ニュース
世界の若者の5人に4人が運動不足 とくに女子で深刻 WHOが警鐘「もっと運動を」
2020年01月07日
世界保健機関(WHO)は、世界の若者の5人に4人が運動不足だという146ヵ国を対象とした調査結果をまとめた。若い頃の運動不足は、将来に肥満や2型糖尿病のリスクを高める。
とくに若い女性の運動不足は深刻で、運動習慣を身に付けることを促す緊急の対策が必要だと、警鐘を鳴らしている。
とくに若い女性の運動不足は深刻で、運動習慣を身に付けることを促す緊急の対策が必要だと、警鐘を鳴らしている。
世界の若者の81%が運動不足 女子では85%
世界保健機関(WHO)は、世界の若者の運動習慣についてまとめた初の調査報告を発表した。それによると、世界中の若者の多くが運動不足の傾向があり、年齢を重ねてから肥満やメタボ、2型糖尿病を発症するリスクが高い。
WHOの2016年の調査によると、若者の運動不足は深刻で、WHOが推奨する1日1時間以上の運動をしていない若者が81.0%に上るという。とくに若い女性の運動不足は深刻で、運動をしていない割合は、男子で77.6%なのに対し、女子では84.7%に上る。
運動をしていない割合は、2001年の調査では男子で80.1%、女子で85.1%だった。運動量を増やすことが世界的な目標とされているにもかかわらず、15年にわたる調査期間中、状況はほとんど変化していない。
WHOは、とくに11〜17歳の若者の身体活動レベルを高め、若者の運動不足を解消する緊急の対策が必要だとしている。
146ヵ国の半数が「若者の80%超が運動不足」
調査は、2001~2016年に、146ヵ国の11~17歳の若者約160万人を対象に行われた。
若者の運動・身体活動について、活発的な活動、レクリエーション、スポーツ、アクティブな家事、ウォーキングやサイクリング、その他の体を使った移動、体育教育、計画的な運動に費やした時間など、あらゆる観点から調べたものだ。
その結果、運動不足の若者の割合が80%を超えているのは146ヵ国中71ヵ国で、およそ半数に上ることが明らかになった。
運動不足の若者の割合がもっとも高いのはフィリピン(男子 92.8%、女子 94.1%)で、次いで韓国(男子 91.4%、女子 97.2%)となっている。運動不足の若者がもっとも少ないのはバングラデッシュ(男子 63.2%、女子 69.2%)だった。
米国(男子 64.0%、女子 80.5%)、中国(男子 80.1%、女子 89.1%)、インド(男子 71.8%、女子 76.3%)など、人口の多い国でも若者の運動不足は深刻だ。
世界保健機関(WHO)が公開しているビデオ
世界のすべての人は運動を積極的に行うべきです
世界のすべての人は運動を積極的に行うべきです
男子と女子の格差が拡大
とくに懸念されるのが、女子の運動不足だ。世界的に、男子と女子の差が拡大しており、15年間に格差が拡大したのは73%(146ヵ国中107ヵ国)に上る。
また、WHOが推奨する運動量を満たしている割合で、男子と女子で10ポイント以上の差が付いたのは29%(146ヵ国中43ヵ国)に上る。
国別にみると、アフガニスタン、サモア、トンガ、ザンビアを除くすべての国で、女子の運動時間が男子を下回った。
十分な運動を行っている女子が15年間でもっとも減少した国は、バングラデシュ(73%→63%)、シンガポール(78%→70%)、タイ(78%→70%)、ベナン(79%→71%)、アイルランド(71%→64%)だ。一方、男子の運動不足は、バングラデシュ、インド、米国などでは減少している。
運動不足により若者の健康が損なわれる
このままでは世界目標を達成できない
WHOの研究者は、「こうした傾向が続くと、WHOが2018年の世界保健総会で策定した、世界の運動不足の人の割合を2030年までに70%未満に減らすという世界的な目標を達成できなくなります。目標達成のためには、運動不足を相対的に15%減らすことが目標となります」と警笛を鳴らしている。
「若者の5人に4人が運動不足というのは深刻な事態です。運動は身体と精神の両方に強く影響します。若者に身体的および精神的な健康と幸福を追求する機会を与えるべきです」と、WHOのフィオナ ブル氏は言う。
「若者の身体的リテラシーを高め、運動・スポーツへの参加を促し、レクリエーションの機会を増やし、安全に活動できる環境を整備することが大切です。学校、家族、サービスの提供者、都市計画の策定者、都市とコミュニティのリーダーなどが参加し、包括的な行動を示すべきです」と、ブル氏は強調している。
「女子が男子よりも運動不足の傾向が強いことが懸念されます。思春期から成人期にかけて、運動・スポーツへの参加を促すために、女性のニーズを満たす機会を増やす必要があります」と、WHOのリアン・ライリー氏は言う。
「そのために、男子と女子の差を生み出す原因を探り、社会・経済・文化・技術・環境などの不平等に対処することが求められます」。
New WHO-led study says majority of adolescents worldwide are not sufficiently physically active, putting their current and future health at risk(世界保健機関(WHO) 2019年12月22日)Global trends in insufficient physical activity among adolescents: a pooled analysis of 298 population-based surveys with 1·6 million participants(The Lancet Child & Adolescent Health 2020年1月1日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2024 SOSHINSHA All Rights Reserved.
「健診・検診」に関するニュース
- 2024年04月25日
-
厚労省「地域・職域連携ポータルサイト」を開設
人生100年時代を迎え、保健事業の継続性は不可欠 - 2024年04月22日
- 【肺がん】進行した人は「健診やがん検診を受けていれば良かった」と後悔 早期発見できた人は生存率が高い
- 2024年04月18日
- 人口10万人あたりの「常勤保健師の配置状況」最多は島根県 「令和4年度地域保健・健康増進事業の報告」より
- 2024年04月18日
- 健康診査の受診者数が回復 前年比で約4,200人増加 「地域保健・健康増進事業の報告」より
- 2024年04月09日
- 子宮の日 もっと知ってほしい子宮頸がんワクチンのこと 予防啓発キャンペーンを展開
- 2024年04月08日
- 【新型コロナ】長引く後遺症が社会問題に 他の疾患が隠れている例も 岡山大学が調査
- 2024年03月18日
- メタボリックシンドロームの新しい診断基準を提案 特定健診などの56万⼈のビッグデータを解析 新潟⼤学
- 2024年03月11日
- 肥満は日本人でも脳梗塞や脳出血のリスクを高める 脳出血は肥満とやせでの両方で増加 約9万人を調査
- 2024年03月05日
- 【横浜市】がん検診の充実などの対策を加速 高齢者だけでなく女性や若い人のがん対策も推進 自治体初の試みも
- 2024年02月26日
- 近くの「検体測定室」で糖尿病チェック PHRアプリでデータ連携 保健指導のフォローアップなどへの活用も