ニュース

「食物繊維」を多く摂るほど死亡リスクは低下 糖尿病・高血圧・脂質異常症に良い効果

 食物繊維の摂取量が多い人ほど総死亡リスクが低いことが、9万人以上の日本人を対象に17年間追跡した大規模研究で明らかになった。
 「豆類」「野菜類」「果物類」からの食物繊維を多く摂取している人は死亡リスクが低いことが明らかになった。
どの食品から食物繊維を摂ると良いのか
 国立がん研究センターが中心となり実施されている「JPHC研究」は日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・2型糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で実施されている多目的コホート研究。

 食物繊維は、糖尿病(インスリン抵抗性)・高血圧・脂質異常症などに良い効果を及ぼし、健康に良いことが知られているが、摂取量が不足しがちな栄養素でもある。

 食物繊維の健康効果について、アジアでの研究は少なく、日本人でどのような食品から食物繊維を摂取すると死亡リスクが低下するかを調べた研究はほとんどない。
日本人9万人超を約17年間調査
 そこで国立がん研究センターなどの研究グループは、国内在住者を対象に、食物繊維の摂取量とその後の死亡リスクとの関連について調査した。全国の45~74歳の9万2,924人(男性 4万2,754人、女性 5万170人)を対象に、2016年まで平均16.8年間、追跡して調査した。

 対象者は国内の11保健所の管轄地域(1995年に岩手、秋田、長野、沖縄、東京、1998年に茨城、新潟、高知、長崎、沖縄、大阪)に在住していた。

 食事調査アンケートを用いて、食物繊維の摂取量によって5つのグループに分け、死亡(総死亡・がん・循環器疾患・心疾患・脳血管疾患)との関連を調べた。さらに食物繊維の摂取源を、▼穀類、▼豆類、▼野菜類、▼果物類に分けて、5つのグループに分けて比較した。
豆類・野菜類・果物から食物繊維を摂ると効果的
 その結果、食物繊維の摂取量が多いほど、男女ともに総死亡リスクが低下することが明らかになった。

 死因別では、男女ともに食物繊維の摂取量が多いほど「循環器疾患」の死亡リスクが低下していた。「がん」については、男性では総摂取量が多いほど死亡リスクが低下したが、女性では関連はみられなかった。

 食物繊維の摂取源ごとに調べると、「豆類」「野菜類」「果物類」からの食物繊維の摂取量が多い人ほど、総死亡リスクが低下していた。「穀類」では関連がみられなかった。

食物繊維は玄米や全粒粉などの穀類でも増やせる
 今回の研究で、日本人でも食物繊維の摂取量が多いほど死亡リスクが低くなることが明らかになった。

 食物繊維は、高血圧・脂質異常症・糖尿病(インスリン抵抗性)などに良い効果を及ぼすことが知られている。また欧米の研究では、穀類に含まれる食物繊維の摂取量が多いと死亡リスクが低いというの報告がある。

 日本人を対象とした研究で、穀類の摂取と死亡リスクの低下との関連は顕著でなく、むしろ豆類、野菜類、果物類からの食物繊維の摂取量は多いほど死亡リスクが低下するという結果になった。

 これについて、「日本では欧米と比較して、穀類の中心が精白米であることが理由として考えられます。精白米は食物繊維の含有量の少ないのです」と、研究チームは述べている。

 「日本人では、食物繊維の摂取量を増やすために、豆類や野菜類、果物類由来の食物繊維摂取量を増やすか、より食物繊維含有量の多い、玄米、シリアル、全粒粉パンなどの穀類により、食物繊維の摂取量を増やすのが良い可能性があります」としている。

多目的コホート研究(JPHC Study) 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ
Dietary fiber intake and total and cause-specific mortality: the Japan Public Health Center-based prospective study(American Journal of Clinical Nutrition 2020年1月28日)
[Terahata]
side_メルマガバナー

「健診・検診」に関するニュース

2023年08月09日
8020達成率は5割以上 若い世代の歯周病増、口腔ケアが課題に
厚労省「令和4年歯科疾患実態調査」より
2023年08月08日
若い世代でも「脂肪肝疾患」が増加 やせていても体脂肪が蓄積 肥満とどう違う?
2023年07月28日
2022年度版「健診・保健指導施設リスト」状況を報告します【保健指導リソースガイド】
2023年07月24日
標準体重でも3分の1は実は「肥満」 BMIは健康状態をみる指標として不十分 やせていても安心できない
2023年07月11日
自治体健診で高齢者のフレイルを簡便に判定 「後期高齢者の質問票」でリスクが分かる 「フレイル関連12項目」とは?
2023年06月20日
肝臓学会が「奈良宣言2023」を発表 肥満・メタボの人は「脂肪肝」にもご注意 検査を受けることが大切
2023年06月12日
自治体健診で「心房細動」を早期発見 健康寿命と平均寿命の差を縮める 日本初の「健康寿命延伸事業」 大分県
2023年06月05日
要介護認定リスクと関連の深い健診6項目が明らかに 特定健診・後期高齢者健診のデータから判明 名古屋市
2023年05月19日
令和4年度「東京都がん予防・検診等実態調査」 受診者増加のための取組み率は健康保険組合で85%に上昇
2023年05月18日
さんぽセンター利用の5割以上「健診結果の措置に関する説明力が向上」
-『令和4年度産業保健活動総合支援事業アウトカム調査報告書』-
アルコールと保健指導
無料 メールマガジン 保健指導の最新情報を毎週配信
(木曜日・登録者11,000名)
登録者の内訳(職種)
  • 産業医 3%
  • 保健師 46%
  • 看護師 10%
  • 管理栄養士・栄養士 19%
  • その他 22%
登録はこちら

ページのトップへ戻る トップページへ ▶