ニュース

糖尿病の予防 「抗酸化物質」が豊富な野菜や果物が効果的

 野菜や果物など、「抗酸化物質」が豊富に含まれる食品を十分に摂ると、2型糖尿病のリスクが低下することが、「フランス国立保健医学研究機構」(Inserm)の研究で明らかになった。この研究は、欧州糖尿病学会(EASD)の医学誌「ダイアベトロジア」に発表された。
活性酸素は2型糖尿病の原因のひとつ
 「抗酸化物質」とは、活性酸素の発生やその働きを抑制したり、活性酸素そのものを取り除く物質のことだ。「抗酸化ビタミン」や「ポリフェノール」などの種類がある。

 呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部は、活性酸素やフリーラジカルになり、これらは正常な細胞や遺伝子を攻撃(酸化)してしまう。活性酸素が増えると血管内皮に障害が起き、動脈硬化が進行しやすくなり、心筋梗塞や脳卒中、がん、炎症の原因になる。

 体には本来、活性酸素を抑える働きが備わっているが、年齢を重ねるとともにこの働きは低下していく。ストレス、たばこ、アルコールの飲み過ぎ、激しい運動、紫外線なども活性酸素が増える原因になる。

 2型糖尿病の原因のひとつとして考えられているのは、細胞内の酸化反応が原因で炎症を引き起こされることだ。そのためインスリンを分泌する膵臓のβ細胞に傷害がもたらされる。これらの細胞が適切に機能できるように障害を取り除くことが、血糖値を正常に維持するために重要となる。

野菜や果物で抗酸化物質を補給
 野菜や果物には抗酸化物質が豊富に含まれているので、十分に摂取したい食品だ。1日に野菜を350g、果物を200g摂取することが推奨されている。日本の国民健康・栄養調査では、この量の野菜や果物を摂ると、カルシウム・カリウム・ビタミンC・食物繊維などの栄養素を十分に摂れることが分かった。

 「抗酸化ビタミン」は、活性酸素の働きを抑える作用を持つビタミンで、「ビタミンA」「ビタミンC」「ビタミンE」などがある。このうち野菜や果物に含まれるビタミンAは「β-カロテン」で、活性酵素の発生を抑え、取り除く働きをする。

 「ポリフェノール」も抗酸化物質として注目されている。ポリフェノールには、ブルーベリーなどに含まれる「アントシアニン」、大豆に含まれる「イソフラボン」、赤ワインに含まれる「レスベラトロール」、緑茶に含まれる「カテキン」、紅茶などに含まれる「テアフラビン」、コーヒーに含まれる「クロロゲン酸」、そばに含まれる「ルチン」などがある。
抗酸化物質を摂ると糖尿病リスクが27%低下
 野菜や果物など、「抗酸化物質」が豊富に含まれる食品を十分に摂ると、2型糖尿病のリスクが低下することが、「フランス国立保健医学研究機構」(Inserm)の研究で明らかになった。この研究は、欧州糖尿病学会(EASD)の医学誌「ダイアベトロジア」に発表された。

 野菜や果物を十分に摂っていると、心筋梗塞や脳卒中のがんなどの発症リスクが低下することが報告されており、これらの食物に含まれる抗酸化物質が作用していると考えられているが、2型糖尿病のリスクも低下できるかは分かっていない。

 そこで「フランス国立保健医学研究機構」(Inserm)の研究チームは、フランス女性を対象としたコホート研究である「E3N-EPIC」に参加した6万4,223人の女性(平均年齢 52歳)を対象に、1993年~2008年にかけて15年間追跡して調査した。調査開始時に参加者は2型糖尿病や心血管疾患を発症していなかったが、期間中に1,751人が2型糖尿病を発症した。

 参加者に食事に関するアンケート調査を行い、200種類の食品の摂取について調査した。さらに、それらの食品に含まれる抗酸化物質の量をスコア計算し、「抗酸化物質インデックス」を作成し、参加者がどれだけ抗酸化物質を摂取しているかを解析し、2型糖尿病の発症との関連を調べた。

 その結果、抗酸化物質を多く摂取しているグループでは、少なく摂取しているグループに比べ、2型糖尿病のリスクが最大で27%低下したことが明らかになった。解析したところ、抗酸化物質を1日に270mg摂取していると、2型糖尿病のリスクは低下することが分かった。これ以上の量を摂取しても、糖尿病リスクには影響しないという。
抗酸化物質がインスリン抵抗性を改善?
 調査では、抗酸化物質のスコアを上昇させている主な食品は、野菜や果物、紅茶、コーヒー、赤ワインだった。野菜や果物に加えて、コーヒーや紅茶、ブルーベリーやストローベリー、クルミやヘーゼルナッツなどのナッツ類、赤ワインなど、抗酸化物質が特に多く含まれる食品を意識して食べることが有用である可能性があるという。

 「それぞれの栄養素がどのように2型糖尿病のリスクに影響をもたらすかを解明するのは難しいのですが、抗酸化物質が豊富に含まれる食品を摂ると良い効果を得られることは明らかです」と、フランス国立衛生医学研究所(INSERM)のガイ ファグラジィ氏は言う。

 呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部は、活性酸素や「フリーラジカル」になる。フリーラジカルは、さまざまな生体成分と反応し、タンパク質を変性させたり、細胞膜の脂質成分などと反応すると過酸化脂質を生じる。結果として、動脈硬化・老化・がんなどの多くの疾患をもたらす原因となる。

 「食物から摂取する抗酸化物質がフリーラジカルの影響を相殺していると考えられます。これに加えて、抗酸化物質は血糖を下げるインスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性の改善にも役立っている可能性があります。今後の研究で解明する必要があります」と述べている。

Consumption of antioxidant-rich foods is associated with a lower risk of type 2 diabetes, study shows(Diabetologia 2017年11月7日)
Dietary antioxidant capacity and risk of type 2 diabetes in the large prospective E3N-EPIC cohort(Diabetologia 2017年11月9日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「栄養」に関するニュース

2025年02月25日
ストレスは「脂肪肝」のリスクを高める 肥満やメタボとも関連 孤独や社会的孤立も高リスク
2025年02月25日
緑茶を飲むと脂肪肝リスクが軽減 緑茶が脂肪燃焼を高める? 茶カテキンは新型コロナの予防にも役立つ可能性が
2025年02月17日
働く中高年世代の全年齢でBMIが増加 日本でも肥満者は今後も増加 協会けんぽの815万人のデータを解析
2025年02月17日
肥満やメタボの人に「不規則な生活」はなぜNG? 概日リズムが乱れて食べすぎに 太陽光を浴びて体内時計をリセット
2025年02月12日
肥満・メタボの割合が高いのは「建設業」 業態で健康状態に大きな差が
健保連「業態別にみた健康状態の調査分析」より
2025年02月10日
緑茶やコーヒーを飲む習慣は認知症リスクの低下と関連 朝にコーヒーを飲むと心血管疾患リスクも低下
2025年02月10日
[高血圧・肥満・喫煙・糖尿病]は日本人の寿命を縮める要因 4つがあると健康寿命が10年短縮
2025年02月03日
良い睡眠は肥満や高血圧のリスクを減らす 日本人の睡眠は足りていない 3つの方法で改善
2025年01月23日
大腸がんが50歳未満の若い人でも増加 肥満のある人は大腸がんリスクが高い 予防に役立つ3つの食品とは?
2025年01月23日
高齢者の要介護化リスクを簡単な3つの体力テストで予測 体力を維持・向上するための保健指導や支援で活用
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶