食塩と脂肪の多い食事が「食欲亢進」を引き起こす 高血圧と肥満を予防

日本の高血圧患者数は4,000万人を超えると推計される。高血圧の原因のひとつは食塩の摂り過ぎだ。日本高血圧学会は食塩摂取量の目標として「1日6g未満」を掲げている。これは「日本人の食事摂取基準」で定められた男性の1日8g未満、女性の7g未満よりも厳しい目標値だ。実際には日本人は、男性はおよそ14g、女性はおよそ12gの食塩を摂取している。
食塩の摂り過ぎは高血圧を引き起こすだけでなく肥満の原因にもなる。食塩は食事の味を決める重要な栄養素だが、食欲を増す作用があり、これに脂肪が合わさると相乗的に食欲を高める危険性があるという研究が発表された。
体重をコントロールすることを望んでいる人は、食塩と脂肪の多い食事を避けた方が良い。これらが2つ合わさると食欲が異常に高まる「食欲亢進」をまねくおそれがあることが、オーストラリアのディーキン大学の研究で明らかになった。
「食塩と脂肪の摂り過ぎが、エネルギーの過剰摂取につながり、肥満や2型糖尿病のリスクが高まります。食事の味付けは習慣として、長期間かけてつくられます。ふだんから薄味に慣れて、味覚の感受性を高めておく必要があります」と、ディーキン大学先進知覚科学センターのラッセル キースト教授は言う。
研究チームは、実験に参加した18~54歳の健康な男女を対象にトマトスープを食べてもらった。塩分の濃度を0.04%、0.25%、0.5%、1%、2%に、脂肪分の濃度を0%、5%、10%、20%にそれぞれ変えた場合に、食欲にどのような変化が起こるかを調べた。
平均的にもっとも「味が良い」と感じるのは、食塩の濃度が0.25~0.5%で、脂肪分の濃度が5%のときであることが判明した。しかし、食塩の濃度を上げていくと、脂肪分が10%以上にならないと満足感を得られにくくなることが判明した。さらに、食塩の濃度を上げるとエネルギー摂取量が平均して11%増えることが示された。
「低脂肪の食事に慣れている人は、食事の量を抑えても満足できますが、これに食塩を加えると食欲が増し、食べ過ぎてしまうおそれがあります。食塩と脂肪は食事の味付けにおいて重要な要素で、どちらかかが足りないと味気ないと感じがちです。しかし、どちらも食欲を増す効果があり、両方を過剰に摂取すると食べ過ぎにつながるので注意が必要です」と、キースト教授は指摘する。
キースト教授らは、2010年に「甘味、塩味、苦味、酸味、うま味」の5つの味覚に、6番目として「脂肪」も加えるべきだとする研究を発表した。キースト教授によると、脂肪の味をどれほど敏感に感じるかは、人によって異なるという。また、脂肪の味に対して敏感になっている人は、脂肪の少ない食品でも満足でき、体重増加や肥満が少ない傾向がある。
「同じエネルギーの食事であっても、味付けによって得られる満足感に違いが出てきます。実験では、脂肪に対する味覚の感受性が高く、少しの脂肪でも満足感を得やすい人であっても、食塩を加えると味覚が鈍くなり、たくさん食べないと満足できなくなる傾向がみられました」と、キースト教授は説明する。
人間の体には一定の量を食べると満足感を得られ、食べることをやめられるようになる仕組みが備わっている。その生物学的なメカニズムは食塩と脂肪を摂り過ぎると乱れやすく、食欲を調整するバランスが崩れ「もっと食べないと満足感を得られなくなる」という。
「脂肪や食塩の少ない食事は慣れないと味気なく感じる人が多いのですが、薄味の食事を続けていれば味覚が敏感になり、少ない脂肪と食塩でも満足感を得やすくなります。逆に濃い味付けに慣れている人は、もっと味を濃くしないと満足できないようになるおそれがあります。ふだんから食事の味付けには注意しておく必要があります」と、キースト教授はアドバイスしている。
「食塩は食品の指向性を決める重要な栄養素です。加工食品や外食で食塩を摂り過ぎている人が多くいます。減塩を推進するために、食品産業に働きかける必要があります」と付け加えている。
Fat and salt combined is a toxic mix for our health and waistlines(2016年3月10日 ディーキン大学)
The influence of a high-fat meal on fat taste thresholds(Appetite 2016年3月7日)


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