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【新型コロナ】日本でワクチン接種はいつ開始される? COVID-19ワクチンは本当に安全?
2021年01月08日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン接種が、海外で開始され、日本でも今春の接種開始が目指されている。
一方で、新しいワクチンの安全性を懸念する声もある。海外では、COVID-19ワクチンの接種後に、アレルギー反応が出たという報道が一部に出ている。
開発中の新しいCOVID-19ワクチンは、本当に安全なのだろうか?
一方で、新しいワクチンの安全性を懸念する声もある。海外では、COVID-19ワクチンの接種後に、アレルギー反応が出たという報道が一部に出ている。
開発中の新しいCOVID-19ワクチンは、本当に安全なのだろうか?
新型コロナの制圧は始まったばかり
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン接種が、海外で開始され、日本でも今春の接種の開始が目指されている。ワクチン接種による新型コロナの制圧は始まったばかりだ。
1年にわたり、マスク着用や身体的距離の確保、換気や消毒、外出自粛などの手段に限られていた感染予防対策だが、ようやく医学的な手段でウイルスに対抗できるようになる。
感染後の重症化リスクの高い基礎疾患のある人は、優先的にワクチン接種を受けられることが決まっており、糖尿病などの持病のある人々の期待も大きい。
日本でも早期にワクチンを実用化
日本では、2021年1月現在で国内で承認されたCOVID-19ワクチンはないが、厚生労働省はできるだけ早期にワクチンを実用化するよう取り組んでいる。
厚労省はCOVID-19ワクチンについて、開発が順調にいけば、2月下旬をめどに医療従事者、3月下旬をめどに高齢者への接種を開始し、その後、糖尿病などの基礎疾患のある人などに優先して接種を行う方針を公表している。
ファイザーなどが開発したCOVID-19ワクチン(mRNAワクチン)は、2020年12月に英米などで承認され、接種が開始された、日本でも治験が2020年10月から実施中で、同年12月には承認申請が出された。
アストラゼネカとオックスフォード大学が共同開発したウイルスベクターワクチンは、2020年12月に英国で承認され、最初の接種が2021年1月に開始された。日本でも治験が2020年8月下旬から実施されている。
モデルナの開発したmRNAワクチンは、2020年12月に米国で緊急使用許可が出され、接種が開始された。現在、日本でも治験が準備されている。
海外で開発されている新型コロナウイルスのワクチン
ファイザー |
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mRNAワクチン |
2020年7月から米などで第3相試験を実施。12月から英米などで接種開始。 日本でも治験を2020年10月から実施。同年12月に承認申請。 |
アストラゼネカ、オックスフォード大学 |
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ウイルスベクターワクチン |
2020年5月から英で第2/3相試験を実施。8月から米で第3相試験を実施。2021年1月から英で接種開始。 日本でも治験を2020年8月下旬から実施中。 |
モデルナ |
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mRNAワクチン |
2020年7月から米で第3相試験を実施。12月から米で接種開始。 日本でも治験の実施を準備中。 |
ジョンソン&ジョンソン(ヤンセン) |
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ウイルスベクターワクチン |
2020年9月から米などで第3相試験を実施。11月から英などで第3相試験を実施。 日本でも治験を2020年9月から実施中。 |
サノフィ |
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組換えタンパクワクチン、mRNAワクチン |
組換えタンパクワクチンは、2020年9月から米で第1/2相試験を実施。mRNAワクチンは、2021年第1四半期に第1/2相試験開始を目指す。 |
ノババックス |
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組換えタンパクワクチン |
2020年9月から英で第3相試験を実施。 日本でも治験の実施を準備中。 |
71%が「ワクチン接種を希望」
一方で、開発された新しいワクチンの安全性を懸念する声もある。一般的に、ワクチン接種では、副反応による健康被害が、稀ではあるものの不可避的に発生するため、日本でも健康被害救済制度が設けられている。
医療関係者からも、「感染予防目的で使うワクチンには、高い安全性が求められる。ワクチン接種により有害事象が起こらないか、安全性の検証には時間がかかる」「はじめて使用される種類のワクチンであり、安全性の確認を慎重に行うべきだ」といった声も聞かれる。
米カイザーファミリー財団(KFF)は、COVID-19ワクチン接種に対する米国市民の意識調査を実施した。それによると、ワクチンについて、科学者が安全に利用できると判断し、希望すれば無料で接種を受けられるのであれば、「接種を受ける」と答えた人の割合は、2020年12月には71%となり、9月時点の63%から増加した。
一方で、市民の4分の1(27%)は、ワクチン接種をためらっており、「おそらくワクチン接種を受けないだろう」と回答している。接種を受けない理由は、「副作用の可能性がある」(59%)、「ワクチンの安全性と有効性を保証する政府への不信感」(55%)、「ワクチンの開発を急ぎ過ぎている」(53%)、「開発プロセスでの政治の介入への懸念」(51%)など。
接種を受けアレルギー反応が出たという報道が
COVID-19ワクチンの接種後の症状として、一部でアレルギー反応が出たという報道があり、懸念の声が挙がっている。しかし、その頻度は多いものではない。
一般的に、ワクチンを接種すると、極めてまれではあるものの、副反応による健康被害が起こることがある。ワクチンの接種や医薬品の投与を受けた人で、「アナフィラキシー」が起きたケースが報告されている。
アナフィラキシーは、薬や食物が身体に入ってから、短時間で起きることのあるアレルギー反応。症状としては、じんま疹などの皮膚症状、腹痛や嘔吐などの消化器症状、息苦しさなどの呼吸器症状が急激にあらわれる。
特定のワクチンだけに起きるものではなく、さまざまな医薬品やワクチンの投与後に報告されている。たとえば、インフルエンザワクチン接種後でも、1シーズンに20件程度のアナフィラキシーが報告されている。
ワクチンが安全であることを国民に伝えたい
COVID-19ワクチンの接種について、「注射剤・ワクチンに対するアナフィラキシーの病歴のある人以外であれば、安全に接種できます」と、米マサチューセッツ総合病院(MGH)のアレルギー専門医を中心とした研究チームは報告している。
研究チームによると、ワクチンに対するアレルギー反応は、一般的にごく稀であり、100万人あたり約1.3回の割合で起こっているという。
「アレルギー専門医として、米国で承認された2種類の新型コロナウイルスのワクチンについて、安全であることを国民に伝えて安心させ、ワクチン接種を勧めたいと考えています」と、同病院アレルギー・臨床免疫学部のアリーナ バネルジ氏は述べている。
「米国の予防接種のガイドラインは、米国の規制当局の推奨にもとづき作られています。アレルギー歴のある人に対しても、ワクチンを安全に投与するために、適正な手段で対応しています」。
医療の最前線で治療にあたる医療従事者が
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を受けている様子
米ヴァンダービルト医療センター
新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を受けている様子
米ヴァンダービルト医療センター
接種を受けるときには主治医にも相談
アナフィラキシーは、「食物アレルギー」「ぜんそく」「アレルギー性鼻炎」「アトピー性皮膚炎」などがある人が比較的起こしやすく、接種する際は慎重な観察が必要になる。日本の厚労省は、そうした人が接種を受けるときには、主治医などとよく相談した上で判断してほしいとしている。
日本でも、どんなワクチンの接種についても、医療機関ではアナフィラキシーが起きたときに治療できるよう準備したうえで接種が行われている。また、接種前に問診を行い、過去に同じような症状のあった人には、接種をやめたり、より注意深く接種するなどしている。
その他、日本への供給が計画されているCOVID-19ワクチンについては、因果関係を特定できないものも含め、接種した部位の痛みや、筋肉痛けん怠感、頭痛などの症状が起きたケースが、海外では報告されている。
ワクチン接種を受けないと、そのワクチンは機能しない
専門家は、新型コロナとの闘いを終息させるために、全人口の3分の2がウイルス対し免疫を獲得する必要があると推定している。これを達成するために、ワクチン接種は有効な手段になる。
世界保健機関(WHO)が2019年に発表した「世界が直面している健康・医療分野の10の脅威」では、世界で優先されるべき課題のひとつに「ワクチン接種の適切な理解を広める」が挙げられた。
ワクチン接種は感染症を回避するためのもっとも費用対効果の高い方法のひとつだ。「地域でもっとも信頼できるアドバイザーである医療従事者は、インフルエンザをはじめとするワクチンの接種をサポートするため、適切な情報を提供する必要がある」としている。
たとえば麻疹は先進国では稀な疾患とみられているが、多くの途上国では多数の発生がある。麻疹の感染は世界的に30%増えており、その理由は複雑だが、ワクチン接種を拒否する人が多いことが一因だとみられている。
これらはワクチン接種に対する誤った理解が原因だ。ワクチンを利用できるにもかかわらず、それを拒否するのは、予防可能な疾病への取り組みを逆行させてしまうおそれがある。
せっかく完成したワクチンであり、もうすぐ日本でも利用できるようになる。ワクチン接種を受けないと、そのワクチンは機能しないことを、肝に銘じていたい。
日本で開発されている新型コロナウイルスのワクチン
塩野義製薬、国立感染症研究所、UMNファーマ |
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組換えタンパクワクチン |
2020年12月から第1/2相試験を実施。 |
第一三共、東京大学医科学研究所 |
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mRNAワクチン |
最短で2021年3月から臨床試験を開始。 |
アンジェス、大阪大学、タカラバイオ |
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DNAワクチン |
第1/2相試験を開始、第2/3相試験を開始、大規模第3相試験を2021年内に開始。 |
KMバイオロジクス、東京大学医科学研究所、国立感染症研究所、医薬基盤研究所 |
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不活化ワクチン |
最短で2021年1月から臨床試験を開始。 |
IDファーマ、国立感染症研究所 |
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ウイルスベクターワクチン |
最短で2021年3月から臨床試験を開始。 |
mRNA Vaccines to Prevent COVID-19 Disease and Reported Allergic Reactions: Current Evidence and Approach(Journal of Allergy and Clinical Immunology: In Practice 2020年12月31日) KFF COVID-19 Vaccine Monitor: December 2020(カイザーファミリー財団 2020年12月15日) Ten threats to global health in 2019(世界保健機関 2019年1月18日)
Thirteenth general programme of work 2019-2023(世界保健機関)
保健政策もグローバル化 世界がいま直面している10の課題 WHOが発表
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