ニュース
【新型コロナ】「ひきこもり」が世界的に急増 オンラインには社会的関係を損なう危険性も
2020年09月29日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックのために、各国の都市でロックダウンが行われた影響で、世界的に「ひきこもり」が急増している可能性があることが、名古屋大学などの研究で明らかになった。
対処策として、インターネットに親和性のある「ひきこもり」のために、オンライン治療などが有効である可能性を示している。
米オレゴン健康科学大学は、「ひきこもり」はいまや世界的な問題であると指摘。共通の基準を作って対策する必要があると提案している。
対処策として、インターネットに親和性のある「ひきこもり」のために、オンライン治療などが有効である可能性を示している。
米オレゴン健康科学大学は、「ひきこもり」はいまや世界的な問題であると指摘。共通の基準を作って対策する必要があると提案している。
ひきこもりは世界的な課題になっている
名古屋大学などの研究チームは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の経済的・社会的な影響により、世界的に「ひきこもり」が増加している可能性があるという研究を発表した。
「ひきこもり」やその家族を支援するため、世界各国での公的資源を投入する必要があると強調している。
日本では「ひきこもり」の現象が1990年代からみられるようになり、2019年には「ひきこもり」が110万人いると推定され、深刻な社会問題になっている。
また最近では、日本だけでなくアジア諸国や、フランスなどの欧州諸国でも「ひきこもり」の現象がみられるようになっており、「Hikikomori(ひきこもり)」は国際語になった。
ロックダウンが解除された後もひきこもりに
COVID-19への対策のため、世界各国で2020年3月以降にロックダウンが行われて、英国では3ヵ月続けられた。「ひきこもり」へと至ってしまう人は、ロックダウンは解除された後も、そのまま社会へと戻ることができず、幼少期の劣悪な環境など個人レベルでのリスク要因が重なることで、リスクがさらに高くなっている。
研究グループは、「ひきこもり」の増加はCOVID-19による大きな影響のひとつで、「社会的な注目が期待される」と指摘している。「COVID-19の経済的・社会的影響下での"ひきこもり"予備群の存在にも注目する必要がある」と付け加えている。
研究は、名古屋大学大学院医学系研究科精神健康医学/総合保健体育科学センターの古橋忠晃准教授が、英国グラスゴー大学神経科学心理学研究所のルックスビー麻記研究員や、英国グラスゴー大学健康・福祉研究所精神衛生グループのハミシュ マクレオド教授らと共同で行ったもの。研究成果は、国際精神医学雑誌「World Psychiatry」オンライン版に掲載された。
ひきこもりはインターネットとの親和性が高い
「ひきこもり」のリスクが高い人は、既存のメンタルヘルスの問題を抱えている人や、子供時代のネガティブな経験の影響を受けている人に含めて、高齢者や、COVID-19のパンデミックにより生活やライフパスが大幅に乱れてしまった人も含まれる。
中国の初期のデータでは、COVID-19のパンデミックにより、不安やうつ病などが引き起こされるリスクは5倍に増加した可能性があることが示されている。
COVID-19のロックダウンにより生み出された「ひきこもり」は、インターネットやソーシャルメディア、オンラインゲームなどを通して世界を受動的に観察し続けるという点で、これまでの「ひきこもり」と大きな違いはない。
対処策としては、本来インターネットに親和性のある「ひきこもり」のため、それを改善するためのオンライン治療を開発する必要性を指摘している。
「将来増加しうる"ひきこもり"やその家族へのサポートのために、世界各国で公的資源が必要となることも予想されます」と、研究者は指摘している。
「ひきこもり」の4つの重要な側面

著しい社会的孤立が特徴で、家の外で過ごす時間の頻度などが定義に関わる。 ■ 人を避ける
社会的交流を拒否していることが基準になる。不安だけでなく、快適さのレベルを満たしているという理由で、社会的・相互的な交流を避けているケースもある。 ■ 苦痛の定義
「ひきこもり」と判定された人々の多くは、はじめは社会的離脱に満足していると答えるが、やがて離脱の期間が長くなるにつれて、苦痛と孤独感が増大していく。 ■ その他の障害
うつ病などの精神状態をともなうことも多く、「ひきこもり」とともに評価・診断するべき。併発する疾患が多いことが、「ひきこもり」に健康問題として取り組む重要性を高めている。
オンラインには社会的関係を損なうリスクもともなう
「これまで"ひきこもり"は文化的な問題と思われてきましたが、現在では社会的な問題ととらえられています」と、同大学医学部精神科のアラン テオ准教授は言う。
「ポートランドに住みボランティアによる食事サービスを受けている80歳の高齢者であろうと、日本の18歳の少年であろうと、"ひきこもり"は共通の問題なのです」。
「ひきこもり」は、インターネットやソーシャルメディア、オンラインゲームの普及などとも関連が深い。
皮肉なことに、本来はコミュニケーションを改善するためのこれらの最新のツールは、逆の効果をもたらしている可能性があるという。
テオ氏によると、オンラインで時間を過ごすことは、人と人が顔を見合わせて対話をする代わりになるが、同時に社会的関係が損なわれ、メンタルヘルスに深刻な影響をもたらす危険性もあるという。
「こうしたデジタルや通信技術の進歩は、対面での社会的な相互作用に代わるものを提供していますが、逆に"ひきこもり"を深刻な問題にするおそれもあります。そうした危険性を考慮した上で、より有効な使い方をできないかを模索する必要があります」。
「しばしば健康管理では忘れがちになりますが、どのような社会生活を送るかが、その人の生活の質(QOL)ににおいてきわめて重要です。毎日の社会生活が、その人の人生の意味と価値を作っているからです」と、テオ氏は述べている。
名古屋大学大学院医学系研究科精神健康医学名古屋大学総合保健体育科学センター
Hikikomori: a hidden mental health need following the COVID-19 pandemic(World Psychiatry 2020年9月15日)
Hikikomori: New definition helps identify, treat extreme social isolation(オレゴン健康科学大学 2020年1月10日)
Defining pathological social withdrawal: proposed diagnostic criteria for hikikomori(World Psychiatry 2020年1月10日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。©2009 - 2025 SOSHINSHA All Rights Reserved.


「健診・検診」に関するニュース
- 2025年06月02日
- 肺がん検診ガイドライン19年ぶり改訂 重喫煙者に年1回の低線量CTを推奨【国立がん研究センター】
- 2025年05月20日
-
【調査報告】国民健康保険の保健事業を見直すロジックモデルを構築
―特定健診・特定保健指導を起点にアウトカムを可視化 - 2025年05月16日
- 高齢者がスマホなどのデジタル技術を利用すると認知症予防に 高齢者がネットを使うと健診の受診率も改善
- 2025年05月16日
- 【高血圧の日】運輸業はとく高血圧や肥満が多い 健康増進を推進し検査値が改善 二次健診者数も減少
- 2025年05月12日
- メタボとロコモの深い関係を3万人超の健診データで解明 運動機能の低下は50代から進行 メタボとロコモの同時健診が必要
- 2025年05月01日
- ホルモン分泌は年齢とともに変化 バランスが乱れると不調や病気が 肥満を引き起こすホルモンも【ホルモンを健康にする10の方法】
- 2025年05月01日
- 【デジタル技術を活用した血圧管理】産業保健・地域保健・健診の保健指導などでの活用を期待 日本高血圧学会
- 2025年04月17日
- 【検討会報告】保健師の未来像を2類型で提示―厚労省、2040年の地域保健を見据え議論
- 2025年04月14日
- 女性の健康のための検査・検診 日本の女性は知識不足 半数超の女性が「学校教育は不十分」と実感 「子宮の日」に調査
- 2025年03月03日
- ウォーキングなどの運動で肥満や高血圧など19種類の慢性疾患のリスクを減少 わずか5分の運動で認知症も予防