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コレステロール高値で高尿酸血症のリスクが上昇 メタボリックシンドロームと高尿酸血症の関連に新たな知見
2021年01月25日

メタボリックシンドロームと尿酸排泄の関連性を示唆する新たな知見が発表された。
奈良県立医科大学などの研究グループは、高コレステロール血症患者などで血中濃度が上昇するコレステロール代謝物が、尿中からの尿酸再吸収を促進し、血中尿酸の増加させ、高尿酸血症のリスクを高めることを発見した。
奈良県立医科大学などの研究グループは、高コレステロール血症患者などで血中濃度が上昇するコレステロール代謝物が、尿中からの尿酸再吸収を促進し、血中尿酸の増加させ、高尿酸血症のリスクを高めることを発見した。
高コレステロールと高尿酸血症の関連を解明
高コレステロールの状態と高尿酸血症の関連を解明する新たな知見が発表された。尿酸の再吸収を妨げる薬剤を開発すれば、効果的な高尿酸血症の治療薬となる可能性がある。
研究は、奈良県立医科大学・医学部・未来基礎医学の森英一朗准教授、米ヒューストン大学の梅渓通久Assistant Professor、理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター(BDR)・ヒト器官形成研究チームの髙里実チームリーダーの共同研究グループによるもの。研究成果は、医学誌「The FASEB Journal」に掲載された。
高尿酸血症は生活習慣病のひとつで、痛風・腎疾患・心血管障害などさまざまな疾患の増悪要因となることが知られており、近年では、メタボリックシンドロームとの関連も報告されている。
高尿酸血症は成人男性の20~25%にみられ、国内の患者数は1,000万人にのぼると推定されている。
尿酸は、体内でプリン体が分解・合成されることで作られる。通常は、古くなったプリン体は血液にのり肝臓で分解され尿酸となり、腎臓でろ過され、尿と一緒に排泄されるが、なんらかの理由で体内でプリン体が増え過ぎると、体内の尿酸が増えてしまう。
尿酸値が7.0mg/dLを超えた状態が、いわゆる尿酸値が高い状態で、この状態を「高尿酸血症」という。尿酸値が高ければ高いほど、また高尿酸血症の期間が長ければ長いほど、痛風を起こすリスクは高くなっていく。
尿酸の尿中からの吸収を担うトランスポーター
生体内で産生される尿酸は、通常であれば、その3分の2が腎臓から尿中へ排泄される。
しかし、これまでの研究で、肥満患者では尿酸排泄率が低下することや、肥満モデルマウスでは尿酸輸送を行うトランスポーター(運び屋的な物質)の発現量が変化していることが分かっている。メタボリックシンドロームと尿酸排泄の関連も示唆されている。
腎臓には、いくつかのトランスポーターがあり、それらによって尿中から血中への再吸収や、血中から尿中への分泌が厳密にコントロールされている。このバランスが崩れることによって、血中の尿酸が増減し、疾患につながると考えられている。
尿細管の部位のうち、近位尿細管では尿酸などの再吸収が行われている。そこで、尿酸の血管内への再吸収を担うのが「URAT1」というトランスポーターだ。URAT1は、尿中からの尿酸再吸収を担っていると考えられている。
たとえば、高尿酸血症治療薬として利用されている「尿酸再吸収阻害薬」は、このURAT1の働きを阻害することで、尿酸の血管内への再吸収を防ぎ、尿酸は尿といっしょに体外へ排泄されるようになり、結果として血液中の尿酸濃度(尿酸値)の低下が促されるというものだ。
コレステロール代謝物が尿酸再吸収を促し、血中尿酸が増加する
研究グループは今回、「27-ヒドロキシコレステロール」と呼ばれるコレステロールの代謝物質に着目した。
「27-ヒドロキシコレステロール」は、高コレステロール血症患者や動脈硬化症患者で、血中・組織中濃度が増加することが知られており、エストロゲン受容体を介してさまざまな組織で多様な疾患を増悪させると考えられている。
研究グループは、「27-ヒドロキシコレステロール」が、尿中からの尿酸再吸収を行う運び屋である「URAT1」にどのように影響するかを調べた。
27-ヒドロキシコレステロールの作用

出典:奈良県立医科大学未来基礎医学、2020年
「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始に関わる遺伝子の上流領域。この領域の特定配列に転写因子が結合することで、遺伝子発現の変動がコントロールされる。
今回の研究では、URAT1のプロモーター領域を発現させた細胞に、27-ヒドロキシコレステロールを負荷することで、URAT1のプロモーター活性が上昇することが分かった。
さらに、次のことが明らかになった――。
・ エストロゲン拮抗薬・エストロゲン応答配列変異体を使用することで、この上昇はエストロゲン受容体を介した反応であることが明らかになった。
・ 27-ヒドロキシコレステロールの血中濃度が上昇しているCyp7b1欠損マウスでは、腎臓中のURAT1タンパク質が増加していることが分かった。
・ ヒトiPS細胞から作製した腎臓オルガノイドを用いた試験により、27-ヒドロキシコレステロールがURAT1の遺伝子発現を増加させることが明らかになった。
27-ヒドロキシコレステロールのURAT1への影響

出典:奈良県立医科大学未来基礎医学、2020年
以上の結果より、高コレステロール血症など、血中の27-ヒドロキシコレステロールの増加をともなう疾患では、増加した27-ヒドロキシコレステロールが腎臓のURAT1発現を上昇させ、尿中からの尿酸再吸収を促進し、血中尿酸の増加を誘発する可能性が示された。
これらの知見は、高コレステロール状態と高尿酸血症の関連の解明につながるものだ。
奈良県立医科大学 未来基礎医学理化学研究所 生命機能科学研究センター(BDR)
27‐Hydroxycholesterol regulates human SLC22A12 gene expression through estrogen receptor action(The FASEB Journal 2020年12月23日)
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