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「認知症」を恐れる中高年が大多数 政府の施策は「知らない」 日医総研

 日本医師会総合政策研究機構(日医総研)は、認知症などについての意識調査の結果を公表した。
 認知症を恐れる中高年層は多く、国の公的保険制度の行く末を案じ、不安ばかりが先行している現状が浮き彫りになった。
 日医総研は「高齢者の不安解消を政策の最優先事項とすべき」との提案を行っている。
66%が認知症は「早期に発見することが大切」
 日医総研の公表した調査は、「認知症介護の経験」と「かかりつけ医の存在」に焦点を当てたもの。太陽生命保険が実施した医療・介護などに関するアンケートのデータを分析した。調査は40~70歳代を対象に、2017年3~4月に実施、1,557人(平均年齢 61.6歳)から有効回答を得た。

 中高年層が抱える心配事や悩み(複数回答)については、「体力が衰えてきた」(50.9%)、「認知症になるのが怖い」(37.6%)、「自分の健康のこと」(32.7%)、「ストレスや精神的な疲れがある」(31.1%)、「心筋梗塞や脳卒中になるのが怖い」(26.5%)が多かった。

 認知症患者の介護経験については、「介護経験はないが、過去に身近に接したことがある」(19.1%)、「過去に介護したことがある」(13.4%)、「介護経験はないが、身近に接している」(10.9%)、「現在介護中」(6.5%)と、約半数が認知症患者と接した経験があった。

 「認知症についての考え」(複数回答)については、「早期に発見することが大切」(66.2%)との回答がもっとも多く、以下は「認知症は治療によって症状の進行を抑えたり、改善することができる」(59.3%)、「認知症になっても、家族や周囲の人の理解や支えがあれば、これまで暮らしてきた地域で暮らすことができる」(47.0%)と続く。「ふだんの心がけで予防できる」と考えている割合は29.9%だった。

関連情報
83%が「現在の介護保険制度がどうなるか心配」
 「認知症の予防で心がけていること」(複数回答)については、「人との付き合いを大事にしている」(47.2%)、「読み書きや計算など頭を使うようにしている」(42.3%)、「色々な事に興味や関心を持つようにしている」(41.9%)が4割を超えていた。一方で、「地域活動や社会参加活動を行っている」(12.0%)や「お酒を飲まない/なるべく控えている」(25.3%)は3割を下回った。

 「認知症について関心のあること」(複数回答)については、「予防に効果的な方法」(57.8%)、「兆候を早期に発見する方法」(53.7%)が5割を超え、「治療に関する情報」(33.1%)が続く。治療や介護など発症後に関わる情報よりも、予防法や早期発見の方法への関心が高い。

 認知症対策に関わる主な政策キーワードの中で、「新オレンジプラン」の認知割合は5.8%。このうち「内容まで知っている」は1.2%、「何となく知っている」は4.6%にとどまった。

 また認知症全般に関わる不安・心配事では、費用やサービス、相談先の心配より「現在の介護保険制度がどうなるか心配だ」との回答割合が上回り、82.9%に上った。日医総研では「自身の事情への不安よりも、公の制度への憂いが上回るというのは、大変興味深い事象と言える」としている。
 かかりつけ医の有無については、29.7%が「いない」と答えた。「いない」と回答した人に対し、かかりつけ医を持つ必要性を尋ねたところ、「必要性を感じる」(15.1%)と「まあ必要性を感じる」(46.2%)を合わせた6割超が、かかりつけ医を持つ必要性を感じていた。
認知症など「高齢者の健康不安解消を最優先に」
 「政府は、認知症対策の国家戦略を掲げ、法に定める地域医療計画の中で認知症対策についても都道府県ごとに策定する枠組みをすでに整備している。しかし、残念ながらそれらの施策は、今ひとつ人々に認知されていない」と、ワーキングペーパーでは分析。

 「認知症になることを恐れる中高年層は多く、人々は認知症になったとき自分が置かれる状況についてはもちろんだが、むしろ国の公的保険制度の行く末を案じており、ともすれば人々の不安ばかりが先行している」としている。

 日医総研は、分析結果をふまえて、認知症をはじめとする高齢者の健康に関わる人々の不安解消を政策の最優先事項とすべきとの提案を行っている。

 具体的には、(1)政府が掲げる施策の周知そして地域住民のさらなる巻き込み、(2)公的保険制度の財政的な持続可能性に関わるネガティブキャンペーンの自重、(3)かかりつけ医を持つことの有用性に関するさらなる調査研究(特に、医学的視点のみならず、社会科学的な視点からの研究もなされるべき)――の3点が重要だという。

日本医師会総合政策研究機構
[Terahata]
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