ニュース

緑茶カテキンが膵臓がんに対する新たな治療薬に がん幹細胞を阻害

 九州大学は、膵臓がん幹細胞の機能を阻害する化合物を発見したと発表した。この化合物は、緑茶カテキンの一種である「EGCG」の水酸基をメチル化したもの。膵臓がんに対する新たな治療薬となる可能性がある。
がん幹細胞を阻害する治療法を開発
 渋み、苦み、旨みなどの独特な味わいをもつ緑茶には、さまざまな生理活性のある天然物として注目を集めているカテキンの一種である「EGCG」(エピガロカテキンガレート)が含まれる。

 研究は、九州大学院農学研究院の立花宏文主幹教授らの研究グループが、東京工業大学田中浩士准教授の研究グループと共同で行ったもの。研究成果は、国際学術雑誌「Scientific Reports」に発表された。

 膵臓がんは治療が困難ながんとして知られており、5年生存率はわずか5%程度と非常に低いのが現状だ。

 抗がん剤の使用により一時は治ったように見えても、一部がまだ残っていたり、がんが既に別の場所に転移していたりして再び増殖し、再発してしまうことが多い。

 がんの転移と再発で重要な役割を担っているのはがん幹細胞だ。がん幹細胞は、抗がん剤に強い耐性をもつ。

 そのため、既存の治療薬ではこのがん幹細胞が残存してしまい、これが増殖・分化することで再発が起こると考えられている。

 がん幹細胞は転移にも関わっており、このがん幹細胞を有効・安全に阻害する治療法が求められている。
緑茶のEGCGがん幹細胞を抑制
 研究グループは過去の研究で、膵臓がんのがん幹細胞を抑制するために、がん細胞の成長を抑える因子である「FOXO3」が重要な役割を果たしていることを確かめた。細胞内で酵素の活性を調節する分子「cGMP」が、FOXO3の発現を低下させると、がん幹細胞は抑制される。

 さらに、緑茶の主要な成分であるEGCGが、がん細胞表面に発現する膜タンパク質で、抗がん作用を仲介する「67LR」を活性化してcGMP産生を誘導することを突き止めた。

 そこで、EGCGとcGMPを分解する酵素である「PDE3」を阻害する薬剤を膵臓のがん細胞に投与したところ、がん幹細胞機能の指標であるスフェロイド形成能が抑制されることが判明した。

 研究グループは、EGCGとPDE3阻害剤の併用効果が生体内でも発揮されるか確認するために、膵臓がんを移植したマウスにEGCGとPDE3阻害剤を投与した。

 その結果、原発巣の腫瘍成長が劇的に抑制された。その作用は、現在膵臓がんの治療薬として用いられている「ゲムシタビン」よりも強力だという。

 さらに、転移に対する効果を検討したところ、EGCGとPDE3阻害剤の併用は、膵臓がんの肝臓への転移も抑制することも明らかになった。
EGCGの化合物が強力なアゴニストに
 また、EGCG誘導体の中からスフェロイド形成能阻害活性にもとづくスクリーニングを行った。

 その結果、EGCGの5、7および4'位の水酸基がメチル化された化合物「No.19」が強力な作用を示した。また、膵臓がん幹細胞を移植したマウスにNo.19を投与したところ、EGCGとPDE3阻害剤の併用と同等以上にマウスの生存期間延長作用が認められたという。

 今回の研究により、67LRの活性化因子である緑茶カテキンEGCGの作用増強が膵臓がん幹細胞機能の阻害に有効である可能性が示された。

 67LRの強力なアゴニスト(作動薬)は膵臓がんに対する新たな治療薬となることが期待される、と研究グループは述べている。

九州大学院農学研究院
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2025年08月21日
歯の本数が働き世代の栄養摂取に影響 広島大学が新知見を報告
2025年07月07日
子供や若者の生活習慣行動とウェルビーイングの関連を調査 小学校の独自の取り組みを通じた共同研究を開始 立教大学と東京都昭島市
2025年06月27日
2023年度 特定健診の実施率は59.9%、保健指導は27.6%
過去最高を更新するが、目標値と依然大きく乖離【厚労省調査】
2025年06月17日
【厚労省】職域がん検診も市町村が一体管理へ
対策型検診の新項目はモデル事業で導入判断
2025年06月02日
肺がん検診ガイドライン19年ぶり改訂 重喫煙者に年1回の低線量CTを推奨【国立がん研究センター】
2025年05月20日
【調査報告】国民健康保険の保健事業を見直すロジックモデルを構築
―特定健診・特定保健指導を起点にアウトカムを可視化
2025年05月16日
高齢者がスマホなどのデジタル技術を利用すると認知症予防に 高齢者がネットを使うと健診の受診率も改善
2025年05月16日
【高血圧の日】運輸業はとく高血圧や肥満が多い 健康増進を推進し検査値が改善 二次健診者数も減少
2025年05月12日
メタボとロコモの深い関係を3万人超の健診データで解明 運動機能の低下は50代から進行 メタボとロコモの同時健診が必要
2025年05月01日
ホルモン分泌は年齢とともに変化 バランスが乱れると不調や病気が 肥満を引き起こすホルモンも【ホルモンを健康にする10の方法】
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,800名)
登録者の内訳(職種)
  • 医 師 3%
  • 保健師 47%
  • 看護師 11%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 20%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶