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「認知症予備群」を簡単な血液検査で判定 早期発見で「先制医療」を可能に
2015年08月19日
認知症の前段階の「軽度認知障害」になっているかどうかを血液検査だけでおよそ80%の精度で判定できる方法を筑波大学などの研究グループが開発した。「すぐにでも健診で活用できる簡単で実用性のある検査法」としている。
認知症の症状が出る前に血液検査で早期発見
日本の認知症有病者数は462万人、その予備群は400万人に上り、その7割がアルツハイマー型の認知症だ。要介護の原因疾患の2割が認知症であり、その社会コストは14.5兆円と推定されている。
今後も患者数は増え続けると予測されており、認知症は大きな社会問題になっている。認知症は症状が進行してから治療を開始しても効果が見込みにくい。認知症の症状が出る前に、早期に発見して治療的介入を行う「先制医療」が求められている。
検査をきっかけに早い段階で診断を受け、運動を取り入れたり食生活を改善するなどして生活習慣を改善すれば、認知症の予防につながる。
筑波大学医学医療系の内田和彦准教授、朝田隆名誉教授らの研究グループは、脳内の「アミロイドβペプチド」と呼ばれる異常なタンパク質の排出などに働くタンパク質の血液中の変化が、認知機能低下のマーカーになることを明らかにした。
「軽度認知障害」を血液検査で判定 先制医療を可能に
認知症の予備群の段階で発症するのが「軽度認知障害」(MCI)、さらにその前に「プレクリニカル期」という症状のない時期があると考えられている。
病気の進行の目印になるマーカーがみつかれば、予備群のMCIやプレクリニカル期の段階で先制医療を行うことが可能になる。
アルツハイマー病は、発症の20年くらい前から、「アミロイドβペプチド」の沈着(老人斑)という病理的病変が起こり発症する。アミロイドβペプチドは神経細胞毒性を示し、その産生と蓄積の異常がアルツハイマー病の発症に深く関わっている。
研究グループは、病状が進むにつれ、患者の血液の中では、アミロイドβペプチドの排除や毒性防御などの働きをするタンパク質「シークエスタータンパク質」が減ることを明らかにした。
シークエスタータンパク質について、「補体タンパク質」「アポリポタンパク質」「トランスサイレチン」の3つの血清タンパク質を組み合わせた解析により高い精度で、MCIやプレクリニカル期を判定できることが明らかにした。
すぐにでも健診で活用できる簡単で実用性のある検査法
研究グループは、茨城県利根町で2001年に約2,000人を対象に開始されたコホート研究の成果をもとに、新たな検査法の精度を確かめた。
研究では、3年ごとに認知機能検査、臨床診断と採血を行い、軽度認知障害からアルツハイマー型の認知症へと病状が進行していく過程を詳しく調べた。
その結果、参加者を時間軸にそって、健常からMCIや認知症まで継続的に調査する「縦断研究」によって、新たな検査法の精度が80%に上ることを明らかにした。
今回開発されたのは、一般的な血液検査で測定できる検査法で、今後の認知症の先制医療の実現につながる可能性がある。
すぐにでも健診で活用できる簡単で実用性のある検査法で、すでに国内のおよそ500ヵ所の医療機関で検査が行える体制にあるという。
「今後、検査の精度を上げるとともに、バイオマーカーによる早期発見と発症前の治療的介入が、認知機能の低下の進行を防ぎ、認知症の発症を予防することを、長期的なコホート研究によって確かめる必要がある」と、内田准教授は述べている。
筑波大学医学医療系
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