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重症化しやすい脳梗塞を予防 血液の固まりやすさを測定する方法を開発
2016年06月15日
重症になりやすい「心原性脳梗塞」の発症と密接な関係がある血液の固まりやすさ(血液凝固能)を正確に判定する方法を、東京医科歯科大学の研究グループが開発した。臨床の現場で普及すれば、発症リスクを早期に診断する信頼性の高い検査を行えるようになりそうだ。
血液の固まりやすさを判定する方法を開発
「心原性脳梗塞」は、心臓にできた血栓が脳の血管まで到達し、詰まることで脳に障害がおきる疾患。重症化しやすく、半身不随や記憶障害など深刻な後遺症を残すことで知られている。
血管は血管内皮に覆われており、それに傷がつくと血小板が集まってきて塊をつくる。それに凝固因子が働き、血液中の有形成分を包み込み、血餅となり傷口をふさぐのがフィブリンだ。
フィブリン血栓が心臓の中に生じ、血流とともに脳に運ばれ、脳の血管を詰まらせるタイプの脳梗塞が心原性脳梗塞だ。心臓でできたフィブリンは凝固タンパクで固められ赤血球を巻き込み、頸動脈などにできる血栓と異なり、大きくて溶けにくく重症化しやすい。
血液凝固能には個人差があり、凝固能が高いほど血栓ができやすく心原性脳梗塞を発症するリスクが高まる。凝固能を正確に調べることができれば、発症リスクを正確に判定できると考えられている。
東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科の笹野哲郎准教授と同大学医歯学総合研究科心臓調律制御学の平尾見三教授らは、血液が凝固する過程で赤血球が凝集して、血液の「誘電率」が変化することに着目した。
誘電率は分子内の電荷が正極(プラス)と負極 (マイナス)に分かれる分極の強弱を示す値。研究チームは、血液の誘電率を計測することで、凝固能を高感度で判定できることを確認した。
短時間に正確に測定 臨床への応用を急ぐ
誘電率の測定には、ソニーが開発した「誘電コアグロメーター」と呼ばれる試作機を使用。電極がついたカートリッジの中に血液を入れて、誘電率を計測することで血液の固まりやすさを計測するのに成功した。
心原性脳梗塞の発症を予測する方法としては、心不全、高血圧、高齢、糖尿病、脳梗塞の既往を点数化した「CHADS2スコア」があるが、リスクを正確に評価するのは難しい。
また、遠心分離機にかけた血液を、液体成分である血漿と血球に分離させて、血漿の中のタンパク質だけを計測する従来の検査では、血液全体の正確な凝固性は分からない。今回新たに開発した技術では、分離させる手間が省けるうえ、凝固性が正確に計測できるという。
研究グループは「心原性脳梗塞の予防には、血栓を作らないようにする抗凝固薬が使われるが、薬の効果を判定するうえでも、この検査が応用できる可能性がある」として、実用化を急いでいる。
東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科
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