を活性化し、血管を保護するという。
オーストラリアのクィーンズランド大学は、ブロッコリーに含まれるスルフォラファンを摂取することで、2型糖尿病患者の合併症をどれだけ予防できるかを確かめるために、臨床試験を開始した。
参加者に、スルフォラファンの錠剤を1日6錠服用してもらい、血管などのダメージをどれだ抑えられるかを調べる。
「ブロッコリーの栄養成分を糖尿病治療に役立てられるかを検討する世界ではじめての研究です」と、同大学のクリスティーン ホートン氏(栄養学)は話す。研究結果は来年発表される予定だ。
Spinach extract curbs appetite, sugar cravings(ルンド大学 2014年3月11日)
Broccoli sprouts could boost battle against Type 2 diabetes(クィーンズランド大学 2014年3月13日)


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