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がん5年生存率が66.4%に改善 乳がんは92.2% がん治療も個別化が重要 国立がん研究センター

 全国のがん患者の5年生存率が66.4%になり、前回調査の66.1%から改善したと国立がん研究センターが発表した。センターのサイトでは病院ごとのデータを見ることもできる。
科学的根拠に基づくがん情報を提供
 国立がん研究センターは、専門的ながん医療を行う全国のがん診療連携拠点病院などから収集した院内がん情報を用いて、2018年の1年間に診断されたがん患者の診療情報(2018年全国集計)について報告書をまとめ公開を開始した。

 2018年に閣議決定された第3期がん対策推進基本計画では、「国民が必要な時に、自分に合った正しい情報を入手し、適切に治療や生活等に関する選択ができるよう、科学的根拠に基づく情報を迅速に提供するための体制を整備する」とされた。

 これを受けて、国立がん研究センターは、前回から引き続きがん診療連携拠点病院等のデータを用い、5年生存率、およびより早い段階の3年生存率集計を行った。

 対象となったのは、2013年1月1日~12月31日までの1年間にがんと診断された患者。

 今回は、胃、大腸、肝臓、肺、乳房、食道、膵臓、子宮頸部、子宮体部、前立腺、膀胱、喉頭、胆嚢、腎、腎盂尿管の15部位について、部位・病期別等に生存率を集計した。
がんの5年後生存率は66.4%に改善 乳がんは92.2%
 対象となったのは、2011年までの2年間に全国のがん拠点病院など318の施設でがんと診断されたおよそ65万人。

 その結果、がん医療の効果をはかる指標とされる5年後の相対生存率は66.4%となり、前回の66.1%から改善した。

 性別にみると、男性が58.2%、女性が41.8%となり、男性がやや高い割合。診断時の年齢は、70歳代がもっとも多く、70歳代、80歳代以上を合わせると約48%の割合だった。

 がんを種類別に、生存率が高い順にみると次の通り――。
(1)前立腺がん 98.8%
(2)女性の乳がん 92.2%
(3)子宮体がん 82.2%
(4)咽頭がん 80.6%
(5)腎臓がん 80.1%
(6)子宮頸がん 75.0%
(7)大腸がん 72.6%
(8)胃がん 71.4%
(9)ぼうこうがん 68.4%

 一方、生存率が低い順にみると次の通り――。
(1)膵臓がん 9.8%
(2)胆のうがん 29.3%
(3)肝臓がん 40.4%
(4)肺がん 41.4%
(5)食道がん 45.7%
(6)腎盂尿管がん 49.0%
乳がんは若い世代にも多い  今回の集計で、5種類(胃がん、大腸がん、肝臓がん、肺がん、乳がん)については、はじめてがんの種類とステージごとの5年生存率を患者の年代別に示した。いずれも高齢者は若い世代より生存率が低い傾向がみられる。

 女性の乳がんは、I期、II期が多く、いずれも生存率は高く、また前回に比べ改善している。他の部位と比較して、比較的若い世代の割合が多くなっている。

 年齢は大きな要因で、たとえば乳がんII期の5年実測生存率をみると、全体では91.4%だが、40歳代では95.9%なのに対して70歳以上では90%を下まわっている。

 他の部位においても、今後10年生存率を算出していく予定だが、とくに乳がんは若い世代が多いことを考え、より長期的な視野でみていくことが重要としている。
 前立腺がんは、相対生存率がほぼ100%となっている。病期別にみても、I期、II期、III期ともに相対生存率は100%を超えている。この結果をみると、前立腺がんの患者と日本人全体を比較したとき、5年後に生存している割合はほとんど変わりがないと考えられる。
がん治療も個別化が重要
 5種類のがんについては、病院ごとにステージ別の生存率をまとめたデータも出され、国立がん研究センターのウェブサイト「がん情報サービス」で確認できる。

 自治体や病院ごとに患者の年齢や病状の構成が異なるため、医療機関の治療成績を示すものではなく、単純には比較できないものの、医療機関の特徴を知る際の参考になるとしている。

 「国立がん研究センターのウェブサイトでは、がん治療についての最新の情報を公開しています。数字だけを見て不安を感じる患者さんも少なくありませんが、生存率を見るときには、年齢を含め患者さんの個別性を考慮することが必要です。全国の拠点病院にある相談支援センターで相談するなどして、最新の治療について知ってほしい」と、同センターでは述べている。

国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス」

がん診療連携拠点病院等院内がん登録生存率集計
2013年の3年生存率および2010~2011年の5年生存率集計が公開されている。
[Terahata]
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