ニュース
特定保健指導(積極的支援)モデル事業の実施事例を紹介―厚労省の検討会
2019年06月07日
2018年度からの第3期特定健康診査等実施計画期間では、特定保健指導(積極的支援)の実施において、保健指導の実施量による評価に代えて、保健指導による腹囲・体重の改善状況で評価する「モデル事業」を導入できるようになった。以前より支援内容が緩和されたことで、保険者の創意工夫で、対象者それぞれの事情や状況に応じた支援方法が選択・実施できるようになっている。
具体的にはスポーツジムなどでの指導を取り入れた例や、アプリを活用した例などが考えられ、このほど開かれた「第34回保険者による健診・保健指導等に関する検討会」では実際の事例が紹介された。
成果を評価するモデルも選択可能に
特定保健指導(積極的支援)は、従来は保健指導の専門的知識や技術を持つ医師や保健師、管理栄養士などが面談、電話、メールなどで支援を行い、支援の投入量に応じてポイントを付与する形で介入量を評価する方法のみだった。しかし限られた人的資源や保険者の厳しい財政状況では実施が困難な事例も多かった。
そのため保険者が成果を出せる方法を企画して実施し、支援の投入量(ポイント)ではなく、3ヵ月間の介入の成果(腹囲2cm以上、体重2kg以上の改善)を評価するモデル実施も選択できるようになった。
同検討会で示された事例によると、さいたま市の場合、積極的支援実施率は平成26年度から低下し、平成29年度は11.6%となっていた。
そこで実施率の上昇などを目的にモデル実施を導入。時間に制約がある人にはメールや電話での支援、運動重点型で支援する人には契約しているスポーツクラブの利用や保健センターでの運動教室への参加、ICTを活用した栄養重点型の支援といった4パターンを用意した。
連携で実施率向上へ
一方、日本航空健康保険組合は、被保険者の2/3がシフト勤務に従事。初回面談の実施が難しく、実施率の向上が課題だった。そのためICTを活用した遠隔面談や継続支援が可能なモデル実施事業者へ委託し、実施率の向上を目指した。
具体的には、
・毎食の食事投稿に対して星評価とスタンプ付与を行ったり、食事内容に対するアドバイスをしたりする
・アプリによる歩数記録と歩数増加のアドバイスをする
・月1回のメール支援を行う
という3社に委託した。
ほかにも阿波銀行健康保険組合の例では、既存の保険事業の活用と、健康保険組合の管理栄養士が新たに企画したものを合わせて12種類ものコースを用意。多様なメニューで対象者が自分に合ったメニューを選び、モチベーションアップと成果につなげようとした。
支援期間は「3ヵ月」 新たな課題も
また遠州鉄道健康保険組合では「運動」に着目し、スポーツクラブの利用補助(利用者負担なし)で身体を動かす機会を提供。週2回、スポーツクラブに通ってプログラムを消化してもらうこととし、継続できるよう励ましのメールなどで対象者を支援した。
それぞれの状況に応じてモデル実施は展開されているが、支援期間が3ヵ月であることから「次の健診まで時間があいてしまう」という課題や、「参加者が集まらない」といった苦労も報告されている。これらを踏まえ、厚生労働省は今後もモデル実施の効果検証を進めていく予定。
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「健診・検診」に関するニュース
- 2023年08月09日
-
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より - 2023年08月08日
- 若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
- 2023年07月28日
- 2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
- 2023年07月24日
- 標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
- 2023年07月11日
- 自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
- 2023年06月20日
- 肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
- 2023年06月12日
- 自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
- 2023年06月05日
- 要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
- 2023年05月19日
- 令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
- 2023年05月18日
-
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-