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「検体測定室」でのHbA1cチェックは糖尿病対策として効果的
2018年04月25日

薬局に開設された「ゆびさきセルフ測定室」(検体測定室)で、指先HbA1cチェックを行うと、1人あたり5万2,722円を削減できる費用効果があり、質調整生存年も延伸することが、筑波大学の研究チームによって明らかにされた。
検体測定室でのHbA1cチェックは、医療経済的価値が高く、将来の医療費の削減にもつながると期待されるという。
研究は、筑波大学医学医療系内分泌代謝・糖尿病内科の矢作直也准教授と、同保健医療政策学・医療経済学の近藤正英教授、庄野あい子非常勤講師(明治薬科大学講師)らの共同研究チームによるもの。成果は、米国糖尿病学会(ADA)発行の学術誌「Diabetes Care」に発表された。
検体測定室でのHbA1cチェックは、医療経済的価値が高く、将来の医療費の削減にもつながると期待されるという。
「ゆびさきセルフ測定室」が全国に拡大
日本の糖尿病有病者と予備群の合計は2,000万人に上る。糖尿病の対策として、血液検査による早期発見と早期からの治療の開始はとりわけ重要だ。しかし、糖尿病は初期には自覚症状に乏しいため、検査を受けなければみつからず、重症化してから発見されることも少なくない。
そこで研究チームは、検査へのハードルを下げるべく、薬局やドラッグストアで自己穿刺検査の機会を提供し、近隣医療機関と緊密に連携しながら、糖尿病の早期発見・早期治療へつなげていく画期的な試みとして、2010年から「糖尿病診断アクセス革命」プロジェクトを行っている。
その研究成果などを受けて、2014年3月に厚生労働省より臨床検査技師法にもとづく告示の改正が公布され、自ら採取した検体について診療の用に供さない生化学的検査を行う施設が新たに「検体測定室」として認められている。
「ゆびさきセルフ測定室」(検体測定室)とは、自己穿刺により指先から採取したわずかな血液を用い、糖尿病や脂質異常症などに関係のある項目を検査できるスペース。全国各地で薬局やドラッグストアなどを中心に開設が進み、2018年2月末時点での検体測定室数は1,586ヵ所となっている。
なお、全国各地の検体測定室の所在を、「検体測定室連携協議会」(座長:矢作直也准教授)の運営するホームページ「ゆびさきナビ」で確認できる。
薬局での指先HbA1cチェックの医療経済性を解析
研究チームはこのほど、薬局での指先HbA1cチェックによる糖尿病早期発見がもたらす医療経済性についてモデル解析を行った。
具体的には、費用効果分析の手法を用いて、(a)特定健診等の健康診査や、他疾患治療中に受ける診療所等での随時検査を通してのみHbA1cチェックが可能であった状態と、(b)従来の方法に加えて検体測定室でのHbA1cチェックが可能である状態を比較した。
費用対効果の推定には、「ディシジョン・ツリー」(すべての取りうる選択肢や起こりうるシナリオを樹形図の形で洗い出し、それぞれの選択肢の期待値を比較検討する手法)とマルコフモデル(時系列的に変動するデータを確率的なモデルで表現し、予想するモデル)を併用した。
また推定を行うにあたり、東京都足立区において2010年から5年間に渡って10ヵ所の薬局で指先HbA1cチェックによる糖尿病スクリーニングを行った「糖尿病診断アクセス革命」プロジェクトのデータのうち、2014年集計時点の2,024人分に上るデータを活用した。
検体測定室が普及すれば糖尿病の早期発見が進む
その結果、40~74歳の集団1人あたりの、検体測定室でのHbA1cチェックの増分費用は、マイナス5万2,722円(費用減)であり、質調整生存年(健康状態・生活の質を加味して計算した生存期間)の増分効果(健康寿命の延伸)は、+0.0203QALY(効果増)だった。
すなわち、(b)検体測定室でのHbA1cチェックができる機会が加わった状態は、(a)従来のスクリーニングのみの場合と比較して、費用削減的であり、検体測定室の普及による将来の医療費の減少が示唆された
なお、費用効果分析の費用と医療費とは原則として異なる指標なので、直接的な換算ついては今後の研究で、明らかにしていく予定だという。
このように、糖尿病と公衆衛生の分野が協働し、検体測定室の具体的な医療経済的価値がはじめて明らかになった。
「今回の研究は、このプログラムを公的補助事業として検討する地方自治体の政策立案者にとっても有用な指針となります。検体測定室が効果的に普及することにより、糖尿病の早期発見が進み、医療費の削減と健康寿命の延伸の双方に役立つことが期待されます」と、矢作准教授は述べている。
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筑波大学医学医療系内分泌代謝・糖尿病内科
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