ニュース
「認知症」を恐れる中高年が大多数 政府の施策は「知らない」 日医総研
2018年08月07日

日本医師会総合政策研究機構(日医総研)は、認知症などについての意識調査の結果を公表した。
認知症を恐れる中高年層は多く、国の公的保険制度の行く末を案じ、不安ばかりが先行している現状が浮き彫りになった。
日医総研は「高齢者の不安解消を政策の最優先事項とすべき」との提案を行っている。
認知症を恐れる中高年層は多く、国の公的保険制度の行く末を案じ、不安ばかりが先行している現状が浮き彫りになった。
日医総研は「高齢者の不安解消を政策の最優先事項とすべき」との提案を行っている。
66%が認知症は「早期に発見することが大切」
日医総研の公表した調査は、「認知症介護の経験」と「かかりつけ医の存在」に焦点を当てたもの。太陽生命保険が実施した医療・介護などに関するアンケートのデータを分析した。調査は40~70歳代を対象に、2017年3~4月に実施、1,557人(平均年齢 61.6歳)から有効回答を得た。
中高年層が抱える心配事や悩み(複数回答)については、「体力が衰えてきた」(50.9%)、「認知症になるのが怖い」(37.6%)、「自分の健康のこと」(32.7%)、「ストレスや精神的な疲れがある」(31.1%)、「心筋梗塞や脳卒中になるのが怖い」(26.5%)が多かった。
認知症患者の介護経験については、「介護経験はないが、過去に身近に接したことがある」(19.1%)、「過去に介護したことがある」(13.4%)、「介護経験はないが、身近に接している」(10.9%)、「現在介護中」(6.5%)と、約半数が認知症患者と接した経験があった。
「認知症についての考え」(複数回答)については、「早期に発見することが大切」(66.2%)との回答がもっとも多く、以下は「認知症は治療によって症状の進行を抑えたり、改善することができる」(59.3%)、「認知症になっても、家族や周囲の人の理解や支えがあれば、これまで暮らしてきた地域で暮らすことができる」(47.0%)と続く。「ふだんの心がけで予防できる」と考えている割合は29.9%だった。
関連情報

83%が「現在の介護保険制度がどうなるか心配」
「認知症の予防で心がけていること」(複数回答)については、「人との付き合いを大事にしている」(47.2%)、「読み書きや計算など頭を使うようにしている」(42.3%)、「色々な事に興味や関心を持つようにしている」(41.9%)が4割を超えていた。一方で、「地域活動や社会参加活動を行っている」(12.0%)や「お酒を飲まない/なるべく控えている」(25.3%)は3割を下回った。
「認知症について関心のあること」(複数回答)については、「予防に効果的な方法」(57.8%)、「兆候を早期に発見する方法」(53.7%)が5割を超え、「治療に関する情報」(33.1%)が続く。治療や介護など発症後に関わる情報よりも、予防法や早期発見の方法への関心が高い。
認知症対策に関わる主な政策キーワードの中で、「新オレンジプラン」の認知割合は5.8%。このうち「内容まで知っている」は1.2%、「何となく知っている」は4.6%にとどまった。
また認知症全般に関わる不安・心配事では、費用やサービス、相談先の心配より「現在の介護保険制度がどうなるか心配だ」との回答割合が上回り、82.9%に上った。日医総研では「自身の事情への不安よりも、公の制度への憂いが上回るというのは、大変興味深い事象と言える」としている。

認知症など「高齢者の健康不安解消を最優先に」
「政府は、認知症対策の国家戦略を掲げ、法に定める地域医療計画の中で認知症対策についても都道府県ごとに策定する枠組みをすでに整備している。しかし、残念ながらそれらの施策は、今ひとつ人々に認知されていない」と、ワーキングペーパーでは分析。
「認知症になることを恐れる中高年層は多く、人々は認知症になったとき自分が置かれる状況についてはもちろんだが、むしろ国の公的保険制度の行く末を案じており、ともすれば人々の不安ばかりが先行している」としている。
日医総研は、分析結果をふまえて、認知症をはじめとする高齢者の健康に関わる人々の不安解消を政策の最優先事項とすべきとの提案を行っている。
具体的には、(1)政府が掲げる施策の周知そして地域住民のさらなる巻き込み、(2)公的保険制度の財政的な持続可能性に関わるネガティブキャンペーンの自重、(3)かかりつけ医を持つことの有用性に関するさらなる調査研究(特に、医学的視点のみならず、社会科学的な視点からの研究もなされるべき)――の3点が重要だという。
日本医師会総合政策研究機構
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「健診・検診」に関するニュース
- 2025年06月02日
- 肺がん検診ガイドライン19年ぶり改訂 重喫煙者に年1回の低線量CTを推奨【国立がん研究センター】
- 2025年05月20日
-
【調査報告】国民健康保険の保健事業を見直すロジックモデルを構築
―特定健診・特定保健指導を起点にアウトカムを可視化 - 2025年05月16日
- 高齢者がスマホなどのデジタル技術を利用すると認知症予防に 高齢者がネットを使うと健診の受診率も改善
- 2025年05月16日
- 【高血圧の日】運輸業はとく高血圧や肥満が多い 健康増進を推進し検査値が改善 二次健診者数も減少
- 2025年05月12日
- メタボとロコモの深い関係を3万人超の健診データで解明 運動機能の低下は50代から進行 メタボとロコモの同時健診が必要
- 2025年05月01日
- ホルモン分泌は年齢とともに変化 バランスが乱れると不調や病気が 肥満を引き起こすホルモンも【ホルモンを健康にする10の方法】
- 2025年05月01日
- 【デジタル技術を活用した血圧管理】産業保健・地域保健・健診の保健指導などでの活用を期待 日本高血圧学会
- 2025年04月17日
- 【検討会報告】保健師の未来像を2類型で提示―厚労省、2040年の地域保健を見据え議論
- 2025年04月14日
- 女性の健康のための検査・検診 日本の女性は知識不足 半数超の女性が「学校教育は不十分」と実感 「子宮の日」に調査
- 2025年03月03日
- ウォーキングなどの運動で肥満や高血圧など19種類の慢性疾患のリスクを減少 わずか5分の運動で認知症も予防