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なぜ日本人は長生きなのか? 長寿者の遺伝子を大規模調査で解明

 日本人の平均寿命の高さが世界中から注目を浴びており、長寿の理由をさぐる研究が行われている。慶応大学などが実施した1,500人以上の高齢者を対象とした大規模調査で、DNAと体内の炎症が密接に関わっていることが解明された。
なぜ日本人は長寿なのか 遺伝子を解明
 厚労省の調査によると、2014年の日本人の平均寿命が男女とも過去最高となった。女性は86.83歳で3年連続で長寿世界一。男性は前年に初めて80歳を超え80.50歳となり、香港(81.17歳)、アイスランド(80.8歳)に続き世界3位になった。

 厚労省は平均寿命とは別に、健康上の問題で日常生活が制限されない期間を示す「健康寿命」も算出している。13年は女性が74.21歳、男性が71.19歳だった。

 なぜ日本人は長寿なのだろうか? 細胞の老化を防ぐ仕組みが日本人の長寿に深く関わっている可能性がある。

 慶応義塾大学と英ニューカッスル大学の共同研究チームは、100歳以上の長寿者とその家族らを分析し、長寿者はテロメアという染色体の端を守る部分が長く、老化を促進させる炎症マーカーの値が低いことを突き止めた。
テロメアが細胞の老化を反映 百寿者のテロメアは長い
 慶應義塾大学医学部百寿総合研究センターの新井康通専任講師、広瀬信義特別招聘教授と英ニューカッスル大学のトーマス・グリニツキー教授らは、100歳以上の超高齢者(684人)とその直系家族、85~99歳の高齢者、計1,554人を対象に調査した。

 その結果、100歳以上の超高齢者と直系子孫はいずれも、染色体の末端にある塩基配列である「テロメア」の長さがより長く保たれていることも分かった。

 細胞の老化にはDNAのテロメアの長さが関係している。テロメアは細胞が分裂するたびに少しずつ短くなるため、長さが細胞の老化を反映する指標と考えられている。

 調査では、実際の年齢が80歳台という直系子孫(血縁のある子供)でもテロメアは、60歳台の平均値に匹敵する長さを維持していることが判明した。

 過去の研究では、健康的な食生活や運動、ストレス管理など生活習慣の改善によってテロメア長の短縮を防げることが報告されている。
老化に伴う炎症を抑えることが健康寿命の秘訣
 また、細胞の老化は、体内の炎症が関係している。炎症は通常、けがをしたり、病原体が体に入ったりした時などに起きる防衛反応だが、高齢者では加齢に伴い、症状がなくても血液中の炎症物質の数値が高くなる傾向がある。

 炎症の有無や程度を反映する血液中の炎症マーカーとして、C反応蛋白(CRP)、インターロイキン6、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)などが知られている。

 健康で長生きする人は、炎症マーカーの数値が低く、この数値が低いほど認知機能や生活の自立度も高いことが分かった。

 現在利用できる抗炎症薬は、さまざまな副作用により慢性炎症を長期的に抑制する目的では使用することができない。老化に伴って炎症が起こる理由を解明することが、新しい治療法の開発につながる可能性がある。

 「百寿者を対象とする研究によって、炎症が健康寿命を規定する要因であり、ヒトの老化過程にも関連していることを証明することができた」と、新井氏は述べている。

 新井講師らは85歳以上の超高齢者を対象に詳細な食事摂取や運動習慣の調査を行っており、炎症を低く抑え、テロメア長を保つ健康増進法の開発を目指している。

慶應義塾大学医学部百寿総合研究センター
Inflammation, But Not Telomere Length, Predicts Successful Ageing at Extreme Old Age: A Longitudinal Study of Semi-supercentenarians(EBioMedicine 2015年7月29日)
[Terahata]
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