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セルフメディケーションを推進 ドラッグストアの役割を提言
2015年03月26日

経済産業省は13日、セルフメディケーションの推進に向け、ドラッグストアの役割について議論してきた研究会がまとめた報告書を公表した。消費者のセルフメディケーションをサポートする役割がドラッグストアに期待されていることをふまえたもので、報告書には業界に向けた10の提言が盛り込まれている。
セルフメディケーションとは、WHO(世界保健機構)の定義によると「自分自身の健康に責任をもち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」。政府が推進する成長戦略である「日本再興戦略」では、健康増進・予防などの幅広い領域で、自身で健康管理を行うセルフメディケーションを推奨している。
セルフメディケーションの拠点としてドラッグストアに期待
セルフメディケーションにおいて重要な役割・機能を果たすのは、薬剤師や登録販売者などの専門人材を有するドラッグストアだ。ドラッグストアは消費者と直接接点をもち、医薬品をはじめとする多様な商品を扱うことから、消費者のセルフメディケーションをサポートする役割が期待されている。
同省によると、国内のドラッグストアの店舗数(2013年)は約1万7,000店で、売上規模は6兆円に上る。
消費者によるセルフメディケーションを進めるために、消費者が自ら問題意識をもつことが重要であり、そのために消費者がドラッグストアでの簡易な検査などを活用することで、自らの健康状態をしっかりと把握できる環境を整備することが重要となる。
豊富な種類の医薬品や健康食品などから、自らの症状を把握し、その状態にあわせて適切な商品を選択して対処することは困難な面もある。そのような消費者に対して、専門的知見をもつドラッグストアが、具体的なニーズや個々の健康状態に応じ、身体と心の健康づくりに適切な情報提供を行っていくことが期待されている。
業界で統一した「受診勧奨ガイドライン」を検討
一方で、薬剤師が薬を出すときに、患者の状況を把握する上で欠かせない「薬剤服用歴」がある。この「薬のカルテ」が整備されていないことが、大手薬局チェーンの調剤薬局で発覚した。日本チェーンドラッグストア協会は、薬歴の管理状況の再点検と、薬歴記載の徹底を加盟各社に要請した。
また、セルフメディケーションの環境を整備する上で、自己採血などを通じた健康管理についての規制を明確化したケースで示された通り、医師などと連携して消費者を医療機関につなぐ機能をつくる必要性がある。
日本チェーンドラッグストア協会は、どこまでの範囲、内容で受診勧奨ができるか法的な位置づけを明確化するため、業界で統一した「受診勧奨ガイドライン」策定を検討していくと報告した。
「買物弱者」への対応にも期待
また、食品や日用品などの生活必需品の買物へのアクセスが悪くなったり、高齢化などを理由に身体的な問題で外出することが困難な「買物弱者」が社会問題になっている。
買物弱者への対応には、医薬品や生活必需品などを取りそろえたドラッグストアにも積極的な対応が期待されている。政府としても買物弱者への対応を行うドラッグストアをサポートするため、2014年度補正予算事業などの取組みを進めていくことが検討している。
さらに、商品を比較できたり、店員が豊富な知識をもっていることを重要視する消費者は多く、ドラッグストアが情報発信機能を強化することで潜在的な消費者ニーズに応えられる可能性がある。
ドラッグストアでの情報提供に際しては、消費者の安全確保と商品・サービス提供の信頼を担保するために、情報提供をバックアップするデータベースの構築や、信頼性を担保した商品提供マニュアルなどの整備と、薬剤師等の人材育成が重要となる。
ドラッグストア業界に向けた10の提言
このようにドラッグストアには多様な役割が期待されるものの、消費者はドラッグストアの店舗を選択する際に、「立地や利便性」を重視しており、ドラッグストアに期待される役割と実際のサポート機能にギャップがある。
報告書では、こうしたギャップを埋め、期待されている役割を果たすため、下記の提言を行っている――1. 消費者のセルフメディケーションに関する理解の醸成
2. 専門人材の更なる育成
3. 消費者が相談しやすい環境の整備
4. 消費者への情報提供を支えるデータベースの整備
5. 提供する情報の充実
6. 情報提供の前提となる検査等のサービスの充実
7. 医療機関などとの連携
8. 医薬品等を活用した買物弱者対策等の取組の強化
9. 外国人旅行者等の利便性向上のための環境整備
10. 製・配・販連携による返品の削減 「セルフメディケーション推進に向けたドラッグストアのあり方に関する研究会」報告書(経済産業省 2015年3月13日)
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