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残った歯が多いほど寿命は延びる 歯科医師会が最新エビデンスを公開
2015年05月20日

歯や口腔内を健康に保つことは全身の健康につながることを知ってもらおうと、日本歯科医師会は歯科医療と健康の関連を示す最新の研究成果をまとめ公開をはじめた。
日本歯科医師会が公開をはじめたのは「健康長寿社会に寄与する歯科医療・口腔保健のエビデンス2015」。「歯・口腔の健康は、個人の生涯にわたるQOL(生活の質)の保持に欠かすことのできない要素」として、歯科の医学研究に関する国内外の研究のデータベースを活用し、1,000件以上の質の高い研究論文を選んで分析した。 それによると、高齢者の残存歯数は年々増加傾向にあり、80歳で平均して14本の歯が残存している。厚生労働省や日本歯科医師会が推進している80歳で20本の歯を残そうとする「8020運動」の達成率は35%だ。

残った歯の数が少ない人ほど寿命が短くなる 認知症の発症率も上昇
65歳以上の日本人2万人以上を対象とした4年間の調査では、残った歯の数が少ない人ほど寿命が短くなることが明らかになった。死亡率は、20歯以上の人に比べて、10~19歯の人で1.3倍、0~9歯の人で1.7倍に上昇した。
愛知県の65歳以上の住民を3~4年間追跡した研究では、歯が多く残っている人では、認知症の発症や転倒する危険性が低いということが示された。
それによると歯を失い、入れ歯を使用していない場合、歯が20歯以上残っている人や入れ歯によりかみ合わせが回復している人と比較して、認知症の発症リスクが最大1.9倍に上昇することが分かった。
また、保有する歯が19歯以下の人は、20歯以上の人と比較して要介護認定を受ける割合が1.2倍に上昇し、要介護状態になる危険性も歯が多い人ほど少ないことが分かった。
歯周病が心血管疾患リスクを上昇
心筋梗塞や狭心症の虚血性心疾患は、心臓の冠状動脈にプラークが形成され閉塞されていくことで生じる。歯周病原性細菌などが血管内に侵入し、血流に乗って冠状動脈に達するとアテローム形成が加速化。その結果、心血管の病気が発症しやすくなる。
海外で行われた調査では、歯周病に罹患していると、心血管疾患の発症リスクは1.14~1.75倍に高まることが示された。
歯周病は糖尿病と密接に関連
糖尿病は口腔内の疾患に影響を与え、特に歯周病は糖尿病と密接に関連しており、歯科医師が糖尿病の改善に寄与できる可能性があるという。歯周病を治療することで、血糖コントロールが改善した例が報告されている。
また、口腔の健康管理を行うことで、糖尿病の早期発見や糖尿病予備群への啓発につながる可能性もあるという。
口腔ケアを行うと誤嚥性肺炎のリスクが低下
気管に入った唾液中の細菌などが肺に感染して起こる「誤嚥性肺炎」は、高齢者に多くみられる。特に、要介護の高齢者などは飲み込む力や咳反射が低下しているため、唾液やプラークなどが気管に入りやすく誤嚥を起こしやすい。
肺炎を起こしやすくいの歯周病原性細菌などで、そのため、高齢者に口腔ケアを行い、歯周病原性細菌などの口内細菌が減少すると肺炎の発症率が下がることが報告されている。
歯の喪失は骨密度の減少に影響
骨量が減少して海綿状になり、もろく折れやすくなる骨粗鬆症は、高齢の女性に多くみられる。歯周病になった歯肉で産生されるサイトカインには、骨代謝に影響を及ぼすものがあり、歯の喪失と骨密度の減少には関連があるという研究報告がある。
逆に、骨粗鬆症の人が歯周病に罹患すると、歯周組織の歯槽骨が急速に吸収されることで症状が進行しやすくなるおそれもあるという。
健康長寿社会に寄与する歯科医療・口腔保健のエビデンス 2015(日本歯科医師会)
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