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年末年始は「夜ふかし・朝寝坊」しない 「体内時計」で体のリズムを調整 6つの対策で生活を朝型に

 休日が続いたときや、土曜日や日曜日に、ゆっくり休んだはずなのに、勤務日に体がだるいと感じることはないだろうか? それは「体内時計」が乱れているからかもしれない。
 生活が「夜型」になると、体調不良だけでなく、肥満や2型糖尿病、うつ病などの発症リスクも上昇する。解消するために日常生活で工夫することが大切だ。
休日の夜ふかしや朝寝坊が「概日リズム」の乱れに
 仕事のある平日は定刻に起きていても、休日に遅くまで寝ていると、疲れが思ったようにとれないという経験はないだろうか? 睡眠習慣が乱れると、「体内時計」が狂ってしまうおそれがある。

 ヒトの体の生命機能(睡眠、活動、ホルモン分泌、体温、免疫機能、消化機能など)は約24時間のリズムをもっている。こうした全身のさまざまなリズムは、「概日リズム(サーカディアン リズム)」と呼ばれている。

 概日リズムの異常は、時差ボケや睡眠障害などのリズム障害を引き起こすだけでなく、肥満やメタボ、2型糖尿病、がん、うつ病などのメンタルヘルスとも関連していると考えられている。

 概日リズムは、脳の視床下部にあるにある「視交叉上核(SCN)」によってコントロールされている。

 「SCNは、いわばオーケストラの指揮者のように、約24時間の周期の体内時計を調整しています。SCNが不調になると、こうしたリズムが乱れ、規則正しい睡眠や食事などのリズムも失われてしまいます」と、トロント大学のジェサ ギャンブル氏は言う。

 ギャンブル氏は概日リズムに関する研究しており、概日リズムは日の光の影響を受けやすく、日照時間の変化に対応して体内時計が調整されていることを解明してきた。

 気分の変調をきたし、うつ病のような症症が起こる「季節性感情障害(季節性うつ病)」は、日照時間が短い冬に起こりやすい。概日リズムにともない増減するメラトニンというホルモンが関わっていると考えられている。
概日リズムの乱れは糖尿病のリスクを高める
 休日はいつもより遅くまで寝ているなど、平日と休日で生活パターンに時差があると、平日に時差症状が出る場合がある。不規則な生活などが原因で、体内時計と生活時間との間にずれが生じるのが「社会的時差ぼけ(ソーシャル ジェットラグ)」だ。

 休日に夜ふかしや朝寝坊をして就床時刻や起床時刻がずれると、それをきっかけに体内時計が乱れやすくなる。週末や休日だけの生活リズムの乱れと軽く考えがちだが、体への影響は決して少なくない。

 概日リズムの乱れは2型糖尿病のリスクを高めることが、米国のメイヨークリニックの研究でも明らかになっている。

 インスリンを分泌する膵臓のβ細胞、糖を取り込む骨格筋、糖を産生する肝臓の細胞などは概日リズムの影響を受け、協調し合うことで血糖値を一定に保つよう機能している。体内時計が乱れると、これらの器官でインスリン分泌とインスリン作用がうまくいかなくなる。

 「概日リズムの乱れが、2型糖尿病や肥満、メタボ、睡眠障害などの新たな環境リスク要因である可能性が強いのです。概日リズムが破壊されると、血糖値を一定に保つ体の恒常性が乱れる原因になります」と、メイヨークリニック生理・生物医学部のアレクセイ マトヴェイエンコ氏は言う。
体内時計を調整するための6ヵ条
 過去の研究では、社会的時差ぼけによって昼間の眠気が起こり、頭の働きの低下や抑うつを増やし、仕事のパフォーマンスも低下することも報告されている。

 「現代人の働き方が睡眠や健康にどういった影響を及ぼすのかを、社会全体で考える必要があります」と、米国睡眠医学会では述べている。

 社会的時差ぼけを防ぐために、概日リズム(体内時計)に狂いが生じないように生活スタイルを工夫することが必要だ。

 同学会によると、次のことを実行すると体内時計のずれを解消しやすいという――。

1 朝は同じ時刻に起きる

 規則正しい生活によって、体内時計がホルモンの分泌や生理的な活動を調節し、睡眠に備えて準備してくれる。この準備は自分の意志だけではコントロールできない。

 多くの人は、日照時間が短く暗い秋冬の朝は、起きるのがつらい。太陽光が乏しいこの季節は、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌時間が延長しやすいと考えられている。メラトニンは概日リズムに影響する。

 メラトニンは明るい光によって分泌が止まる。また、起床時間が毎日ばらばらだとメラトニンの分泌する時間がずれてしまう。

 体内時計を整え、体を睡眠に導くために、朝は毎日同じ時刻に起床し、日光を浴びることが大切だ。

2 朝食をきちんと食べ、夜遅くに食事をしない

 朝食は体内時計を正常化するために、もっとも重要な食事だ。生活が「夜型」になり、朝食を抜くと、体内時計が乱れて、肥満や2型糖尿病などのリスクが上昇するという研究が発表されている。

 体内時計を整えるために規則正しい食事が望ましい。そのために、夜遅い時間に食事しないことも大切。

 食事で摂取した食べ物が消化・吸収されるまでに2~3時間が必要となる。夜遅い時間に夕食をとると、胃の消化活動が活発になり、大脳皮質や肝臓の働きが活性化し、結果として睡眠が妨げられる。

3 適度な運動が良い睡眠をもたらす

 日中に体をアクティブに動かし運動する習慣のある人は、質の良い睡眠を得られるという調査結果がある。1日30分のウォーキングなどの運動を習慣化すれば、睡眠の質を高められるだけでなく、2型糖尿病や肥満の対策・予防にもつながる。

4 就寝1〜2時間前に入浴して深部体温を上げる

 寝る少し前に体の奥の体温である「深部体温」をいったん上げると、その後に下がって、眠りに入りやすくなる。入浴には加温効果があり、運動と同じように体温を一時的に上げる。就寝1~2時間前に入浴すると深部体温が上がり、その後に睡眠に入りやすくなる。

5 光で体内時計を整える

 朝に太陽光を浴びると体内時計が24時間周期にリセットされる。起きたらまずカーテンを開けて、自然の光を部屋の中に取り込むと効果的だ。

 反対に夜に強い光を浴びると睡眠が妨げられる。夜の光には体内時計を遅らせる作用があり、時刻が遅くなるほどその力は強まる。照度が低い家庭照明であっても、長時間浴びると体内時計が乱れる原因になる。

6 寝る前にスマートフォンを使わない

 スマートフォンやタブレット端末、パソコンの画面にも注意が必要だ。スマートフォンなどの画面に含まれるバックライトには波長の短いブルーライトが含まれており、体内時計に影響を与えやすい。

 スマートフォンは目のすぐ近くで操作するので特に影響が強い。寝る前にはスマートフォンを操作しないようにしよう。

An emerging connection between circadian rhythm disruption and type 2 diabetes mellitus(メイヨークリニック 2018年5月22日)
Timing is Everything: Modern life is 24-7, but there may be negative consequences to defying our body's internal clock(トロント大学)
Delayed first active-phase meal, a breakfast-skipping model, led to increased body weight and shifted the circadian oscillation of the hepatic clock and lipid metabolism-related genes in rats fed a high-fat diet(PLOS ONE 2018年10月31日)
New clinical guideline to help clinicians treat circadian rhythm sleep-wake disorders(米国睡眠医学会)
[Terahata]
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