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生活スタイルを変えれば糖尿病の発症前に逆戻りできる
2015年02月11日

「2型糖尿病は生活スタイルを変えることで逆戻り(リバース)させることが可能です。糖尿病は治らない病気ですが、運動を毎日行い、食物繊維を十分にとり、飽和脂肪酸を減らし、体重を減らすことで、治ったのと同じ状態を維持できます」と、欧州心臓学会(ESC)はアドバイスしている。
食物繊維が10g増えるごとに死亡リスクは10%下がる
「糖尿病は初期の段階であれば、逆戻りできることが分かっています。そのために必要な生活スタイルがあります」と、欧州心臓学会(ESC)のスポークスマンでミュンヘン糖尿病研究グループ教授のエバハード スタンドリー氏は言う。
まず、野菜や玄米などの全粒穀物に含まれる食物繊維をとることが、2型糖尿病を逆戻りさせるに効果的だ。食事のはじめに食物繊維が豊富な食品を食べることで、腸管で糖質(ブドウ糖)の吸収を遅くし、血糖値の上昇を防げる。食物繊維は、コレステロールの吸収も抑えるので、脂質異常症などの改善にも役立つ。
食物繊維が豊富な食品によって「インクレチン効果」も期待できる。腸での消化・吸収を遅らせることで、インクレチンの分泌が増える。インクレチンは、食事を摂取したとき腸管から血液中に分泌される消化管ホルモンで、膵臓β細胞からのインスリン分泌を増加させたり、血糖値を上げるグルカゴン分泌を抑制し、食後に高くなった血糖値をコントロールする働きをする。
食物繊維をたくさん摂取すると心臓病や脳卒中などによる死亡の危険性を下げられ、長生きできることは、約100万人の健康データを解析した大規模調査でも明らかになっている。
上海がん研究所の研究者が、欧州と米国で行われた98万人を対象とした17件の調査を解析した。毎日の食物繊維の摂取量に応じて5つのグループに分けて比較したところ、もっとも多く食物繊維をとるグループの死亡率は、もっとも少ないグループより16%低いことが明らかになった。
また1日に摂取する食物繊維の量が10g増えるごとに、死亡リスクが10%下がることも明らかになった。
日本は、ニンジン、ホウレンソウ、小松菜、トマト、ピーマン、レタス、キャベツ、白菜、タマネギ、シイタケ、シメジ、ワカメ、モズク、ヒジキなど、食物繊維が豊富な野菜や海藻類が、いつでも手ごろな値段で手に入る恵まれた国だ。ESCや上海がん研究所のアドバイスは参考になる点が多い。
糖尿病を逆戻りさせる5つの生活スタイル
「糖尿病を発症して間もない段階であれば、糖尿病予備群の状態に戻すことが可能です。そのために、肥満や過体重の人は、体重を5%減らすと効果的です」と、スタンドリー教授は説明する。
体重を減らすには脂肪、特に飽和脂肪の摂取量を制限することが必要だ。飽和脂肪はバターやソーセージ、肉の脂身、ケーキ、チーズなどに含まれている。
食事のカロリー摂取量をコントロールすることは、とりわけ重要だ。体重を増やさないように食事を調整すれば、効果は3~5日以内にあらわれる。「ただし、当然のことながら、適正体重の維持を継続する必要があります」と、スタンドリー教授は言う。
「これらの生活スタイル改善を実行すれば、糖尿病を逆戻りさせることが可能です。糖尿病の治療を受けている人は、合併症を予防できます。生活スタイルを変えるのに"遅すぎる"ということはありません」と強調している。
世界の糖尿病人口は4億人に近づく勢いで増加しており、この勢いは誰にも止められないようにみえる。しかし、生活スタイルを改善することで、糖尿病をくいとめられることを示したエビデンスがある。
フィンランドで行われた「フィンランド糖尿病予防研究」(Finnish Diabetes Prevention Study)は、糖尿病予備群と判定された平均年齢55歳の男女500人以上が参加して行われた。
以下の5つの生活スタイルの改善に成功した参加者は、4kg以上の体重減少に成功し、2型糖尿病の発症を58%抑えられていた。(1)体重を5%以上減らす。
(2)1日に適度な運動を30分以上行う。
(3)食物繊維の摂取を増やす。1,000kcal当たり15g以上が目標。
(4)食事で脂肪の摂取量を減らす。摂取エネルギーの30%以下に抑える。
(5)飽和脂肪酸の摂取を減らす。摂取エネルギーの10%以下に抑える。 Type 2 diabetes reversible with lifestyle changes(欧州心臓学会 2014年11月14日)
The Finnish Diabetes Prevention Study(DPS)(Diabetes Care 2003年9月4日)
Association Between Dietary Fiber and Lower Risk of All-Cause Mortality: A Meta-Analysis of Cohort Studies(American Journal of Epidemiology 2014年12月31)
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