健診におけるHbA1c酵素法、グリコアルブミン測定の有用性
健診におけるHbA1c酵素法、グリコアルブミン測定の有用性
〜異常ヘモグロビン例への対応を含めて〜
GAはHbA1cより鋭敏であり、かつ血糖変動(食後高血糖)を把握できる
さて、ここからは、HbA1cは血糖状態に対する反応が遅く、かつ平均血糖しか反映されないという、血糖管理指標としての限界について述べてみたい。
私が以前所属していた施設で治療した患者データを解析した結果、HbA1cは過去5週間の血糖値でその50%を説明し得ることがわかった。一方、GAは2週間であり、HbA1cに比べて2.6倍速く血糖コントロールの変化を把握できる[図4]。また、糖尿病診療で薬物介入した場合、投与開始から12週間後のHbA1cで効果判定することが一般的であるが、2週間後のGAの低下の程度から12週間後のHbA1cを予測できることを既に報告している 2)。このようなGAの特徴を生かして早期に適切に治療できた症例を紹介する。
初期治療として強化インスリン療法を行った症例の解析
〔古賀 正史 先生提供〕
HbA1cの"奇異上昇"をGAで察知する
症例は83歳の男性で、食事療法のみでコントロールできていたものの、膵癌診断を契機に抗癌剤とともにステロイド投与が開始され、HbA1c高値となり紹介された。本来は入院の上でインスリン療法の適応であるが、本人の強い希望により外来で経口薬にて管理することになり、グリメピリド1mg/日を処方した。2週間後の外来でHbA1cはさらに上昇しており、HbA1cだけで判断していたら治療を強化していただろう[図5]。しかし、GAは既に低下しており、その変動幅からHbA1cも12週間後には改善すると予測し、薬剤を追加・変更することなく経過を観察した。その結果、12週後にHbA1cはほぼ予測値どおりに低下した。
悪化した2型糖尿病症例
※3:GAの2週間の変動幅から算出した推定HbA1c値
〔Koga M, et al. Clin Biochem 48: 459-462, 2015より改変〕
このように、HbA1cの反応が遅いために、実際には血糖コントロールが改善しているにも関わらずHbA1cが上昇する現象を私は'paradoxical increase(奇異上昇)'と名付けて報告した 3)。このような現象もGAをHbA1cと同時に測定していなければ気づかない。
GA/HbA1c比で食後高血糖を把握し、大血管症や認知症リスクに介入
HbA1cのもう一つの弱点は、平均血糖をよく反映するが、血糖変動(食後高血糖)をほとんど把握できないという点だ。このことは、例えばUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)においてHbA1cが細小血管合併症とは非常に強く相関するものの、食後高血糖が強く関与するとされる大血管症とは有意の相関がみられなかったことからもわかる 4)。
一方、私 はGAをHbA1cで 除したGA/HbA1c比がインスリン分泌指標であるHOMA-βと負に相関することから、血糖変動の指標となり得る可能性があることを以前に報告している 5)。近年、CGMの普及によって、平均血糖が同等でHbA1cが同じ値でも血糖値のSD(標準偏差)が高いとGAが高値を示すことを経 験するように なった。つまり、GAはHbA1cではわからない血糖変動を把握できるということだ。
IDF(International Diabetes Federation;国際糖尿病連合)は食後高血糖を大血管症ばかりでなく網膜症や癌、認知機能低下のリスクであるとしている 6)。実際に私達の検討でもGAが網膜症の独立した有意な危険因子であったが、腎症に対してはHbA1cとともにGAも有意な説明変数でなかった 7)。また、GA/HbA1c比が認知機能低下と有意な関連因子であることが報告されている 8)。
このような知見の蓄積により、近い将来、糖尿病の診療のみならず健診領域においてもHbA1cに加えてGAまたはGA/HbA1c比を導入する時代がくるのではないかと考えている。現状においては完璧な血糖コントロールマーカーは存在しないので、各種の検査および測定法の長所・短所を見きわめて適宜使い分ける、または組み合わせ ることが重要であろう。
参考文献
1) 古家美幸, 古賀正史, 他. 糖尿病 59: 463-468, 2016
2) Hamaguchi T, Koga M, et al. J Diabetes Invest 3: 175-178, 2012
3) Koga M, et al. Clin Biochem48: 459-462, 2015
4) UKPDS Group. BMJ 321(7258): 405-412, 2000
5) Koga M, et al. Diabetes Care 33: 270-272, 2010
6) IDF. Guideline for Management of PostMeal Glucose in Diabetes, 2011
7) Morita S, Koga M, et al. J Diabetes Metab 4: 6, 2013
8) Kinoshita T, et al. J Diabetes Complications 30: 1452-1455, 2016
初 出
日本総合健診医学会 第45回大会
ランチョンセミナー6 第6会場(東京ベイ舞浜ホテル クラブリゾート2F 羽衣)
演題:健診におけるHbA1c酵素法、グリコアルブミン測定の有用性〜異常ヘモグロビン例への対応を含めて〜
座長:福武 勝幸 先生(東京医科大学 医学部医学科 臨床検査医学分野 主任教授)
演者:古賀 正史 先生(医療法人伯鳳会 はくほう会セントラル病院 院長)
共催:積水メディカル株式会社


「健診・検診」に関するニュース
- 2025年02月25日
- 【国際女性デー】妊娠に関連する健康リスク 産後の検査が不十分 乳がん検診も 女性の「機会損失」は深刻
- 2025年02月17日
- 働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
- 2025年02月12日
-
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より - 2025年02月10日
- 【Web講演会を公開】毎年2月は「全国生活習慣病予防月間」2025年のテーマは「少酒~からだにやさしいお酒のたしなみ方」
- 2025年02月10日
- [高血圧・肥満・喫煙・糖尿病]は日本人の寿命を縮める要因 4つがあると健康寿命が10年短縮
- 2025年01月23日
- 高齢者の要介護化リスクを簡単な3つの体力テストで予測 体力を維持・向上するための保健指導や支援で活用
- 2025年01月14日
- 特定健診を受けた人は高血圧と糖尿病のリスクが低い 健診を受けることは予防対策として重要 29万人超を調査
- 2025年01月06日
-
【申込受付中】保健事業に関わる専門職・関係者必携
保健指導・健康事業用「教材・備品カタログ2025年版」 - 2024年12月24日
-
「2025年版保健指導ノート」刊行
~保健師など保健衛生に関わる方必携の手帳です~ - 2024年12月17日
-
子宮頸がん検診で横浜市が自治体初の「HPV検査」導入
70歳以上の精密検査無料化など、来年1月からがん対策強化へ