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痛風の発症に関わる遺伝子を発見 痛風の遺伝的リスクを判定
2015年02月12日

痛風の発症に関わる5つの遺伝子を日本の研究グループが発見した。ヒトゲノム全体にわたって遺伝子の個人差を調べる大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)で突き止めた。5つの遺伝子のうち3つは新しく見つかった痛風関連遺伝子で、一部は痛風の病型と関連していることが分かった。痛風のオーダーメイド医療の実現につながる成果としている。
痛風の遺伝的リスクを判定
痛風は、高尿酸血症(血液中の尿酸値が7mg/dLより高い状態)が持続することで発症する。痛風は、「風が吹いても痛い」と言われるほどの激しい関節炎発作を引き起こす一方で、高血圧症や腎疾患、心疾患、脳血管障害などのリスクにもなることが明らかになっている。
「高尿酸血症(痛風予備群)」の数は約500万と推定されている。食生活の欧米化や肥満などの環境要因が痛風の発症を増やしているが、生活スタイルが同じようであっても、痛風を発症する人としない人に分かれることから、遺伝的要因が関与していると考えられてきた。
研究は、日本国内16ヵ所の研究施設に所属する40人の研究者によって、多施設共同研究として行われた。研究グループは、大阪、京都、東京の3ヵ所の医療機関を受診した痛風の男性患者945人と対照者1,213人で、約70万ヵ所の一塩基多型(SNP)を比較した。
一塩基多型は、DNAの塩基配列が1つだけ置き換わったもので、病気のなりやすさに関係している。痛風の発症と関連する候補となった一塩基多型について、別の集団(痛風患者1,048人と対照者1334人)で再現性を追加検証した。
その結果、ABCG2、SLC2A9、MYL2とCUX2の間、GCKR、CNIH-2の計5ヵ所の遺伝子領域で強い関連がみられた。このうち、 MYL2-CUX2、GCKR、CNIH-2の3カ所ははじめて痛風に強く関連する遺伝子と分かった。
今回の研究は、アンケートなどによる自己申告の症例は対象とせず、医師が確実に診断した痛風症例のみを対象とした世界ではじめてのゲノムワイド関連解析。このため、痛風の病型ごとの詳細な解析が可能になり、病型ごとにどの遺伝子が特に関連しているかについても明らかになった。
研究チームは、ABCG2は腎負荷型の痛風、SLC2A9は腎排泄低下型の痛風とそれぞれ関連性が高いことを発見。痛風は病型で薬が異なるため、遺伝子診断が薬を選択する際の指針になる可能性がある。
「近年増えつつある痛風患者の遺伝的リスクを判定するためにどの遺伝子が重要であるのかを発見した。痛風を発症するリスクの高い人を早期に見つけ出し、さらにどの病型になりやすいかを予測できれば、個人差に応じた治療薬を選び適切な治療を実施できるようになる。痛風に対する新たな視点からの予防法や治療薬の選択に有用で、医療費の削減にもつながる」と、研究者は指摘している。
研究は、防衛医科大学校の松尾洋孝講師、中山昌喜医官、崎山真幸医官、久留米大学の山本健教授、国立遺伝学研究所の中岡博史特任研究員らの研究チームによるもの。英医学誌「Annals of the Rheumatic Diseases」オンライン版に発表された。
防衛医科大学校 分子生体制御学講座
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